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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?

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【2021修学旅行】ギリシャの英雄!?
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 話は前日に戻る。
 理沙や夢悠と一緒に『胸爆発事件』の影響から凹みながらも食事をしていた雅羅。
 実はそんなテーブルの近くで刀真達も食事をしていた。
「何をするにしても先ずは腹ごしらえをしてからだな」
 そんな刀真の提案で一同はレストランでラムのグリルやトマトとベーコンのパスタ、トマトとモッツァレッラのピザにスカモルツァチーズのグリルとパルマ産生ハム、魚介のマリネにスズキやタイのグリル等を頼んで皆で分けながら食べていた。
 月夜は前に注がれたワインを飲みながら、ピッツァや生ハムを食べて「ああ……幸せだわ」と幸福そうな溜息をつく。
「玉ちゃんに勧められたワイン、美味しいー」
「本当。玉藻さんが勧めてくれるお酒が美味しいですね」
 白花も月夜に微笑む。
「月夜、白花、我が’不味い酒を勧めると思うか? それに、イタリアではワインの値段等、そこらの洋酒より遥かに安いのだ」
 前は自分のグラスにワインを注ぎ、悪戯っぽく笑う。そんな前が、近くのテーブルで凹んでいる雅羅の姿を見つける。
「おーい、はいてない娘一緒にどうだ?」
「……誰が、はいてないよ!」
 雅羅が理沙や夢悠のテーブルから離れ、こちらにズカズカとやってくる。
「ん?……呼び方が気に入らないのか? 気にするな、我も着物だし下着の類は身につけてないぞ」
「私は履いてるわよ! ちゃんと!」
「ほう、どんなのだ? まさか紐とか言うのではないだろうな?」
 ワインを片手に前が言うと、
「違うわよ! レースの付いた……って、何言わせるのよ!?」
「お、雅羅か。空京万博では色々世話になったし、その辺りを話しながら一緒に食事でもどうだい?」
 刀真が呼びかけると、「でも、私向こうのテーブルでご飯食べてきたから」と言いつつも雅羅がストンと着席し、刀真と空京万博の話を始める。
 雅羅のコンパニオン衣装の事を話しているらしい前と雅羅の会話を聞いていた月夜が、酔った顔で刀真に囁く。
「下着を着せてみたら?」
「誰に?」
「玉ちゃん」
「……月夜、酔っているな」
 前が月夜と刀真を見ながらワインを飲む。
「駄目?」
 ズィィーッと刀真に顔を寄せる月夜。やや息が酒臭い。
「玉藻に下着をプレゼントしたい? 良いよ、行こうと思っていた店にが置いてあるだろうから先に行って選んでろよ」
「ありがとう!」
 月夜が刀真に抱き付いて頬にキスをする。
「じゃ、早速レッツゴー!! ほら、玉ちゃん、白花ちゃん!! 刀真、私達、先に行ってるからね!」
「えっ!? ま、まだ料理が……!?」
「私も? 月夜さん、ちょっと待っ……!!」
 しかし、月夜は問答無用とばかり、前と白花の腕を引いて【ダッシュローラー】で店を飛び出していく。
「……」
「随分、アクティブなパートナー達ね」
 雅羅が、街中に砂埃を巻きあげ爆速で飛ばしていく月夜を見つめる。
「おかげで大変賑やかに修学旅行を楽しませて貰っているよ」
 苦笑した刀真が、会計を済ませようと懐に手を突っ込み……。
「あれ? おかしいぞ? 無い、俺の財布が……!」
「さっき、あの子が抱きついた時に持っていったけど……」
「月夜か……雅羅」
「何?」
「……スンマセンお金貸して下さい。お願いします」
 刀真は、食事代を雅羅に借り、「後で必ず払う」と告げると、財布を拝借して行った月夜の後を追うのであった。


