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レターズ・オブ・バレンタイン

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レターズ・オブ・バレンタイン
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22)

クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)は、
キマクのリリーハウスで、
小ラズィーヤ・ヴァイシャリー(しょうらずぃーや・う゛ぁいしゃりー)と会おうと思っていた。
なぜなら、このリリーハウスのポスターで、
桜井 静香(さくらい・しずか)の写真を見たのがきっかけで静香を好きになったからだ。
「本人に会ってもいないで写真だけで一目惚れなんて、
よくよく考えたら失礼な話だよね……」
クリスティーは、そうつぶやく。

キマクで待ち合わせた2人だったが、
すでにリリーハウスは営業していなかった。

そこで、クリスティーは、小ラズィーヤと、
子どもを連れて入っても大丈夫そうな店を選んで入った。
ここならソフトドリンクもあるし、
酔っ払いに絡まれたりもしない。

「ひさしぶりだな。
こうして話ができるのもなかなか興味深い」
小ラズィーヤは、大人びた口調で言った。
「うん。「じゅせいらん計画」の後は、
なかなかタイミングが合わなかったからね。
こうしてお話できてうれしいよ」
クリスティーがうなずいた。
「最近どう?
小ラズィーヤは、静香校長やラズィーヤ様とうまくやっているの?」
「ああ。まあな。
母様はああいう方だし、特に私から何か言うこともあるまいが、
桜井静香の方は……」
眉間にしわを寄せる小ラズィーヤに、クリスティーが心配そうに訊ねる。
「まさか、もう、殺そうとしたりしてないよね」
小ラズィーヤは、飲み物を盛大に吹き出した。
「いつの話だッ!」
「ご、ごめん。動揺させちゃったみたいで」
小ラズィーヤは、クリスティーにハンカチを差し出され、口元をぬぐった。
「まあ、あのころは私もまだ子どもだったからな……。
物の道理がよくわかっていなかったのだ。許せ」
「そうか。まあ、ならよかったよ」
クリスティーは、小ラズィーヤが静香にもう殺意を抱いたりしていないのを確認して安堵した。

「ところで、だけど」
クリスティーは、もうひとつ、気になっていたことを切り出す。
「ボクは小ラズィーヤの遺伝上の母ということになってるけど……。
小ラズィーヤにとってボクはどういう存在なのかな」
小ラズィーヤは、クリスティーの、真面目な瞳を覗き込んだ。

「私の遺伝上の母になってくれたことには、
今でもとても感謝している。
それに、おまえは……なんだか、他の遺伝上の母とも違う、特別な感じがするな」
「特別な感じ?」
「ああ、うまく説明できないんだが」
小ラズィーヤは、――正確には、この小ラズィーヤは――クリスティーの、
静香のことが好きという感情を受け継いでいる。
そのため、本人はけして認めようとしないが、かなりのファザコンだ。
それが、小ラズィーヤの言う、特別な感じ、ということなのかもしれない。

(ドラマや映画でよくある、
遺伝上の親子とかってこんな感じなのかな)
ふと、クリスティーはそんなことを思う。

「今日は、ひさしぶりにゆっくり話ができて楽しかったぞ。
また、機会があれば話そう」
「うん、ありがとう。
あ、そうだ。この手紙、後で読んでね」
「ああ、ありがとう。
後で返事を書くよ」

こうして、クリスティーは小ラズィーヤをヴァイシャリーまで送り、
帰宅の途についたのだった。