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 こういったイベントがあるたびに、アレナはゼスタ・レイラン(ぜすた・れいらん)にコスプレをさせられている。
 今回はクリスマスということで、彼が用意した衣装はミニスカサンタ衣装だった。
 これまでよりもスカートが短く、可愛らしいけれど少し大胆な衣装だ。
「アレナー。着替え終わった?」
 別の部屋でパートナー達と着替えてきたルカルカ・ルー(るかるか・るー)が、更衣室のドアを叩いた。
「は、はい……」
 更衣室のドアが開き、アレナが姿を現す。
 彼女の後ろには、ハルカぱらみいの姿があった。
「うわー、スカート短っ! でも可愛いわね、ルカもこっち着ようかな。ダリルもどう?」
「着れるか」
 マントを羽織ったダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)が即座に反発する。
「ルカルカさんのミニスカサンタ姿も可愛いです。淵さんも可愛いです! 皆、サンタさんの格好ですか?」
「か、可愛い……これは喜んでいいのか、怒るべきなのか」
「褒められたのよ、喜んでいいに決まってるじゃない」
 葛藤している 夏侯 淵(かこう・えん)の背を、ルカルカがペシペシと叩く。
 淵は小柄で可愛らしい外見をしているため、こういった服も良く似合う……似合ってしまうのだ。
「アレナが着替えやすいように、ルカ達全員ミニスカサンタ服に着替えたのよ。なんと! ダリルとカルキも協力してくれたの♪」
 ルカルカがダリルとカルキノス・シュトロエンデ(かるきのす・しゅとろえんで)が纏っていたサンタのマントをぐいっと引っ張る。
「アレナはもう着替えたのだから、いいのではないか」
 ダリルはマントを掴んで抵抗する。
「ううん、恥ずかしがって会場に行かないかもしれないでしょ。皆で行けば恥ずかしくない! アレナのためよ」
「う……っ」
 アレナのためと言われると、ダリルは弱い。
 カルキノス共々、マントをはぎ取られてしまった。
 その下の彼らの格好は……そう、ルカルカたちとお揃いのミニスカサンタ衣装だった。
 2人の姿を見て、アレナの目が点になった。
「わぁ、おそろいなのです」
 ハルカは皆の姿を見て、にこにこ笑みを浮かべた。
 ダリルとカルキノスのミニスカサンタ服はぴっちぴちで破れかかっていて、胸の筋肉が浮き出ている。
 そしてがっちりとした肩幅に、筋肉質な長い手足が伸びていた。
「ふ……っ、ふふふふふふふ……あ、あははははははは……」
 そんな二人の姿を見たアレナが、声を上げて笑い出す。
「あーやっぱ、この姿はないよな」
 と言いつつ、カルキノスはシェイプチェンジの能力で、少女に姿を変えた。
 ダリルにはそんな能力はないので、そのまである。
「う、くくくくっ、はははっ、あはははははははっ。いたい、いたいです……なぜか、お腹が……う、あはははは」
 アレナはお腹を抱えて蹲り、尚も笑っている。
「どうしたの?」
 ダリルの格好が変だと理解していないぱらみいは、不思議そうな顔をしている。
「だ、大丈夫なのです!?」
 ハルカは苦しんでいるアレナを心配して、背中をさすってくれていた。
「凄いわ、ダリル。アレナをこんなに笑わせるなんて……大人の階段を上ってアダルトになったアレナに初体験させちゃったわね!」
「笑わせたのではなく、笑われてるんだろ、これは……」
「ど、どうして、ダリルさん……そんな格好……うふふふっ、ははは……っ」
 顔を上げてダリルを見て、またアレナはお腹を抱えてしゃがみこむ。
「クリスマスくらいしかめっ面せずに、普通の人みたいに楽しもうよと言われて、まあ……。
 そういわけで……」
「ふふふふ……っ」
「だからな、アレナ。頼むからそんなに笑わないでくれ」
