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白百合革命(第2回/全4回)

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白百合革命(第2回/全4回)

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『13.近づく限界』

 アルコリアがエアバイクを運転し、小夜子が後ろに乗り、リンが連れ去られた先へと向かっていた。
 バイクに乗っているため、身を隠すことは容易ではなく、巡回しているロボットに気付かれてしまう。
「遠距離攻撃の手段が殆どなくて、厳しいですね……」
「重火器でも持って来ればよかったかなー。高温の中で重火器発動! 暴走どっかーん、でしょうか」
 敵の攻撃を躱しながらアルコリアが言う。
「そういえば、襲ってくる方々は全て光を用いた攻撃をしてきますね。もしかして、光の魔法は使えるのでしょうか?」
「あー、氷系は使えないみたいだし、それなりに効果の発揮できる魔法と出来ない魔法があるのかもしれませんね」
「でも、携帯電話がつながらない状態なので、剣の花嫁本人以外は、光条兵器使えそうもないですね……あっ!」
 光条兵器による攻撃が、エアバイクを掠めた。
 倒れそうになるが何とか立て直して、アルコリアは先を急ぐ。
 既に、リン達の姿は全く見えないが……街から出て、どの方向に向かったのかは分かっている。
 街の先は荒地だ。真っ直ぐ目的地に向かったと考えていいだろう。
「はあ……はあ……」
 自分に抱き着いている小夜子の呼吸が荒くなっていくのを感じる。
 彼女の限界も近づいていた。


『14.見つけた、護る』

「……なんでお前こんなところにいるんだ?」
(ぜすたんを探しにきたんだよ!)
 そう答えたくても、強烈な眠気で朦朧としていて、声も出すことが出来なかった。
 ただ、彼のことだけは離さない、離れないと、リンはゼスタにしがみついていた。
 光に覆われた後にたどり着いた場所は、熱くも苦しくもなかった。普通の世界だった。
「私も聞きたいわ。なんであなたがここにいるの」
 女性の声が響いた。しかし、顔を上げることのできないリンには、姿を確認することができなかった。
「……この刃、消してもらおうか」
 ゼスタの口から、暗く鋭い声が発せられた。
「元々私はパラミタ人のあなたを攻撃するつもりはなかったのよ。あなたが彼女達を勝手に庇って負傷したんじゃない」
 女性のあざけるような声が響いた。
 ゼスタが片手を上げる。その手からバチバチと黒い光が発せられた。
「私と戦おうとでも? その子を抱えたままで? その子、かなり弱ってるみたいだし、盾にもならないと思うけど」
「……だ、……め」
 リンは声を振り絞った。
 ゼスタを負傷させた相手ならば、今の状態で――恐らくは敵のテリトリーであるここで戦っても、ゼスタに勝ち目はないだろう。
 命を、まず命を優先してほしいと、ゼスタは殺させない、と。
 リンはしがみつき続ける。
「そうね、風見瑠奈を連れてきてくれたら、考えてあげるわ」
 女性の声が響いた。
「風見が欲しいんなら、何故こんな回りくどいことをする?」
「あの時は知らなかったのよ、風見瑠奈の価値を。で、彼女はどこ?」
 女性が尋ねると、ゼスタが軽く笑みを漏らした。
「風見なら、さっき俺が殺した。
 お前は欲するものを永久に手に入れることが出来ない」
 冷たく鋭い声だった。
「その刃は、抜かない方がいいみたいね。永久に」
 女性の声も冷たく鋭かった。
 その直後、目映い光に覆われた。
 その光の力からは、不思議と温かさを感じた。熱くはない。
 日向ぼっこをしている時のような。母に抱かれている時のような、身体と心がぽかぽかしていく感覚だ。
「あなた達が従うべき者は――誰なのか、すぐに分かるはずよ」
 女性の声が響き、ゼスタが強くリンを抱きしめた。
 大丈夫――命は、護れた。
 そう確信した直後、リンは意識を失った。

