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第4章 励まし!?

「あのね? だからですね? 起こす時はもう少し優しく起こしてくれと何度言ったらわかってもらえるんですかッッッ!!」
 ホワイトデー大感謝祭の行われている街で、クド・ストレイフ(くど・すとれいふ)は腫れた顔を押えながら、叫んでいた。
 それはひと月前と同じような光景だけれど、明らかにクドの表情はひと月前とは違った。
 憔悴しているようであり、そして辛そうでもあった。
 先月のバレンタイン直前にここを訪れた時は、彼女が出来たと余裕な表情で、パートナーのハンニバル・バルカ(はんにばる・ばるか)の乱暴な行いも何もかも許せてしまったクドだけれど。
 そう、それは本当に僅かな時間の、はかない夢でしかなかったのだ。
 クドに恋人は出来ていなかった。
 モテない男にありがちな、勘違い!というヤツだった。
 勝手に思い込んで、舞い上がっていただけだったのだ。
 恥ずかしすぎて……いや、それよりも悲しすぎて、クドはすっごく落ち込んでいた。
 他人と目が合えば、哀れみの目を向けられているようにみえて。
 目が合わなければ、哀れまれて逸らされていると感じてしまうほどに。
 でも仕方ないのだ。
 クドはドMな変態さんなのだから。
 挨拶代りに下着の色を聞いてしまうほどに、変態さんなのだから!
「あそこの団子、食べてみるとするか」
 クドの叫びは完全に無視して、ハンニバルは露店へと向かっていく。
「はあ……」
 クドは彼女の背を見ながら、辺りに響き渡るほどの、大きなため息をついた。
 先月は、ハンニバルに財布の中身をスッカラカンにされた。
 今月も同じように、朝、顔面にケリを入れられて、ここまで連れてこられたのだ。今度はどんな貧乏クジを引かされることやら……。
 とぼとぼと、クドはハンニバルに続く。
「あ、そうそう」
 一人で勝手に露店に向かおうとしていたハンニバルが戻ってきて、クドの隣へと立った。
「ん? 財布ですか、財布ですよね……」
 しぶしぶ、財布を出そうとしたクドだが、ハンニバルは首を左右に振った。
「今日は持ち合わせがあるんでな。ところでな、大感謝祭の期間中、どうやらカップルで買い物をすると抽選券がもらえるらしいぞ? カップルの振りでもしておこうか」
「え……っ、え!? いやまって。それってお兄さんが変な目で見られたりしません?」
 クドの年齢は二十歳。外見はもう少し若く見えるらしい。
 ハンニバルの外見年齢は13歳☆ 身長138センチ!
「いつものことだろう」
「……まあ、そうですけれどね。といいますか、お兄さんはロリコンでもありますけどね?」
「問題はないな」
 そう言って、ハンニバルはクドと手を繋いだ。
(カップル……というより、妹に振り回されている兄貴に見えるんじゃ? まあ、義妹も守備範囲ですけどね!)
 そんなことを思いながら引っ張られて、クドはハンニバルの買い物に振り回されていく。

 気に入らないことがあったら指を折られるんじゃないかとか、団子をおごる代わりに宝石をおごれだとか、無茶な事を言い出さないか、いや言いだすだろうと警戒しながらの同行だったけれど……。
 今日はそんなことはなくて。
 買った荷物を彼女が自分で持とうとすることに、気味悪さを覚えるほどだった。
(もしかして、励ましてくれてるんでしょうか……?)
 クドはちらりとハンニバルの顔を見るが、何も読み取れない。
「特賞は金か。よし当ててやろう!」
 抽選会場にて。気合を入れて、ハンニバルはガラガラを回していく。
 しかし、出てきた玉は、白だけだった。
「なんだ粗品か」
 粗品として、ハンニバルはハンドタオルとティッシュを受け取った。
「思う存分使うんだな」
 それらを、彼女はクドに差し出した。
 これで涙を拭けとでも言うように。
 ……少しは気晴らしになっただろうか。
 ハンニバルはそう思いながらクドを見上げるが、言葉には出さない。
「さて、もうカップルの振りをする必要はないな」
 ぶんっと、クドの手を振りほどく。
「いったーーーーー!」
 振りほどかれたクドの手は、思い切り抽選台に衝突した。
(べ、別に照れ隠しでやったんじゃないぞ)
 ぷいっと顔を背けて、ハンニバルは先に帰路に着くことに。
「やっぱり、そうですよね。ハンニバルさんがお兄さんに優しくしてくれるなんてことは……」
 ぶつぶつ言いながら、それでもクドはハンニバルの荷物を持って、彼女の後に続くのだった。