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33)エメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)

高峰 結和(たかみね・ゆうわ)は、
パートナーのエメリヤン・ロッソー(えめりやん・ろっそー)に引きずられて、
今日も事件の渦中へと巻き込まれる。
(気がついたら勝手に2人分応募しちゃってて……)

「よ、よよよよろしくお願いしますっ」
結和は、緊張でがちがちになっていた。
一方、エメリヤンは、浮かれてわくわくしつつ、スタジオを見渡す。

「よろしくお願いしますね。
エメリヤンさんの声を聞いた方って
ほとんどいらっしゃらないと思うのですけれど、
せっかくのテレビ出演ですものね。
ぜひ、いろいろお話聞かせていただけないかしら?
ちなみに、無音声だと放送事故だと思われてしまいますよ?」

エメリヤンが硬直する。

「ちょうどいいじゃない。目立ちたかったんでしょ?」
結和が安心してエメリヤンに言う。
「……ぼ、ぼ、」
普段ほとんどしゃべらないエメリヤンは、いきなりしゃべれと言われ、
パニックになっていた。

エメリヤンはしゃべらなくても、ふだんは表情豊かで、活発なほうだ。
また、長身なこともあって目立つ。
人見知りは全然しないのだが、
言葉を選んで熟慮してしまうので、うまくしゃべれないのだった。

「……すみません。
何を話せばいいのか、わからなくなっちゃったそう、です」
かわいそうになった結和が助け舟を出す。

「ほら、前に、背中が痛いって言ってた、あの話は?」
「……え、と……」
エメリヤンが身振り手振りをバタバタしながら続ける。
「………ぼ、僕………………身長……が。…………その……………」

「結和さんは、
エメリヤンさんの言いたいことがわかるんですか?」
「え?
え、えっと……か、勘?
って、言うのも……お、おかしいですね。すみませんっ」
自分にも振られて真っ赤になりつつ、結和が言う。
「……その、わ、私、エメリヤンとは幼なじみで……て言うより、
本当に、弟みたいに、ずっと一緒にいたので。
大体、こんなこと考えてるんだろうなぁとか、こう感じてるんだろうなぁ、とか……
結構、わかるっていうか、予想、できるん、です」
強い絆で結ばれた2人だから、成し得ることだった。

「……あと、ほら、エメリヤン、表情は豊かで、わかりやすいと思うんです。
その、えっと、細かい違い……が、見分けられる、みたいで」

「……家………お店………とか………の、高さ………が…」
「高さ」の手振りをしてエメリヤンが腕を上下に振る。

「すごいですね。
今、高さの話をしてるのはわかるのですが」
「えっと、高さって言ってますね……あ、ごめんなさい」
トッドさんに突っ込むなんて、と結和は思った。
「いいのよ、たしかにそうね。
すごいのね。やっぱりパートナーだから、かしら」
「……以心伝心……って、言うんですかね。
……えへ、なんだか、恥ずかしいのですが」
結和が微笑を浮かべた。

「……背骨、が……、日本……高さ、が」
「あと……目立つ……けど」


「じゃあ、これでCM入りましょうか」
「そうですね」
時間切れになったエメリヤンが、
お茶を飲んで待っていたトッドさんと結和の方を見てショックを受けていた。
そのことは、視聴者の誰にもわかることだった。