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「死の予言」を打ち砕け!

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「死の予言」を打ち砕け!

リアクション

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汝、遠野 歌菜(とおの・かな)は、
魔法少女アイドルとして、幼い子どもを助けるため、燃え盛るビルに飛び込み、
子どもを助ける代わりに、自らは命を落とすであろう。
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「羽純くん、私……」
「大丈夫だ。歌菜は俺が守る。
それに、必ず事件も解決してみせる」
迷いつつも、パートナーに夢を打ち明けた遠野 歌菜(とおの・かな)は、
月崎 羽純(つきざき・はすみ)の力強い言葉に、うなずいた。
「うんっ! ありがとう。
羽純くんとなら、絶対に何とかなるよ!」
「ほら、泣くな。助かるって言っただろ」
羽純が、感激で涙をあふれさせた歌菜の目を、優しく拭う。

こうして、二人は、事件解決のために、街へと向かった。
予言が真実になろうとしているなら、
ビルが火事になり、子どもが危険にさらされているはずだ。

「あれ……!」
夢で見たのと同じ光景に、歌菜は絶句した。
そう、あのビル。
あの上階で、泣き叫ぶ子どもの姿……。
何もかもが、夢と同じだった。

「させない! あんな夢を現実なんかに!」
魔法少女へ変身しようとした瞬間、
歌菜は、全身の力が抜けていくのを感じた。
「はすみ……く……」
どうして?
そう問いかける暇もなく、歌菜は羽純の腕の中に倒れた。

「すまない。
歌菜を守るには……こうするしかないんだ」
羽純は、ヒプノシスでパートナーを眠らせると、
安全な木陰に移動させ、単身、ビルへと向かった。



夢の中で、愛する人の後ろ姿が見える。
待って。行かないで。
そう、声を出そうとするのに。
なぜか、言葉を発することができない。

羽純くん。
羽純くん……。



「羽純くん!?」
歌菜は、パートナーの名を呼んで起き上がった。
どのくらいの時間がたったのか、わからない。
ひとつ確実なのは、
今、パートナーが、自分の傍にはいないということ。
たった、ひとりで、ビルの中に走って行ったに違いないということ。

「私の代わりに……ダメ、そんなの!」

虹色の翼を広げ、
歌菜は、燃え盛るビルへと迫る。

さきほど、子どもが叫んでいた窓に、思い切って飛び込む。

「変身! 【魔法少女アイドル マジカル☆カナ】!」
ブリザードで消火をしながら、
ビルの中を探す。

「羽純くん!」
「バカ! どうして来た……!」
炎と煙から子どもをかばって咳き込みながら、羽純が歌菜に言った。
「バカじゃないよ!
私の代わりに羽純くんが死んじゃったら……そんなの絶対嫌だよ!
大丈夫。私は一人じゃない。
羽純くんがいるんだもん!
絶対、皆で助かろう!」
「……そうだな、一人じゃない。
二人居れば何とかなる……。
そう、だったな……」
歌菜の言葉に、羽純がうなずいた。

「こんな予言、絶対、嘘にしよう!
私達の未来は、私達で描かなきゃいけないんだから!」
「ああ。
俺達はいつだってそうしてきたんだ。
未来は、俺達の手で掴み取らなきゃな……!」



二人の連携は、完璧なものだった。
羽純の光条兵器が遮蔽物をなぎ倒し、アルティマ・トゥーレが炎を切り裂く。
歌菜のブリザードで、
迫る炎が勢いを絶たれる。

子どもを抱いた羽純と歌菜が、
ビルを脱出するのは、あっというまの出来事だった。

母親が、駆け寄り、子どもを抱きしめる。
もちろん、子どもには怪我はない。

「よかった……」
その様子を見てつぶやく歌菜に、羽純が言った。
「ああ、本当によかった」
そのまま、強く愛する人を抱きしめる。
「歌菜の言った通りだ。俺達は一人じゃない。
二人で、予言を打ち砕いたんだ……!」
「羽純くん、ありがとう……!」
二人は、抱き合って、無事を喜んだ。

予言は覆され、火事による死傷者が出ることはなかった。
のちに、この火事も、
テロリストが起こしたものだと歌菜と羽純は知ったが、
その目論見は阻止されたのだった。