校長室
こどもたちのおしょうがつ
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「さむいー……」 外見5歳のかなめちゃん(六鶯 鼎(ろくおう・かなめ))は、お外からとことこログハウスに戻って、こたつがおいてあるリビングに到着した。 「こたつー。あたたかいー」 すでにしょうごくん(如月 正悟(きさらぎ・しょうご))が、こたつにインしており、すごく幸せそうな顔をしていた。 「あたたかい……?」 こたつを知らないかなめちゃんは、訝しみながらも足を入れてみる。 「こたつあったかい……」 そして、中を覗いてみてびっくりする。 「あかい! なんで!?」 そして、こたつの中に手を入れて、熱源に手を伸ばす。 「に゛ゃー!」 熱さに驚いて、かなめちゃんは壁まで飛びのいた。 「ばかもの、熱源に触るでない!」 悲鳴を聞いて飛んできたアーデルハイトが、すぐにかなめちゃんの手を治療する。 「ばか……?」 泣きそうな顔で言った直後に、かなめちゃんは震えだす。 「……さむい……」 「はいるといいよー。こたつー。くびだけだしてー。こたつむりー」 ぬくぬくしながら、しょうごくんがそう言う。 「……だいじょうぶ、かな……」 かなめちゃんはもぞもぞとこたつの中に入ってみる。 今度は熱源に触れたりしない。 「……あったかーい」 そして、しょうごくんとならんで、ほくほく笑顔を浮かべた。 「こうやってごろごろするのがこたつのたのみしみかたなのー」 しょうくごくんの得意げな説明を、かなめちゃんはふむふむと聞く。 「おとーさんがいってたの。こたつむりはかくしんしたじんるいなんだって」 「……かくしんしたしんるい?」 「うん、こたつむりはじんるいのえいちがうんだの……」 「……えいち?」 「……えいち?よくわかんない」 しょうごくんはお父さんの言葉を思い出していくけれど、言葉の意味はよくわからなかった。 でも、2人ともいいやと思った。 暖かくて、幸せだから。 「……みかん……」 かなめちゃんは、こたつの上のミカンに気付いて、一つ手に取った。 ほっこり笑顔を浮かべると、しょうごくんもほんわり笑顔を浮かべる。 「……はい……!」 「ありがとー」 しょうごくんにミカンを渡して、かなめちゃんは一緒にむきむきして食べ始める。 「……あったか……」 「うーん……ねむくなってきた……」 ミカン食べた後、2人は眠気に襲われる。 「ちょっと眠ってからにするかの?」 眠そうな2人に、料理を運んできたアーデルハイトが問いかける。 「うん。ねるー、おふとんどこ?」 「……すー……すー……」 しょうごくんはぼんやりした顔でこたつから出て、アーデルハイトに隣の部屋に連れて行ってもらう。 かなめちゃんはこたつの中で幸せそうな顔で眠ってしまっていた。 「……こたつ、むり……」 「こたつむり、ですか」 かなめちゃんの口から出た寝言に、料理を運んでいた鈴子達が優しい微笑みを浮かべた。 隣の部屋にはちょっとした玩具や縫いぐるみがおかれていた。 それから、着替えもこの部屋に置かれている。 「ひとりでできますぅ。……できますぅ……っ」 あすかちゃん(明日香)は、一人でお着替え出来ると言い張るけれど、袖に腕をうまく通すことができずにいた。 「あ、こんなところにうさちゃんのぬいぐるみ……」 外見4歳のセルマくん(セルマ・アリス(せるま・ありす))は、大きなうさぎのぬいぐるみを発見して、拾い上げた。 (かわいいー) ぎゅーっとぎゅーっと抱きしめる。 (一緒にいよー) そして、うさぎさんを抱っこしたまま、部屋の中を見回す。 「ええと……ぼくはおそとでてないから……おきがえしなくていいし……」 このうさぎさんと一緒に、こたつに入ってご飯待ってようかなと思って、セルマくんは隣の部屋に向かおうとした。 