 ダリルは軽く顔を赤らめ、困ったように眉を寄せる。地味に精神面にダメージを受けていた。
「ほら、そろそろパーティー始まるぞ。……その……裾が短いのが恥ずかしいのなら、ストッキングとかタイツとか、それかズボンで」
「あっ、逃げ道作ろうとしてる」
「……皆でズボンも悪くないと思うぞ」
「却下!」
 ダリルは真剣な目で言うが、ルカルカに却下されてしまう。
「でも、このままだとアレナが笑い転げてパーティーに行けないから、ダリルはズボンでもいいよ」
「あ、ああ、そうさせてもらう」
 ルカルカからマントを返してもらい、ダリルはマントを纏って衣装を隠す。
「ふ、ふふ……は、はあ……はあ……」
 ようやく、アレナの笑いも止まった。
「ご、ごめんなさい。えっと、ダリルさん、服のサイズ合ってないみたいです」
「そういう問題じゃないんだ……」
 ふうとダリルは大きく息をついた。
「アレナは、似合ってる。可愛い」
 言って、ダリルはサンタの帽子をチョンとアレナの頭に斜めに被せた。
「ありがとうございます」
「皆お揃いでサンタなのです」
「おそろいだね」
 ハルカはアレナとお揃いのミニスカサンタ。ぱらみいはケープを羽織り、楽しそうにしている。
「はい、お揃いなので……ちょっと恥ずかしいですけれど、この服で行きます」
「それじゃ、行こう! まだ着替えてる子たちも、行くわよ〜。友達と料理がルカたちを待ってるわ!」
 ルカルカはアレナの手を取ると、パーティー会場へと歩き出す。
 その後に、淵とカルキノス、アレナと共に更衣室で着替えていた女の子達が続く。
「ふふ……」
 歩きながら、アレナは少し恥ずかしげな顔でダリルを見て微笑んだ。




 トオルたちがパーティー会場に入った頃、スタスタと彼らに近づいてきた人物がいた。
「初めてお目にかかりますわ、白百合会会長アナスタシア・ヤグディン(あなすたしあ・やぐでぃん)ですわ!」
 アナスタシアは正装にして盛装、正直に言って場違いな、お姫様のような豪華なドレスで妙に偉そうに挨拶する。
 続いてアナスタシアの横にいたワンピースドレスにボレロと、普段と殆ど変わらぬ貴族の礼装の一組の契約者が頭を下げた。
「初めまして、会計の村上 琴理(むらかみ・ことり)と申します。皆さんとお会いできるのを楽しみにしていました。こちらがパートナーの――」
フェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)です、初めまして。今は実家の手伝いをしていますが、今日はご招待を頂きました」
「おう、よろしくな。こっちは――」
 トオルが三人分の自己紹介を済ませると、
「今日はどうか楽しんでいらして下さいね。宜しければ、後で皆さんのお話を聞かせてください」
 話しているといつの間にかハルカ・エドワーズ(はるか・えどわーず)がやってきて、アナスタシアのドレスに視線を注いでいる。
「お姫さまなのです……!」
 感激して目をキラキラさせるハルカに、アナスタシアは照れてまんざらでもない、といった表情で「ありがとうございますわ」と礼を言う。
「ハルカさんもお可愛らしいですわ、サンタの妖精さんみたいですわよ」
 そう話しているところに、元白百合団団長・桜谷 鈴子(さくらたに・すずこ)が楚々とした歩みで訪れた。
「どうぞもっと中へお入りください、丁度今、温かいお料理が来たところですわ」
「そ、そうでしたわね! 百合園のおもてなしをじっくりと味わって頂きますわ!」
「だから会長、なんでそんなに偉そうなんですか……」
 琴理が諦めたような表情で肩を落とせば、鈴子はふふ、と優しく笑み、
「一緒に頂きましょう。積もる話はその時にでも……」
「そうだな、腹も減ったし」
 トオルは一度シキとぱらみいを振り返ると、食べるぞー、と気合を入れ、一同に笑顔が広がるのだった。