シャンバラ教導団へ

百合園女学院

校長室

薔薇の学舎へ

ハロー、ゴリラ!(第1回/全1回)

リアクション公開中!

ハロー、ゴリラ!(第1回/全1回)

リアクション


fairyland【5】


 森ガール・コミュニティ『居住区』。
 武器庫を破壊された森ガールじり貧は明らか、重火器に頼る装備の都合上補給がなくなったのは致命的。
 天御柱学院理科教諭アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)を筆頭に追い込みをかける。
 相棒の地祇親不孝通 夜鷹(おやふこうどおり・よたか)は嬉しそうにデコバットを振り回す。
「殺るぎゃ〜、超殺るぎゃ〜! なーなーアル〜、この能なし筋肉隊、全部ぶっ潰していいぎゃ?」
「中間考査の八つ当たりでそんな目に遭う彼女たちに同情しますよ。はた迷惑な」
「し、試験のことはいいぎゃ……。それにスカッとするだけじゃないぎゃ、アゲハにも褒めてもらえるぎゃ」
「おや、あったばかりでもう彼女を気に入ったのですか?」
「アイツはワシと同じで夜の匂いがするぎゃ。気が合いそうだぎゃ」
「……しかし、エコを曲解しすぎて環境破壊をしていることに気付いてないんですから、森ガールも可哀想ですね」
「ぎゃ?」
「ま、そう言うと世のエコロジストのどれほどが実際に環境を思いやってるかも疑問ですがね。殆どが『環境に良さそうなことをしてみる』という立場でしょう。『エコと名の付いているものだから買ってみた』『エコ』になりそうだから一回試してみた』。結局、持続性のない取り組みはただの自己満足、本当に環境を想うなら根気強くあらねばと思います」
なんかオメーせんせーみてぇだぎゃ
「……あのねぇ」
 ふと、開けた場所に出る。周囲を民家に囲まれたところ……と、屋根の上に森ガールたちがあらわれた。
 先ほどまで撤退戦を敷いていたのが嘘のよう。重武装の兵器を持ち出してこちらを完全に包囲している。
 彼女たちを率いているのはマフィアルメンザ・パークレス(るめんざ・ぱーくれす)だった。
「武器庫を潰したぐらい調子にのるたぁのぅ。武器なんざパークレスファミリーが幾らでも援助しとるわ」
 オールバックの銀髪をなびかせ、女顔に似合わぬドスの聞いた声で言う。
「まさか、スポンサーがいたとは……迂闊でしたね」
「エコも商売になる時代じゃ。うちのファミリーもここらでビジネスの足がかりを作っとかんとなぁ……」
 ぱちんと指を鳴らしたルメンザの合図に、森ガールたちは一斉に攻撃を仕掛けて来た。
 アルテッツァは素早く指示を出すと、夜鷹に挑発させつつ回避に徹させる。
 流れ弾が民家の壁を蜂の巣にし、屋根を吹き飛ばし、そびえる樹々をボロボロにしていった。
「……おや、今行った攻撃が何を傷つけたかごらんになりましたか。立派な木ですのにもったいない」
「オメーら、森ガールぎゃのに、森破壊ガールになってるぎゃ!」
 二人の言葉に攻撃が弱まる……その隙に夜鷹は突撃、デコバットとパージでボッコボコに殴ってく。
 アルテッツァも攻撃に加わろうとするが、しかし、自然とかどうでもいいヤツが敵にはいる。
 ルメンザは容赦なくビームキャノンを発射、何が吹き飛ぼうがおかまいなしに乱射してくる……!
「ほらほら、どうした! ケツまくって逃げんとバラバラに吹き飛んじまうぞ!」
 くっくっく……、このカッコいい姿に森ガールもキャーキャー言うてるはず、モテる男は辛いのぅ。
 パッと見スカしてるルメンザだが、内心期待して彼女たちを見る。
 がしかし、現実は非情だった。残念ながら、彼女たちのタイプは黒ブチ眼鏡の小奇麗系男子なのだ。
「ぐ……! 生い立ち:正直モテたことがない……依然更新中かぃ!
 男泣き。この怒りは敵にぶつける……と、アルテッツァを見やると姿が消えた。
 はっと顔を上げると、爆風で吹き上げられた残骸を足場にし、こちらの鼻先にまで迫ってきていた。
