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35)寿 司(ことぶき・つかさ)

寿 司(ことぶき・つかさ)は、テレビ出演に緊張しながらも、
しっかり質問に答えようと気を張っていた。

キルティ・アサッド(きるてぃ・あさっど)と、
レイバセラノフ著 月砕きの書(れいばせらのふちょ・つきくだきのしょ)は、
観覧席の最前列でパートナーを見守っている。

「こんにちは、ようこそいらっしゃいました。
さっそくですが、いただいている質問に答えていただきますね」
「は、はい!」
国頭 武尊さんからです。

契約者になる前は、地球で普通に学生やっていて
争い事なんかにゃ無縁だった人も居るだろうから敢えて聞くけどよ。
やっぱ、契約者になってその活動期間が長くなると
人を傷つけたり、時には殺めたりする事に、
抵抗感や不快感を持たなくなるのかね。
すっげぇ答え難い質問だと思うから、無視してもらっても構わないぜ」

「えーっと、
剣士として名を上げるためにパラミタに来た時から、
傷つけあったりすることは覚悟してきたよ。
悪人を退治するときは不快感や抵抗感があったらこっちがやられちゃうし、
お互いに名乗りを上げて戦うときは戦士としての高揚感があるし。
弱いものいじめ、は、したことないと思うけど、しちゃったらそれは辛い、かな」
「なるほど、司さんはかわいらしくても立派な剣士さんなんですね」
「いえ、そんな……」
「ところで、
司さんは『お寿司ちゃん』と呼ばれるとマジギレされるとの噂ですけれど、
実際どうなのかしら。
『お寿司ちゃん』もかわいいと思うのですけれど」
「か、かわいいかな……?
うー、地球にいたころは悪口でしか言われたことがなかったから、
ついキレちゃって、
パラミタでも反射条件で怒っちゃって即攻撃しちゃうことがあって、
なるべくキレないように気をつけてるんだけど、
やっぱり苦手な呼ばれ方なので……!
あんまり呼ばないでくださいっ!」
「そうかしら?
では、次の質問です。
渋井 誠治さんからです。

好きな食べ物は何ですか?
割とありがちな質問だけど、番組の中で時間があれば答えてくれると嬉しいな。
出身地が違うと食文化も違うだろうし、皆がどんなものが好きなのかちょっと気になったんだ。
パラミタだと地球の料理はなかなか食べられないかもしれないけど、
ここでアピールしておけば空京で流行っていつでも食べれるようになるかもよ?
なーんてね」

「す、好き嫌いはないから何でも食べられるよ。
パラミタの変った食べ物も一口食べると案外、美味しかったりするし、
パラミタの美味しい珍味を探すのも楽しいよね」
「やはり、日本の料理もお好きなのかしら」
「え? もちろん和食も好きだよ。
お刺身にてんぷらにお寿司に、え、うん、料理としての寿司は好きだけどっ」
「やっぱり、お寿司ちゃん、と呼ばせていただこうかしら」
「やめてくださいーっ!」

観覧席でパートナー二人がはらはらする。

(あー、もーあんなに緊張して……。
戦いでもないんだから、リラックスすればいいのに。
顔も真っ赤じゃないか。
ほら笑顔、笑顔って、やばいやばい。冷静になれー。
レイ、一発よろしく)
(司ちゃん……!
あんまり足をバタバタさせないで……!
こういう場でこそお淑やかに……!
地球のご家族も見てるんでしょう?
立派になったところを見せるチャンスじゃないですか!
え? キティさんなんですか?
了解。冷静になってください!)
氷術が発射され、司の頭部に氷の塊がヒットする。
「はぐう!?」
「まあ!お寿司ちゃーん!?」
「「あ……」」
司は気絶し、トッドさんが絶叫した。


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