 うっすらと目を覚ましたその時も、リンはゼスタにしがみついたままだった。
 真っ白の何もない部屋の真っ白なベッドの上に、2人は寝かされていた。
 ゼスタの身体は温かかった、ちゃんと呼吸もしていた。
 ここは熱くもないし、苦しくもない。
 今は眠っていていいんだと、リンは再び目を閉じた。


『15.本心は?』

 ヴァイシャリー家から連絡が入り、マリザはラズィーヤ・ヴァイシャリーと面会をした。
 そして、パートナーのコウがラズィーヤに預けていった資料を受け取った。
 コウが独自に調べてたダークレッドホールに関しての調査資料、それからコウがファビオからの誘いに応じて、どこかに向かったことも、ラズィーヤと、ラズィーヤの弟であるミケーレ・ヴァイシャリーの口から聞いたのだった。
 ファビオと出かけたまま、連絡が途絶えてしまったことも。
 マリザがパートナー通話で連絡をとろうかと思った矢先。
 コウの方からマリザに連絡があった。
「コウ、あなた一体どこにいるの?」
 マリザのその問いに答えることなく、コウは早口でマリザに告げた。
 自分達は指定の無人島から窓のない無機質な部屋へと転送された。
 リヴィア・ヴァイシャリー、フェクダ・ツァンダが復古のために暗躍している。
 騎士の指輪は古代のシステムの発動に使用、『白騎士の指輪』が最低限必要。
 神楽崎、錦織、桜谷、風見のうち一人を処刑しようとしている。
 ファビオは古代人に恭順したように見える、頭には騎士の指輪が埋め込まれた。
 転移前に彼は「もし、自分の意志で動けなくなった際には―確実な方法で、止めて欲しい」と言っていた。
 話を全て終える前に、何らかの衝撃音が響き――。
 マリザの身体に異変が起きた。
 激しい頭痛と眩暈。
 立っていられなくなり、マリザは床に膝をついた。
 すぐにヴァイシャリー家により、マリザは病院へと搬送された。

 コウから聞いた話は、気力を振り絞り、ヴァイシャリー家のラズィーヤ、ミケーレと、見舞いに訪れた友人のジャジラッド、シリウスに話した。
 代わりにジャジラッド、シリウスが持つ機密性の高い情報も、聞かせてもらった。
(古代のアイテムやデータが盗まれた……その中にあった、データ、そして道具類。既に彼らは利用してるはず、見えない場所で……)
 目的の為に、盗んだのだろうから。
「コウ……なん…無茶、事を……」
 マリザはベッドから起き上がれない状態だった。
 意識がある時間でさえ、まともに話も出来ない。
 頭が割れるほどの激しい頭痛と、眩暈。
 体はしびれていて、殆ど動かなかった。
 コウが自分に送った情報は、彼らにとって知られてはならない情報だったのだろう。
 でも、多分まだ殺されてはいない。
 希望を持ちながら、マリザはコウを想う。そして、ファビオの事も――。
 さ……っと、風が部屋に吹き込んだ。
「マリザ」
 少しして、優しい声が響いてきた。
 マリザは瞳を動かして、その声の方を見る。
 何もない空間に、姿を現したのは――ファビオ・ヴィベルディだった。
「キミのパートナーは今、危険な状態にある。だけれど、キミが俺とくれば、きっと癒してもらえる」
 ファビオはそう言って、マリザに手を伸ばしてきた。
「何……考えて、る、の……あなた、は」
 言いたいことは沢山ある。
 だけど、ダメージは脳にも及んでおり、深く考えることもできない。
「リヴィア様を覚えてない?」
「しらない、わ……」
「俺達離宮の守護を仰せつかった騎士達にとって、大切な方だ」
 だから、行こう、と。
 ファビオはマリザに腕を伸ばし、抱き抱えようとした。
「……っ」
 マリザは、しびれている手を必死に動かして、ナースコールのボタンを押した。
 気づいたファビオはマリザを離して、心配そうな目で彼女を見た。
「また来る」
 そう言い残して、彼は闇色のマントを纏い姿を消し、どこかへ飛んでいった。
(コウを助けに行きたい……でも、自分が死んでいないのならば少なくとも命はある、殺せるなら殺しているだろうからまだ猶予はある)
 もう少し、時間が欲しい。
 今行けば、ファビオのように恭順せざるを得なくなるのではないか。
 自分が心から、恭順するとは思えない。
 古代人が何を目論んでいるのか、コウから届いたメッセージだけでは判断できない。
 場所も分からない。
 だから、もう少し時間が欲しい――そして。
(あなたの真意を、聞かせて。何を考えているの……ファビオ)
「どうしました?」
 看護士到着と同時に、マリザの意識は消し飛んだ。


