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リアクション
大切な家族の一員だから
パラミタと地球は新幹線1本で行き来できる場所……とはいえ、上野から実家まで距離があったりするから、パラミタの学校に通う地球人は、なかなか気軽に実家に帰るというわけにはいかない。
だから、長期休暇がある時には地球行きの新幹線は里帰りしようという学生、それに伴うパートナーたちで新幹線の座席はいっぱいになる。
そんな空京駅のすぐ前に、リカイン・フェルマータ(りかいん・ふぇるまーた)のパートナー3人はペット相談カウンターを設けていた。
「都合電車一本で行き来できるとはいえ、パラミタと日本は海外どころか異世界だ。生物のやりとりには気を払ってくれよ。ペットたちの為にもな」
アストライト・グロリアフル(あすとらいと・ぐろりあふる)は判官の心得をフル活用して、地球に里帰りする際ペットをどうすれば良いか、の相談に乗っていた。
「ゆるスターか。それならケージに入れて連れていけば問題ないだろう。大切なペットなんだから、地球に忘れてきたりしないように気をつけるんだぞ」
パラミタ固有でない種であれば、地球に連れて行くのにはほぼ問題がない。新幹線内でもケージに入れておいてもらえれば、他の乗客の迷惑にもならないだろう。
けれど、どんなペットでも同じ方法でとはいかない。
「さすがにそのサイズは無理だろう。貨物扱いとして別輸送すれば送れないことはないけど、帰省先でもかなり迷惑になると思うぜ」
大型のペットを地球に連れて行くのはかなり無理がある。
かといって、小型なら大丈夫かと言えばそうでもない。
「出来れば、鳥や昆虫はやめておいてもらえないか。病気を媒介されちゃたまらないからな」
ペットや帰省先の負担を考えれば、あまり地球に連れて行って欲しくないけれど、どうしても、という場合は何か方法がないかと飼い主とあれこれ相談して一番良い方法を模索する。
「って待て待て。そいつらに関しては、連れて行けるかどうかより、向こうで連れて歩けるかどうかが問題だろうが」
スライム、ゴーレムにお化けキノコ、アンデッド。さすがにこれらを地球で連れ歩かれると困ったことになりそうだ。
アストライトの忠告に、飼い主はうーんと考えこむ。
「でも、うちは全員が帰省しちゃうから、ペットの面倒を見てくれる人がいないのよ」
「だったらペットホテルに預けるのはどうだ?」
「ペットホテル?」
「俺のパートナー仲間がやるって言ってたから、そっちを覗いてみるといいかもな」
アストライトが言った通り、サンドラ・キャッツアイ(さんどら・きゃっつあい)と中原 鞆絵(なかはら・ともえ)は臨時のペットホテルを運営することにしていた。
「普段は当たり前すぎて気づかないかも知れないけど、毎日の生活を一緒に過ごすペットだって立派な家族なんだよね」
ずっと一緒にいてあげてほしいけど、どうしようもない時もある。そんな時、安心してペットを預かってもらえるところがあれば、飼い主も安心だろうとサンドラは帰省する人のペットを預かることにしたのだった。
「向こうに1週間ぐらい滞在するつもりなんだけど、預かり料は幾らぐらいになるのかしら?」
「預かり料はいらないよ。こんなことで料金を取るのはあれだから、ってアストライトに言われたし。あ、その代わり、これからも相談に乗れるように、ここに連絡先を書いてもらえるかな?」
サンドラは預かり台帳を出して頼んだ。
それに記入し終えると、飼い主はこれで安心して地球に帰省できると、2人に礼を言った。
「ありがとう。うちの子をよろしくね。でも、あなたたちはパートナーについて地球に帰省したりはしないの?」
ペットホテルをしていたら帰れないだろうと心配する飼い主に、鞆絵は大丈夫ですと穏やかに答えた。
「あたしのパートナーは、てこでも地球に帰ろうとしないんです」
英霊である鞆絵にとって地球は故郷だけれど、それはもう何百年も前の話。里帰りという気分にはならない。それよりも、地球には帰らないと言い張るリカインを置いていけない、という気持ちの方が強かった。
「ですから、どうぞお気兼ねなく里帰りしてきて下さい」
鞆絵が言えば、サンドラも約束する。
「お預かりしたコは責任持って接しますから、安心してください」
契約者が預かってくれるならば安心だと出かけてゆく皆を見送ると、サンドラと鞆絵は預かったペットの世話に忙しく立ち働くのだった。
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