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【選択の絆】消え去りし火の表裏

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【選択の絆】消え去りし火の表裏
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南 鮪(みなみ・まぐろ)のパートナーの、
一休 宗純(いっきゅう・そうじゅん)は、
石原肥満の葬儀を始めた。

一休は、肥満から遺言を聞いたと触れ回る。
「『パラ実の新校長は三人制度が面白いからオールオッケー』とおっしゃっておった。
信じぬ者は罰当たりじゃぞ」

「本人が居れば遺影は必要無くて経費削減と言ったところじゃな。
性格的に戒名なんぞも要らんか、
石原肥満として旅立ち150年の後、再び石原肥満として再び輪廻を巡られよ」
『ほっほっほ、こうして、儂の葬儀にこんなに大勢、立ち会ってくれるとはの』
肥満は、うれしそうに、笑みを浮かべていた。
その瞳に、狂気は感じられなかった。

「右府様が言ってたぜ、
パラミタでは常にトップは三人居ないと破綻するってなァ〜。
校長でもいっぺん試してみろってよォ〜。
現に今はオアシスの連中も新品パンツが足りなくて困ってるしよォォ。
『大荒野を三匹の校長が斬る』で行けるぜ」

ジャジラッド・ボゴル(じゃじらっど・ぼごる)も、
仲間である如月 和馬(きさらぎ・かずま)が、
アイリスをパラ実校長に推薦したため、
アイリスチーム所属だったが、
アイリスが校長になってくれた方が、
恐竜騎士団としても都合がいいと思っている。
(恐竜騎士団にとっては、エリュシオン出身のアイリスに、
パラ実のトップについてもらった方がありがたいからな)
それはそうと、
パラ実生にわかりやすいように自説を展開する。

「パラ実に新たなる都市伝説として曰くパラ実に三乳あり。
魔乳のマレーナ。ドージェですら骨向きにした魔性の女。
美乳のアイリス。世界樹ユグドラシルのように高くそびえるロケット型。
創乳のジークリンデ。シャンバラは常に女王と共にあり、まさしく始まりの創生のオッパイと言える」

ジャジラッドは、
「三乳会」としてそれぞれの支持する校長及びその代理人が定期的に会合を持ち、
パラ実の運営を行っていく、
パラ実でありながら民主的な組織を作るべきではないかと提案したのであった。

サルガタナス・ドルドフェリオン(さるがたなす・どるどふぇりおん)は、
ジャジラッドが考えた三乳会の構想を都市伝説として
宣伝広告を使いパラ実中に流布していた。

「マレーナは夜露死苦荘の管理の仕事、
ジークリンデが派遣である事を考慮し
マレーナはパラ実の校長。
ジークリンデには、オレが総長を務める
「種もみ学院」の校長に就任をしてもらうのはどうだ?
アイリスには両校の副校長の兼務をしてもらいたい。
両校の校長が不在となる期間が重ならないように調整して、
不在期間はアイリスが校長代行を行う形が妥当だろ」
国頭 武尊(くにがみ・たける)も、
3人でのパラ実の自治を提案する。

ジークリンデは、「種もみ学院」の件は、
今、関係ないので、受けられないと前置きして、言った。

「3人での校長ですが、
皆さんおっしゃる通り、
1人より、体制が盤石になるなら、私はそれがいいと思います」
「たしかに、なんらかの事情で、校長が不在になるたび、
パラ実が乱れてもよくありませんわ」
「そうだね。大荒野の平和は、
シャンバラ全体の平和にもつながるだろう。
僕も協力するよ」
ジークリンデとマレーナとアイリスは手を取り合う。

後日、アイリスは、
恐竜騎士団の管轄を請け負う話を、団長のラミナに伝えた。
ラミナがバージェス地方と行ったり来たりで忙しないこともあり、
アイリスが、恐竜騎士団ほか、荒野にいる龍騎士たちを治める立場につくことになる。

『ほっほっほ、儂が不在の間に、そこまでの方法を考え出すとはの』
肥満は、うれしそうに笑う。
『これで、安心して引退できるというものじゃよ』

弁天屋 菊(べんてんや・きく)は、
葬式のための料理を作り、皆にふるまった。
日本、シャンバラ、エリュシオンと、三国の料理を一通りつくる。
『なるほどのう、ちょうど、3人の就任にもふさわしい料理じゃろうて』
肥満が、感心したように言う。
「あんたにはこれを用意したぜ」
菊は、肥満の末期の水の代わりに、
闇市時代の渋谷で食べたスイトンを再現したのだった。
菊は、これが肥満の原点だと考えていたのである。

『懐かしい味じゃ』
菊が多少は味付けを加えているが、
今の時代からしたら、粗末な食べ物である。
しかし、肥満は、笑顔になった。

「石原校長、アンタ、最初から操られてなんかいなかったんだな。
そうだろ?」
姫宮 和希(ひめみや・かずき)の言葉に、
肥満はにやりと笑う。
『さて、のう』
「アンタの最後の教え、確かに受け取ったぜ。
俺たちの未来を見守っててくれよ」
和希も、ニッと笑い返すと、力強く言った。

「またお盆には戻ってこいよ!」
泉 椿(いずみ・つばき)が、
線香と菊の花を手向け、肥満に呼びかけた。
『おう、おまえらも達者でのう』

「爺様にも伝えておくよ。
立派に旅立って行ったってな」
アルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)の言葉に、
肥満はうなずいた。
『ああ。
奴も、そうやすやすとはくたばりはせんじゃろうが、
先に待っておるよ』