『16.お部屋が沢山』

「今日は何しようか、ゲームしようか〜。それともごろごろする? ごろごろごろごろごろ、きゃははははは〜っ」
 白く無機質な部屋の中を、愛菜はごろごろところがり、笑い声をあげる。
「ごろごろですか、ごろごろごろごろ〜」
 ヴァーナーも、愛菜に合せてごろごろと部屋の中を転がった。
 すると愛菜はもっと嬉しそうに笑って、ヴァーナーとぶつかったり、ヴァーナーの転がる先で止まって邪魔をしたりして、楽しそうに遊ぶ。
「愛菜ちゃんはどうしてここにいるですか〜。お外には出られないですか?」
 沢山ころがって笑い合った後、ヴァーナーは愛菜に尋ねてみた。
「ママのお仕事が終わるまで、愛菜はお外に出られないの〜。でも、別のお部屋にいる人、呼んでもいいよっていわれてるんだ〜」
 愛菜はリモコンを取り出してボタンを押すと、床からモニターが出てきた。
「みんな何しているかなー。お仕事してるのかなー」
 同じ建物の中の別の部屋だろうか。
 同じような部屋が次々に映し出されていく。
 人が映ることもあった。
「レイルちゃんはどこにいるか知ってるですか?」
「レイルはここにはいないよ〜。シャンバラとか地球の色んなばしょに、つれてかれてるの〜。あ、これないしょね! レイルのことは誰にもいっちゃいけなんだった。ひみつね、しーだよ?」
「うん、レイちゃんのコトは秘密なんです……」
「ひみつ、ひみつ〜♪ ないしょのレイルちゃん〜♪」
 愛菜は無邪気に歌を歌いだす。
「それから、テストに合格ってなんですか? ボクの身体、今特に変なところはないですけど」
 ヴァーナーはお風呂に入った時に、自分の身体を鏡でよく確認してみたが、傷もなく、傷跡なども残っていなかった。
 能力が低下していないかどうか少し気になったけれど、この部屋では魔法や超能力、精神力を要する能力は使えないらしく、確かめることは出来なかった。
 身体能力はなまってはいそうだけれど、通常通りなようだった。
「他のお部屋が見れるってことは、この部屋も他の部屋から見れるってことですか?」
「うん、カメラは電気とかについてるよ」
 部屋の中に電気やランプ、火災報知器のようなものがある。これらにカメラがついているようだ。
「外に繋がってる所はないですか?」
「外へはカベをぬけて行くんだよー。愛菜は行き来できるけど、やり方はヒミツなの♪」
「ここでは魔法、使えないんだよね」
「ママとか、使える人は使えるよ〜」
 うーんと思いながら、ヴァーナーは色々試してみるけれど、やはり魔法は使えなかった。
「カメラにあいさつしたら、誰かあそびにくるですか?」
「ずっと見てる人はいないとおもうよ〜」
 愛菜はリモコンを操作して、次々に部屋を映していく。
「あ……っ」
 ヴァーナーは思わず声を上げるが、盗聴もされていると思われるため、言っても良いかどうか少し迷った。
 知り合いの姿が映っていたのだ。
(今のは、吉永竜司おにいちゃんです、一緒にいたのはリナリエッタおねえちゃんでしょうか)
「おねんね中、おねんね中〜。おにいちゃんとおねんね中?」
「!!」
 続いて映し出された男女の姿を見て、ヴァーナーはどきっとした。
 ゼスタ・レイランと、女の子だった。女の子の方は背を向けていた為、誰だかは分からなった。
「あと、百合園の子でテストにうかった子がまたくるかもっていってたから、その子でもいいかも〜」
「それは、マリカさんですか?」
「ううん、ちがうよ〜。新しい子! いっしょにあそびたいな〜。優しい可愛いおねーちゃんならあそんでもいいよって、ママも言ってくれるはず! 百合園をドーンするときにおわかれだけどね!」
 あははははと愛菜は楽しそうな笑みを浮かべる。
 無邪気だけれど、それゆえに少し残酷に見える笑みだった。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

