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秋のライブフェスタ2022

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秋のライブフェスタ2022

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 第二章


 
「皆様、準備はよろしいですか? それでは第二幕! 四回戦をスタートさせていただきます!」

 十五分の休憩時間が終わり、場内がいったん暗転してオープニング時と同じように司会の二人にライトが当たる。

「ここからはさらに強烈な個性を持つ面々が続々と登場します! それでは、さっそく登場していただきましょう! けもみみこどものサクラとシホの二人、そして茅野 菫さんです!」

 リズミカルな音楽に合わせて先に現れたのはコンビ名にもなっているけもみみが特徴的なサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)騎沙良 詩穂(きさら・しほ)の二人だ。
 猫の獣人であるサクラコにあわせる様にシホもねこみみとしっぽをつけている。
 続いてステージに上がるのは赤ずきんちゃんのような可愛らしい衣装に身を包んだ茅野 菫(ちの・すみれ)だ。黒のロングヘアは後ろで綺麗に結ばれ、銀製のスクエアなレンズのアンティークな伊達眼鏡が可愛らしい顔の真ん中にちょこんと乗っていた。
 先攻はけもみみの二人、そして後攻は菫となった。
 客席ではサクラコのパートナーである白砂 司(しらすな・つかさ)が後方の席で少し戸惑いながら座っていた。

(俺がカタブツだという自覚はなくもないが、なんて場違いな感じなんだ、俺は。どう盛り上がればいいかのさっぱりわからん)

 こんなことでもない限り来ることはなかった場所に足を訪れる。周りの熱狂的な雰囲気に飲まれつつも、白砂はサクラコたちのステージを見守るのだった。

 ライトに照らされるステージ。そこにはドラムセットに座ったサクラコと、シンセサイザーの前で歌うシホの姿があった。
 秋葉原四十八星華として活躍し、共に派生ユニット『けもみみこどものサクラとシホ』として参加することになったのだ。
 ゆったりとした曲調でパーカッションを叩きながらシホにあわせてコーラスをするサクラコ。
 制服のような衣装に包まれて、彼女たちの音楽が始まる。
 シホは瞳と同じ緑を取り入れた衣装で、ゆるく結んだ緑のネクタイがブレザーの中心で軽く揺れる。
 サクラコの衣装は青のチェックで、クールさを取り入れたシホよりもガーリーに。短いプリーツスカートとニーソ、というよりもサイハイソックスに近いものに、黒のローファー。
 二人の声に魅了され、ゆったりとしたムードになってきた。前方の席ではサイリウムを振っている人たちも見受けられる。段々とスピードを落とし、ちらりと二人で視線を合わせる。
 サクラコがドラムで合図をすると、スピーカーから今までとは打って変わって激しい音が流れだす。
 ノリのよいビートにサクラコはドラムセットを宙返りで飛び越え、前に躍り出た。そしてまさかのブレイクダンス。これには観客も驚きを隠せない。可愛いアイドルが歌だけでなく楽器まで演奏できるだけでなく、ダンスまでこなすのだ。アイドルだったらダンスは普通なのかもしれないが、ブレイクダンスとなればまた話は別だろう。そんなサクラコの様子に会場もどんどんヒートアップ。
 シホがマイクスタンドを巧みに操り、歌の合間に会場に向かって声をかけ、曲の所々で観客と一体になって合いの手を入れる。
 サクラコのダンスも快調で、クルクルとターンやスピンを華麗に決めていく。
 ダンスの途中でちらりと聖域の白い布地が見えたような気がして、客席から白砂は身を削ってパフォーマンスをするサクラコを見て目頭を押さえるのだった。


「ありがとうございましたー! いやぁ素晴らしいダンスでしたね! 私びっくりしちゃいました!」
「決めポーズも二人とも可愛かったですねぇ。シホさんのマイクスタンドを使っていたのもよかったです」
「私はサクラコさんの最後のポーズが印象的でしたね。とっても可愛らしいウインクとピースをいただきました!」

 さすがの卜部とウズミもブレイクダンスには驚いたようで、興奮冷めやらぬ様子で、次の準備ができるまでの間を繋げていた。

「さて、お待たせしました。続いては愛らしい服装の茅野 菫さんの登場です。こんにちは!」
「こんにちはー」

 ぽてぽてと呼ばれてステージの中央へと歩いてくる菫。
 本来ならば参加などするつもりもなければ、そもそも参加者ですらなかったのだが、ドジなスタッフが赤ずきんちゃんのようなかわいい服装の菫を出場者と間違えてステージに誘導してしまい、名前まで読み上げられてしまった。テレビ中継も入っているためここで止めるわけにもいかず出場することになったのだ。

 もともとここに来たのには別の目的があった。
 菫は謎の闇の悪の秘密の結社・ダークサイズに名を連ねる一人なのだ。あまり知られていないが空京放送局を半分くらい支配しているという曖昧な経営権だが大株主なのだ。
 以前ダークサイズと空京放送局の間でいろいろとあったのだが、他の連中はすっかり忘れてしまったかのように関わろうとしていないようだ。あちこちに出向くので忙しいのは理解できるけども足元はしっかり固めておかないと。
 そう思い空京放送局の仕事ほったらかしリポーターの代わりとまでは言わないが、新しいメインパーソナリィティーを探そうと考えた。タイミングよく空京テレビでアイドル番組をやるようだったので便乗させてもらうことに決め、会場を訪れた菫は空京放送局の代表として空京テレビに協賛する形でアイドルの中から空京放送局の新メインパーソナリィティーを採用しようと会場を訪れていたのだ。

 しかし何の手違いがあったのだろう。
 アイドルの中からパーソナリティを探すはずが自身がアイドル側となってテレビに出る羽目になるとは。

 あのAD、あとでしめる。

 そんなことを考えながらも顔は満面の笑顔でカメラに向かっていた。
 パフォーマンスをするにしても、この状況。音源も何もない状況で何をしろと? この身一つで出来ることは何か……。

「さて、菫さんはどんなパフォーマンスを見せてくださるのでしょうか?」
「え、えーと……モノマネします!」

 急遽参加することになったうえにテレビでモノマネまでさらすとは、と羞恥も覚えたが、ここは好感度を上げておいてアイドルとして参加者と仲良くなったほうが後々誘うにしてもよいのではないか。
 そうして選んだモノマネはどうやら大成功だったようだ。
 音源もなければ歌詞すらも用意してないので先の出演者の中から何人かに曲の音源を借り、歌詞をカンペで見ながら歌うと言うものだったが、一度しか聞いていないはずのオリジナルの曲の歌い方の癖まで完璧に真似て歌いきるという即興モノマネをやってのけたのだ。
 さすがにこれはすごいと得点が伸び、なんとなんとの暫定一位をゲットしたのだった。