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リアクション
第8章 一緒に準備♪
「うん、程よい甘さに仕上がった!」
小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、クッキーを味見して頷いた。
西シャンバラのロイヤルガード宿舎で、美羽は高原 瀬蓮(たかはら・せれん)と共に、お揃いの可愛らしいエプロンを纏ってクリスマスパーティの準備をしていた。
「手作りって味だね」
瀬蓮がほわっと笑みを浮かべる。
瀬蓮やパートナーのアイリスの体調も考え、瀬蓮達の部屋――百合園の寮で行うことも考えたのだけれど。
百合園の寮には男性は入れないということと、アイリスが空京のクリスマスコンサートに招待されていて、空京に来る予定があったことから、皆を招いて、美羽に割り当てられた部屋で行おうということになった。
「それでね、美羽ちゃん」
「ん?」
「……あはははっ」
瀬蓮が恥ずかしそうに、美羽にボールを見せた。
中には、どろどろの生地が入っている。
「あれ? なんでこんなになってるの……?」
「いろんな味がしたら、美味しいかなって思って、シロップいろいろ入れたら、こんな風になっちゃったの……」
「せ、瀬蓮ちゃん……」
箱入り娘のお嬢様の瀬蓮は、常識に疎くて。
マニュアル通りなら、美羽に倣いながらある程度は出来るのだけれど、ちょっとアレンジしようとすると、こういうことになってしまう。
「生地の水分の量が変わると、ちゃんと形にならなくなっちゃうから、気を付けないと〜」
ふふふっと笑いながら、美羽はもう一度材料を用意していく。
「こういうのはアイリスの方が得意なんだけど……うーん」
瀬蓮はおぼつかない手つきで、お菓子作りの本を見ながら、ボールの中に入れた材料を再び混ぜていく。
「コハクはチョコ味の甘いお菓子が好きなんだよ。だから、クッキーもチョコチップを入れて、甘めにしたの。アイリスはどんな味が好きかな?」
「特に好き嫌いとかは聞かないかな? バレンタインとかも沢山チョコレート貰ってたけど、自分のために作ってくれたものなら、好き嫌いはないとか言ってた〜」
ぐりぐり混ぜながら、瀬蓮はこう続ける。
「だ、だからそんな味でも喜んで食べてくれると思うんだけど……だけど……やっぱり、美味しいもの、食べてもらいたいよね。果物とか入れたら美味しいかな」
と言いつつ、瀬蓮はフルーツに手を伸ばそうとする。
「だ、ダメダメ〜っ。瀬蓮ちゃん、フルーツはそのまま入れたらだめだよー、これはケーキの分ね。んと」
美羽は、ココアパウダーを適量皿に入れて、瀬蓮に渡す。
「ちょっと苦みがあるクッキー、大人っぽいアイリスには合うかも、ね?」
「そうだねっ。ココアクッキーにするね」
瀬蓮は美羽に教えてもらいながら、手作りクッキーやケーキ、プリンに、ゼリーと沢山のお菓子を作っていく。
「なんか、どきどきするね〜。アイリス達、喜んでくれるかな」
作ったお菓子をテーブルに並べながら、瀬蓮はそう言った。
「きっと喜んでくれるよ。でも、もっと楽しい気分になれるように、気合入れて飾り付けもしようね!」
「うん」
菓子、七面鳥、クリスマスケーキ、シャンパンをテーブルに並べて。
部屋の中には、小さなクリスマスツリー。
色紙で作った飾りや、お星さま、綿、リースにベルに、モールで沢山飾って。
その部屋だけ別世界のように、笑顔を誘う空間を2人で作り上げていく。
「そろそろ時間だね。瀬蓮ちゃんこれ」
「うん、入ってきたら、鳴らそうね」
美羽と瀬蓮は、クラッカーを持って、ドアの側に待機する。
もうすぐ2人の大切なパートナーが、ドアの向こうの世界から訪れる――。
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