その時。 「わたしもまほーのちからで、みんなをまもりましゅっ!」 「……わ、わるい子は……まじかるケイが、おしおき……です」 ソアちゃんとケイちゃんは、魔法少女のお洋服に着替えて、2人組みの魔法少女ごっこをしていた。 「わるいことなんて、してないよー。ごはんたべてるだけだっ!」 二人から逃げ回っているのは、だいすけくん(大助)だ。 キッチンからおせち料理をくすねてきて、一人で食べていたのだ。 「あっ」 だいすけくんが、ドンッと、セルマくんにぶつかった。 転びかかったセルマくんの手からうさぎさんがポーンと跳ね跳んでしまう。 「ぬいぐるみ……飛んで行っちゃった……」 膝を床につきながら、セルマくんは少しの間ぼんやりしていたかと思うと、次の瞬間。 「えぐっ……うええええーーーーんっ…………」 大きな声を上げて、泣き出してしまった。 「おれ、わるくないよ! ほんのちょっとぶつかっただけだ!」 そう言うだいすけくんに、ソアちゃんが近づいて、ステッキを向ける。 「ちょっとでも、ぶつかったらあやまるでしゅ!」 「……はい……」 泣いているセルマくんに、ケイちゃんがぬいぐるみを拾い上げて持って行ってあげた。 「ありがとー」 すぐに、セルマくんの顔に笑みが広がる。 「うさちゃん、うさちゃんー」 そしてまた、ぎゅっぎゅーっと抱きしめた。 「なんだうそなきか、ふんっ。つぎはなにたべるかな。よういができるまでまってられるかっ」 だいすけくんは部屋から出てキッチンに向かおうとする。 すぐに、ソアちゃんが前に回り込む。 「ごはんはみんなそろってたべるでしゅ! よごれたてはあらわないとだめでしゅよっ」 「……いけない……です。みんなもみんないっしょにたべるの……たのしみです……から」 ソアちゃんとケイちゃんが追い掛け回して、だいすけくんを捕まえる。 「あばれてはダメですぅ〜。……とこーちょーせんせーがゆってました!」 まことちゃん(真言)はお皿を運びながら、お友達にそう言う。 「じゅんびができたらよびにきますから、みんななかよくまっていてください。……と、こーちょーせんせーはおもっています。たぶん!」 「はいでしゅっ」 「わかり……ました」 ソアちゃんは白クマのぬいぐるみをぎゅっと抱きしめながら頷き、ケイちゃんは恥ずかしげに顔を赤らめたまま、こくりと頷く。 「おなかぺこぺこだ。はやくしろー」 だいすけくんは腕を組んでぷいっと顔を背けた。 「ここでいいこにしてるでしゅ。そしたらおいしいものもらえるでしゅよ?」 「ごはんたのしみです……いっしょにたべましょう」 ソアちゃんとケイちゃんはだいすけくんを挟んで微笑んだ。 だいすけくんはふてくされ気味の表情のまま、首を軽く縦に振った。 「では、みんなが、はやくたべられるよう、おてつだいがんばります!」 まことちゃんもにっこり微笑んで、食器運びを頑張るのだった。 「明日香も手伝ってくれますか〜?」 リビングからエリザベートの声が響いてくる。 「はいーっ。あ、うう……っ」 エリザベートに呼ばれて行きたいのに、あすかちゃんはまだお着替えがちゃんと出来ていない。 「こっちのふくがかたんでしゅ。こうするでしゅ」 「これは……こうです」 ソアちゃんとケイちゃんが、お着替えを手伝ってあげて……明日香ちゃんも立派な魔法少女に変わった! 「わたしも、おてつだいしますぅ」 まことちゃんを手伝って、食器をちょっとだけリビングに運ぶと。 「ちっちゃいのに良く頑張ってますぅ〜。明日香はいいこですぅ」 エリザベートがまた、なんだか嬉しそうに明日香の頭を撫でたのだった。 あすかちゃんも嬉しくなって、満面の笑顔を浮かべた。そして、ぐっと背伸びをして、エリザベートにちゅっと口づけた。