校長室
こどもたちのおしょうがつ
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第4章 森の中の子供達 ご飯の時間より前。 かくれんぼで遊ぶ子供達がいる中、野獣が出るという森が気になってこっそり入り込んだ子供達もいた。 入っちゃダメと言われると、入りたくなっちゃうものなのだ! 「さあ行きます。おくに行きます」 先頭を進んでいるのは、レン・オズワルド(れん・おずわるど)のパートナーの外見8歳児、ザミエルちゃん(ザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる))だ。 「……で、何故付いて来ようとするのです?」 くるりと振り向いた先には、外見3歳のまどかちゃん(桐生 円(きりゅう・まどか))と、同じくらいの年のひななちゃん如月 日奈々(きさらぎ・ひなな)の姿があった。 「ついていってるんじゃないよぉ。いくばしょがおなじだけだよぉ」 「でしゅぅ〜」 まどかちゃんとひななちゃんは小さなお手てをつなぎ合って、そろりそろりと歩いている。 「ここからは『大人』の時間なのです。子供は家に帰る時間です」 ザミエルちゃんの言葉に、まどかちゃんは眉をきゅっと寄せて、日奈々ちゃんは首を傾げた。 「おねーちゃんだって、こどもだよぉ!」 まどかちゃんがびしっとザミエルちゃんを指差す。 「知ったこっちゃありません! 私のもくてきはハンティング。子供はあしでまといです」 それから、ザミエルちゃんはふふんと笑みを浮かべる。 「ちょうきょうあくなドラゴンをたおして有名になり、しょうらいはゴージャスなお城で一生楽しくくらすのが夢です」 「ドラゴンいるのぉ?」 「いるんでしゅかぁ……?」 まどかちゃんとひななちゃんは不安そうな顔になる。 「いてくれなければこまります。しょせん世の中は弱肉強食。夢をつかむかつかまないかは自分自身が決めるのです」 胸を張って得意げな表情でエバって、「帰りなさい」といった後ザミエルちゃんは二人が追い付けないような速度で、奥へ奥へ進んでいってしまう。 「……へんなのぉ」 「よくわかんないでしゅぅ〜。ドラゴンいるでしゅか……?」 「んと、おとなたちがいいものをまもらせてるかもぉ?」 まどかちゃんは、大人達がいいもの(宝物)を森の奥に隠して一人占めしているから、自分達に森の中に入るなと言ってるんだと思って、宝物を探しに行こうとひななちゃんを森へと誘ったのだ。 「ドラゴンいたら、にげるでしゅね……。でも、いいものって……なんでしゅかねぇ〜。あまいものかなぁ〜?」 甘いものだといいなーと思いながら、ひななちゃんはまどかちゃんの方に顔を向けた。 「まどかちゃんは……なんだと、おもいましゅかぁ〜」 「あまいもの……おかしかなぁ? でも、おかしは、おかしのいえがあったよねぇ。わかんないやぁ。わかんないけどぉ、きっといいものだよぉ」 まどかちゃんがそういうと、ひななちゃんはにこっと笑みを浮かべてこくんと頷く。 「たのしみだねぇ。いこぉいこぉ〜」 まどかちゃんも目を輝かせながら、足を大きく踏み出した……途端。 「ふぎゃっ!」 スカートに足をひっかけて、ぽすんと雪の中に転んでしまう。 まどかちゃんの体は、綺麗な大の字を描いていた。 「だいじょうぶでしゅか〜」 ひななちゃんも、膝を雪の上について、まどかちゃんを引っ張り起こしていく。 「うん、だいじょうぶだけどぉ、ふくのなかにゆきがはいっちゃったよぉ。つめたいよぉ」 服の中に入った雪が溶けていき、服を濡らしていってしまう。 「はうぅ」 今度は、ひななちゃんが悲鳴を上げた。 木の枝に積もってた雪が、ばさりと落ちた音に驚いたのだ。 ひななちゃんは、まどかちゃんの腕をぎゅっと握りしめる。 「んーと……」 冷たいし、帰った方がいいのかなと思いながら、起き上がってまどかちゃんはあたりを見回したけれど。 あたりにあるのは、沢山の木と、雪だけで。 お友達達も、ログハウスも、道路も見えなかった。 「ここどこなのぉ? ひななちゃんわかるぅ?」 「わかんないでしゅぅ……」 一緒に、またちょっと歩いてみるけれど、同じ風景以外、何も見えなかった。 ザミエルちゃんの声も足音も聞こえない。 「こわいでしゅぅ……ここ、どこでしゅかぁ……」 ひななちゃんはすっごく不安になってしまい、余計に寒くなっていく。 「ひな……もう、うごけないでしゅぅ……」 寒さと疲れで、膝ががくがくして、まともに歩けなかった。 「えっとぉ……えっとぉ……」 まどかちゃんは困りながら、はっと思い出す。 「そうか。このふーけーじたいが、たからものだったんだよぉ」 「ふーけーが……たからもの、でしゅかぁ……?」 「う、うん」 ぼくのせいじゃない、ぼくのせいじゃないとまどかちゃんは思いながら、ごまかそうと必死だった。 「こういったら、まるくおさまるって。なんかおねーさまがいってたの」 そして、きょろきょろ見回してみる。 「これで……まるく、おしゃまるんでしゅかぁ……?」 ひなちゃんも見回してみるが、特に何も起きない。 「まるく……おしゃまるの……?」 「う、うん……その、はずだよぉ」 「ひなたち……かえれりゅの……?」 「…………」 ひなちゃんのことばに、まどかちゃんもとっても不安になっていく。 「なにもおきないねぇ、おねーさまのうそつきぃー」 そう大声で言ってみたけれど、返事はなくて。 どっちの方向から来たかも、わからなかった。 2人とも不安で不安で仕方なくて、じわりと涙が浮かんできた。 「ほんとに……ここ、どこでしゅかぁ……もう……どうしたらいいんでしゅかぁ……」 ひっくひっくと、ひななちゃんはついに泣き出してしまう。 「だれかたすけてよぉー!」 まどかちゃんがそう大声で叫び、まどかちゃんもぐすぐす泣き出す。 「だれか……たすけてでしゅぅ……。ふぇ〜ん」 手をつないだまま、小さな2人は泣きながら歩き出す。 さらに、奥へと。