「ルメンザくん、キミには少々厳しい指導が必要なようですね」
 冷たく言い放つと、冷気を纏った処刑人の剣で斬り付ける。肩をかすり鮮血が宙を舞った。
 間合いをとるルメンザと対峙し、アルテッツァは静かに武器を構える。
「ちっ……、コイツできるな……。おい、森ガール、こっちの援護に回れぇ……!」
 しかし、魔法少女アイドル遠野 歌菜(とおの・かな)がそうはさせじ。
「魔法少女アイドル マジカル☆カナ、参上! 森ガールさん達、テロ行為は今すぐ止めて武装解除して下さい!」
 空飛ぶ魔法↑↑で空から華麗に舞い降り、投降を呼びかける……が素直に応じるはずもない。
 むしろ、マ・メール・ロアで猛威を振るった(?)『ライオリン』を召還し徹底抗戦の構え。
 撃ち込まれる銃弾の雨を歌菜はオートガードで防御する。
「どんなに心情が立派でも、テロ行為は許される事じゃありません。どんなに正しいことでも、武力で無理矢理に主張する事はやってはいけない事なんです! だから、私は全力で貴方達を止めます!」
 しかし、ドルイド身体強化能力で底上げされた猛攻の前に、彼女は防戦一方とならざるをえない。
 耐える歌菜……だがその時、荒ぶる力が湧いてきた。
「私が援護します、歌菜さん!」
 森ガールの側面からジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)が飛び出す。
 すると攻撃の矛先が今度はジーナに向いた。ジーナの装備は龍骨の剣と緑竜の鎧、標的となる理由は充分である。
「罪もないドラゴンさんを武器にするために殺すなんてひどい……!」
「そう言うと思いました……」
 ジーナは攻撃から逃れるため物陰に身を隠す。
「私もビーストマスター、そして、ドルイドです。あなた達の気持ちもわからなくはありません。でも、重火器まで用意してテロを行うのは違うと思います。ここにいる私が言っても説得力がないですけれど……」
 そこまで言って、彼女は首を振った。
「いえ、正論はやめましょう。これは、私にとっても、私怨、いえ、むしろ、八つ当たりですから」
「何の話です……?」
「……私の家はオーストラリアで農業を営んでいて、お父さんは日本の出身でした。日本でも有名な某団体と似たような団体に目をつけられてしまって、言いがかりや嫌がらせを受けたり、洒落にならないこともされたんです。団体は自滅したみたいですけど、残党がまだ問題を起こしたりして……だから、私はあなた達みたいな活動は大嫌いなんです!」
「それは残念ですぅ。でも、わたしたちもあなたみたいな人は大っ嫌いだからおあいこですねぇ」
 森ガールはロケット砲を持ち出し、ジーナの隠れる場所に発射した。
 爆発。しかしその刹那、滑り込んできたゴーレムが巨体を活かして彼女を直撃から守る。
 爆風に倒れるジーナを抱きかかえるのは、着流しの美男子月崎 羽純(つきざき・はすみ)である。
「やれやれ、乱暴なお嬢さんがただ……。怪我はないか、ジーナ」
「は、はい。すみません、ありがとうございます」
 イケメンに救出されて若干嫉妬まじりにうぬぬ……と唸る森ガールたち。
 歌菜は槍をくるくると回し、彼女たちに呼びかける。
「強いですね……魔法少女の素質があるとみました! ここは……私と契約して、魔法少女になってよ!
 ドえらい不穏な台詞で勧誘する。
「私と一緒に、魔法少女アイドルとして、エコを世の中に広めましょう! 貴方達とならば、きっと上手く行きます」
「お……おいおい、魔法少女に勧誘って……本気で言ってるのか? 森ガールとアイドルグループでも作るつもりか?」
「ダメかな?」
「ダメって言うか……どういう思考回路してんだよ。あ、何だか頭痛くなってきた……」と頭を抱える羽純。
 そして、森ガールは……と言うと、残念ながらあまり乗り気ではなさそうだった。
「えー、魔法少女とかぁ、なんかちょっとオタクくさいって言うか……」