 白百合革命第二回にご参加いただきまして、ありがとうございます。
 最終ページに第三回のガイドを載せる予定でしたが、特殊なシナリオであることから、次回から特別にアクション相談期間を延長していただけることになりましたので、ガイドは第三回のガイド公開日に公開とさせていただきます。

 それまでの間にも、個別シナリオの交換や、次回に向けての相談をしていただければと思います!
 ガイド公開までの交流には、こちらの第二回の掲示板をご利用くださいませ。
 今回の個別リアクションの本数は16本です。
 尚、個別リアクションは、PL様によるリアクションの不特定多数の方が読める場所へのアップや転載は禁止となります。

 PCが知り得ない情報を無理に知ろうとしたり、不自然な形で知ったとして、アクションをかけることはこのシナリオでは非推奨となります。PC間のやり取りであっても不自然なやりとりになってしまう場合は知らないとしてアクションをかけていただいた方が、1つの行動に集中でき、成果を出せる可能性が高まるかと思います。

 あとダブルアクションにもホント、ご注意ください。
 気付きにくいかもしれませんが、単身でいくつもの結果を求める行動になっているために、どれも結果に結びつかなかったり、良くない展開になっているところがあります。
 「まず」から始まり、続いて、それから、そして、といった文章をよく書く方は特にお気を付けを!

■異空間にいる(いた)方の、第三回の状況
装備とクラスは突入時のものから変えることが出来ないため、変更してあっても、していないものとして描写いたします。
スキルは違和感のない範囲で変えていただいても構いません。

冬山小夜子さん
今回のリン・リーファさんと同じような状態でスタートとなります。
水分補給が出来なければ第四回は自力で動けない状態になるかと思います。
MCの描写を放棄する場合、装着中の魔鎧のエンデさん(飲食や呼吸を必要としない)でご参加いただくことも可能です。

リン・リーファさん
体の状態は普通に近いですが、軟禁状態にあります。
魔法や超能力などの魔法的なスキルは使用できない場所にいます。

牛皮消アルコリアさん
今回の冬山小夜子さんと同じような状態でスタートとなります。

橘美咲さん
今回のリン・リーファさんと同じような状態でスタートとなります。

レオーナ・ニムラヴスさん
自力では歩くことも出来ない状態となります。
お勧めはしませんが、既に徘徊している敵に捕まったとしていただいても構いません。
その場合は初回の【既に敵に捕まっているとする】と同じ状態でスタートとなります。

樹月刀真さん
今回の牛皮消アルコリアさんと同じような状態でスタートとなります。

藤崎凛さん
初回ガイドの【既に敵に捕まっているとする】と同じ状態でスタートとなります。
行動は選べず、シチュエーションや誰と会うといったご指定もできず、展開任せになります。
先に捕まっているPCさんから接触がある可能性があります。
MCの描写を放棄し、LCでご参加いただいても構いません。

 次回のシナリオガイドは、今週中に公開予定です。
 引き続きどうぞよろしくお願いいたします!

【2014年1月27日】
微修正いたしました。
個別リアクションを公開いたしました。(9ページ〜)