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ヴァイシャリー湖豪華クルージング・1

ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)主催の、
ヴァイシャリー湖豪華クルージング。

秋のヴァイシャリー湖は、夏とはまた違った趣がある。

涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)は、
愛妻のミリア・フォレスト(みりあ・ふぉれすと)を伴い、
クルージングへとやってきた。

「そういえば、こうやって二人でというのは久しぶりですね」
「ええ、涼介さんと二人で過ごせるのが、とてもうれしいです」
フォーマルな場所であるため、
2人ともスーツとドレス姿だった。
普段はパートナーたちにも囲まれ、
喫茶店『宿り樹に果実』の切り盛りと、
楽しくもにぎやかな生活を送っている2人だが、
今日ばかりは、恋人同士に戻ったような、特別な時間が流れているようだった。

乗船時には、涼介は、きちんと妻をエスコートする。
ヴァイシャリー家息女のラズィーヤが主催なのだから、
失礼のないようにとの配慮だった。

ミリアは、こうした席で、きちんとエスコートしてくれる涼介に、
頼もしい視線を送っていた。
「本当に……私の隣にいてくださるのが、あなたでよかったと思いました」
甲板で、秋のヴァイシャリー湖の風を受けながら、
ミリアが微笑んだ。
「私もですよ。ミリアさん」
涼介も、穏やかに笑んだ。

やがて、ダンスパーティーの音楽が流れ始める。

「一曲、踊りませんか?」
涼介が、ミリアに手を差し出す。
「ええ……」
涼介は、やさしく、ふっと微笑んだ。
「大丈夫ですよ、私がリードしますから」
小声で気遣われ、ミリアは安心したように笑んだ。
「では、喜んで」

涼介は、ミリアをリードしながら、ステップを踏む。
(おや)
涼介は、踊りながら、ミリアの様子に気づいた。
ミリアはにこにこしている。
ダンスが終わると、涼介はミリアに言った。
「ミリアさん、踊れるじゃないですか」
「ええ。でも、こうした華やかな場では少し、気後れしてしまって。
でも、涼介さんが王子様みたいに見えたから、
安心することができたんです」

ミリアと涼介は、手をつないで、
そっと、甲板の隅へと立った。

「いつまでもこんな時間が流れればいいですね」
「続きますよ、幸せな時間は、いつまでも」
涼介は、ミリアにそっと口づけた。

「おとぎ話の結末は、『末永く幸せに暮らしましたとさ』って、決まってるんです」
見つめあう2人は、また、いずれからともなくキスを交わした。