「こんなのってないよってなったら困るしぃ」
 基本的にはスタイルである。森ガールなんて本質ではなく外見でやってるような連中なのである。
 そして実は筆者、このアニメを観たことがない。わけがわからないよ。
 とその時、ボボボボボと大型の機械が動くときのエンジン音が空気をつんざいた。
 ここは大自然シボラ。決してあってはならない文明の音。森ガールたちは不穏を察知し音の方に向かった。
 民家の隙間を抜けそこに見たものは、ブルドーザーと突き刺さった大量の看板。
 看板には『焼畑等による用地開拓のお知らせ〜食糧難にご協力下さい〜ニコニコ労農ファーム』とある。
 ブルドーザーの傍にローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)の姿。
初めまして、原住民ども! 今日からここは私たちの土地よ!
 風船ガムをぷくぅと膨らまし、ローザは中指をおっ立てた。
 何をバカなことを……とうろたえる森ガールにニヤリと笑って彼女は続ける。
「アメリカ人をナメないでよね。先住民を皆殺しにし、何もない野山を破壊して文明を築き上げた民族なのだから。フロンティアスピリットは環境破壊こそが全て。このシボラの森を斬り倒し、焼き払って何を作ろうかしら?」
「あ、あなた達どこの業者なの……!?」
「さぁてね……あんた達は何がいい? ハイウェイ? ショッピングモール? コンビニもいいわね」
「それなら我が国、フロンティア・オブ・イングランドを作ると言うのはどうじゃ?」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は言った。
「良いわね、それ。では状況を開始しましょう」
 パチンと指を鳴らし、剣を森ガールに向ける。
「フロンティアスピリットは行く手を阻むすべてのエコロジストを容赦しない。それを排撃し、そして撃滅する!」
「そ、そんなことさせるもんですかぁ!」
 森ガールたちは銃を乱射しながら突撃。ローザとライザはブルドーザーの裏に身を隠す。
 銃弾の雨を浴びたブルドーザーはハリボテがはがれ、中から格安のしょぼい自動車が出てきた。フェイクである。
「ライザ、準備は整ってるわね?」
「妾は誰と思うておる。全てはつつがなく優美に済んでおる」
 言った途端、森ガールから悲鳴。周辺に設置されたトラップが発動し、彼女たちは次々に落とし穴にはまっていく。
「ほんとだ。上手くいってるわね。それじゃあ、仕上げといきましょうか」
「ああ……。聞け偽善者ども。此処は今日から妾の国だ!」」
 身動きのとれない獲物を確実に戦闘不能に追い込むローザ。アクセルギアで迅速にことを行う。
 ライザは『ブリタニア』『タイタニア』の二剣を持って這い上がろうとする敵を斬り伏せていく。
「どうなるかと見てましたが……作戦は上手くいったようですね」
 エシク・ジョーザ・ボルチェ(えしくじょーざ・ぼるちぇ)は気絶した森ガールを縛りながら言った。
 作戦、つまりエコロジストに対抗出来るのはエゴイスト作戦……である。結果は見ての通りだ。
「それにしても、二人とも随分と心にもない事が口を吐いて出るものです。本当に千両役者ですね」
 ライザは半分ぐらい本気っぽいですけど……心の中で付け足した。
 と、縛っている森ガールがもぞもぞと動き、頬を膨らませてジョーを睨み付けた。
「こんなことしてぇ……ニコリーナ様が絶対黙ってないんだからぁ……!」
「森ガールのリーダーですか。では、彼女を出迎えるため、あなた達には先にコミュニティに行ってもらいましょう」
「こ、コミュニティ……?」
「刑務所と言う名のコミュニティです。草木も無いコンクリートの壁の中で絶望して下さい」
 ・
 ・
 ・
 余談ではあるが、召還されっぱなしのライオリンは基本的に無害なので誰も攻撃せず放置されていた。
 その辺の木の葉っぱを美味しそうにはんでいる。