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神楽崎春のパン…まつり

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神楽崎春のパン…まつり
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リアクション

「生着替えとか変態ホイホイ過ぎるよね」
 ルカルカ・ルー(るかるか・るー)は、友人達と共に、宿舎の警備につくことにした。
「東の宿舎とはいえロイヤルガード宿舎での犯罪を許したら面目丸潰れだし、のぞきも盗みもダメ絶対。もう許さないんだから」
「尤もだ。パーティ時間まで、男性には近づかないでもらった方がいいだろう。俺は外で警備をしよ……」
 頷きながらそう言った夏侯 淵(かこう・えん)は、ルカルカが袋の中から取り出した物を見て、足を後方にひいた。
「そ、その手にある服はなんだ?」
 ルカルカが取り出したのは、白いフリルのついた、ピンク色の服。
 人形が纏っているような、とっても可愛らしいドレスだった。
「あれ? これ気にいらない? わがままダメよー。ルカ達が見立ててあげる。任務に必要なんだから仕方ないよね」
 最後の言葉には全く心が篭っていない。棒読みだった。
 にこにこ笑みを浮かべながら、ルカルカはあれこれ服を取り出していく。
「これとかこれとか、これなんかも似合いそう〜♪」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)も運んできたスーツケースの中から、レースのショーツや、フリルのついたキャミソールなど、可愛らしい下着を取り出していく。
「まて、それ全部女物じゃないのか!? 何故俺に着せようとする!」
 淵はじりじり後ろに下がっていく。
 ぐわしっとルカルカがそんな淵の肩を掴んだ。
「皆を警戒させないためにも、仕方のないことなの。仕方のないことなのよー。我慢しないとダメよ」
 努めて真面目な顔で言うルカルカだが、目は笑っている。
「いや、俺男だし、他の男の協力者と一緒に、外にいればいいことだし……!」
「ダメダメ」
 にこにこライゼは下着を押し付けていく。
「輸送中も、見事に狙われたもんね〜。流石、淵ちゃん、可愛い女の子……じゃなかった、男の娘!」
 道中もライゼの提案で囮にされていた淵は、現れた変態達に他の女の子と同じように狙われていた。
 他の女の子を守るためにも、他の女の子よりもっと魅力的にならなければならない。
 そのためには全身きちんと女の子化する必要があるのだ。
「男の娘じゃない。違う、違うぞっ。せめて下着はやめー」
「というわけで、実力行使〜!」
 ライゼは宮殿用飛行翼で飛び、淵の後ろに回りこんで、今来ている服のファスナーを下ろした。
「淵は子供じゃないんでしょ?」
 前からルカルカが服を脱がすと、器用にキャミソールを着せていく。
 そしてショーツを渡してにこにこ。
「こ、子供じゃないが、こういうのは断じて穿かんぞ」
「よいではないかよいではないか♪」
「世のため人のため、僕達のため〜♪」
 ルカルカとライゼはすっごく楽しそうだ。
「ま、待てッ、アッー!」
 じたばたする淵を押さえつけ、くすぐって脱力させたり。
 ルカルカとライゼは彼女……ではなく、彼に可愛らしい服を着せて、可愛らしい娘に仕立て上げる。

「こんにちは〜。僕達が護ってるから、安心してお着替えしてね! ……ほら、淵ちゃんも挨拶挨拶!」
「ちわ……。護衛はちゃんとやるつもりなんで、安心してくれ……」
 ライゼは元気よく、試着に訪れた学生達に挨拶をする。
 どよーんとしながらも、淵もライゼに促されて挨拶をした。
「護衛任せても大丈夫かしら。2人とも可愛いから気をつけて。特にあなた、そんなふりふりの服着てたら狙われてしまうわ。優子さんのズボン借りたらどう?」
「サイズが合わないし……もとより、違うんだ、俺を良く見てくれ! 女の子じゃないッ」
 小柄スレンダーちっぱい、ふわふわロンゲに高い声、こんな可愛い子が女の子のはずがない、はずがないんだ! ……?
「んーと、大人の女性扱いは、もう少し成長したら、ね」
 淵の主張は通らず、学生達は2人を完全に可愛いらしい女の子同士のお友達だと誤認していた。
 淵はガクリと肩を落とす。
「男の娘にも見えないほど、完璧なんだね。可愛いって絶賛だったねー」
 ライゼは頭をなでて慰めて?あげていた。

「楽しそうにやってるな」
 前を歩くライゼと、ふりふりの可愛らしい服を着た淵の姿に、朝霧 垂(あさぎり・しづり)の顔がほころんでいく。
「見かけはもちろんだけれど、見えない部分まで完璧なのよ」
 そう答えるルカルカはデジカメを持っている。
 並んで歩く可愛らしい二人の姿もパチリ。
「これもつけよー」
 ライゼが淵の頭にリボンを結んでいく。
 淵は抵抗してライゼの手を払いのけようとした……その時。
 逃げるように、部屋から出てきた優子に、淵の手が当たってしまった。
「っと、すまない」
 淵が謝るより早く、垂が駆け寄った。
「ほらほら、周りに迷惑だろ」
「……すまん」
「ごめんなさーい」
 淵とライゼは優子に頭を下げる。
「いやこっちも、突然飛び出してすまなかった」
「中に覗き行為をしたヤツらがいるんだよな?」
 垂の問いに、優子が頷く。
「ああ。パーティが終わるまで、私の部屋で正座させておくつもりだ」
「そうか。パン…パーティを別の意味で楽しみにしてたんだろうし、あとで俺が焼いたパンでもご馳走してやるかな」
 垂のその言葉に、前を歩いていたライゼがわくわく……いやドキドキする。垂は極度に味付けが下手だから!
「あとそれから。服貰っていいんだってな? もし良かったら、俺の事コーディネートしてくれないかな?」
 垂はメイド服の上に教導団の制服を纏っている。
「基本的にいつもこの姿で行動してるからさ、私服って余りもってないんだよ。サイズ的にアレナの服の方が合うかな? できれば2人の趣味でコーディネートしてもらえたら嬉しいんだけれど」
「ん。パーティが終わった後でよければ」
 優子がそう答えると、ルカルカがひょいっと二人の前に飛び出して笑みを見せる。
「たれちゃん、大人っぽい服も似合いそうよね。外見相応の可愛らしい服も〜。ルカが審査してあげる!」
「ありがと。ま、淵の可愛らしさには完敗だけどな」
 そんな垂の言葉に、皆の顔に淡い笑みが広がった。