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リアクション
第三章
燃え上がるようなステージの熱を冷ますように行われた十五分間の休憩も終わり、まもなく次のバトルが始まろうとしていた。
そんな様子をテレビで見ていた御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は参加を決めたパートナーの出番を今か今かと心待ちにしていた。
同じようにステージ脇ではエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)は心配そうに今さっきステージの中央部へと歩き出したノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)を見つめていた。
プロデューサーとしてエントリーや各種手続き、観客の趣向分析、歌と踊りの特訓への付き合い…etcと、ノーンのアイドルフェスタ出場を全力サポートして、当日を迎えたのだが、いざ本番となっても親心のような心配が消えるはずもなく、転んだりしないかしら、歌詞が飛んだりしないかしら、ととめどなく浮かんでは消えていくのだった。
そんなエリシアの心配を他所に、当の本人は緊張した様子もなくタンバリンをノリノリのリズムで叩き、ステージを楽しんでいるようだった。
「それじゃー元気いっぱいに歌って踊るよ!!」
満面の笑みで歌いながら舞うその姿に観客の気分も盛り上がってきているようだ。
「幸せのリズムにのって!!」
水の流れのような風の流れのような衣装で身軽にステップを踏みながら、ラテンのノリでステージで舞う。
クルクルと空中へジャンプし、氷雪比翼で客席に光と氷の粒子を振りまいてから、ふわりと着地する。キラキラと反射する光のなか、優雅にお辞儀してノーンのパフォーマンスは終わった。
なんとも幻想的なステージに、陽太はテレビの前で感動していた。
同じくステージ袖で見守っていたエリシア宛に陽太は妻とともにメールでねぎらいの言葉を送る。だが、エリシアが気付くのはもっと後。
ステージから戻ってきたノーンを笑顔で抱きしめた、そのしばらく後になるだろう。
ノーンに対するは想詠 夢悠(おもなが・ゆめちか)。
袖の無い白が基調の身体にフィットしたふともも丈のワンピース。チョーカーがきらりとスポットライトを反射して光っていた。
――見上げた夜空に 月と君 丸まった身体は 月のよう
見惚れた僕が 耳にする 君の囁きは 針のよう
人気アイドルグループの代理でコンサートに出た経験を持つ想詠。その時からアイドルに興味を持ち始めたのだが、その想いがライブフェスタを観続ける内に膨らみ、ついには出場を決意するまでにいたった。
協力してくれたプロデューサーは、想詠の積み重ねた女装経験に目を付け、男の娘アイドルを提案。提案に乗せられ、ヤル気満々で【桃幻水】を飲み【『男の娘になろう!』】を熟読し立派な男の娘を目指して活動することになったのだ。
――近づく身体は 傷だらけ 凍てついた光は 繭のよう
声かけた僕と 見つめ合う 君の瞳は 雪のよう
『貴方のことが、好きで好きでしょうがない!』という想いを込めたその歌は、恋い慕うあの人へとのもどかしい気持ちがとてもよかったと女性から圧倒的な支持があったものの、パフォーマンス、という点でノーンには及ばず、惜しくも敗退となってしまった。
それでも想詠は笑っていた。
歌を歌い続けることで、いつかあの人に気持ちが届くように、そう願いながら。
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