 月夜が【ダッシュローラー】で白花と前とを引き連れ訪れた店は、高級ドレスや下着を売っているブティックであった。
「玉藻さんの下着を選ぶんですか? ……えっとバストサイズは月夜さんがBで私がCで玉藻さんがDですね」
 白花がそう言って、陳列された下着を選んでいく。
 月夜は三人で色々下着を選びながら、前と白花のスタイルを横目で確認していた。
「(む〜……やっぱり玉ちゃんと白花はスタイルが良いな〜)」
 そう思いながら月夜は前に紫のレースの下着を合わせてみる。
「玉ちゃん、これなんててどう?」
 月夜に紫の下着を合わせられた前は、途端に飲んでいた時よりも遥かに顔を赤らめる。
「は、恥ずかしい!!」
「フフフ……照れてる玉ちゃんて可愛い! キスしてあげちゃう!!」
「こ、こら!? 月夜、酔うとキス魔になるって設定なんて初耳だぞ!?」
「フフフ……離さない」
 強引に前にキスを迫る月夜だが、前のガードは意外に硬い。
「もう、それなら一緒に試着しよう!」
「……はっ? 試着!? わ、我は遠慮しておくよ!」
 逃げようとする前だが、抵抗むなしく月夜に試着室へ連れ込まれていく。
「私もお手伝いに行った方がよいみたいですね……玉藻さんは下着を着けるのが恥ずかしいみたいですし……」
 白花が、二人の後を追って試着室の方へ向かう。

× × ×


「ここか……」
 月夜を追いかけてきた刀真が店の様子を外から伺う。
 しかし、三人娘の姿は見えない。
「おかしいな……少し入るのに抵抗あるけど……しょうがない。俺は月夜達の保護者みたいなものなんだからな」
 自分にそう言い聞かせた刀真が店に入る。
「いらっしゃいませ」
 店員に軽く手を挙げて応えた刀真。視線がふと店のマネキンに着せられた、蒼を基調としたイブニングドレスを捉える。
 そのドレスは、背中が大きく開いていて腕や肩、胸元が露出し、胸元や頭に青い薔薇の飾りを付いてある。
「……似合いそうだな」
 ドレスを見ている刀真の耳に、聞きなれた声が聞こえてくる。試着室の方からのようだ。
「月夜! 我は黒のレースの下着を持っているし……この格好は恥ずかしいよ」
「フフフ、モジモジする玉ちゃんも可愛い!」
「本当に。今の照れ顔の玉藻さんを刀真さんが見たら思わず抱きしめちゃうと思いますよ?」
「そ……そんなこと知らない! 白花はその、白いレース下着にするのか?」
「ええ。このレースが可愛いでしょう?」
「二人ともスタイルいいなぁ……私なんて……はぁ」
「そんなことないだろう?」
「そうですよ、月夜さんもこの赤い下着なんてどうです?」
「えー……ちょっと派手すぎない? 他のを見てくるよ」
 サッとカーテンを開け、試着室から出てくる月夜。
「月夜」
「ん? 刀真?」
 刀真が月夜を手招きしている。
「お財布? まだビタ一文も使ってないよ?」
「それもあるけど……ちょっと違う。これを着てみないか?」
「これ?」
 月夜が見ると、マネキンが着ている蒼のイブニングドレスがある。
「へぇ……綺麗ね。玉ちゃんや白花に似合いそう」
「そうか?」
「うん。だって、二人共すっごくスタイル良いのよ? 今、丁度下着姿だし、刀真も見ていく?」
 からかう様に笑う月夜に、刀真は冷静に答える。
「俺は、月夜に似合うと思っているんだけど」
「……は?」
「いや、白花には誕生日プレゼントを贈ったんだけど、月夜と玉藻には間が悪くて遅れなかったからこの店で何かプレゼントしたいと思って……」
 刀真の言葉が言い終わらない内に、月夜が刀真に抱きついてきた。
 勢いよく飛びついてきた月夜に、刀真がややグラつきながらも受け止める。
「つ……月夜?」
「……(刀真がドレスを買ってくれるって、嬉しい……どうしよう、嬉しすぎて言葉がでない}」
「喜んでいるのか?」
 月夜がコクッコクッと何度も無言で頷く。
「そうか……そこまで喜んでもらえたら嬉しいな」
 月夜を抱いたまま、刀真が柔らかく微笑む。
 そんな二人の様子を、試着室から顔だけひょっこりと出した前と白花が笑顔で見つめている。
 白花は、月夜が刀真にドレスをプレゼントして貰えると聞いて凄く感激していた。
「思わず刀真さんに抱き付く月夜さん、可愛いですね?」
「うん……我は洋装が苦手だし恥ずかしい」
「じゃあ玉藻さんは、その紫の下着を買ってもらえばいいんじゃないでしょうか?」
「……え」
 結局、前は月夜の勢いに飲まれて紫の下着を買ってしまうのであった。
 この後、前は今回買った下着について「どうせタンスの肥やしになるだろう」と踏んでいたが、月夜と白花がそれを許すはずもなく、彼女のヘビーローテーションの一着となったそうである。