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【2024VDWD】甘い幸福

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【2024VDWD】甘い幸福
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36.初めてのホワイトデー

湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)は、
先日、バレンタインチョコをくれた、
ベルネッサ・ローザフレック(べるねっさ・ろーざふれっく)を誘い、
お返しのホワイトデーデートにやってきていた。

空京の定番デートコースを回ったのち、
食事に入った店で。

「先日はありがとうございます。あの……ベル……ベルネッサ」
「ベルでいいって」
くすりと笑うベルネッサに。
「そ、そうでしたね……!」
凶司は緊張しつつ応える。

(あー、やっぱ、緊張すると
『ベル』って呼べなくなる……)
そのことを確認しながら、凶司は息を整える。
そして、真剣な表情になり、切り出す。

「僕もあと2年で蒼空学園を卒業になります。
あと2年で卒業で、
18……あ、えぇと。
日本だと20歳成人ですけど、
18歳くらいから大人扱いで、結婚も……って、何言ってるんだ僕は!」
「どうしたの、落ち着いて、ゆっくりでいいよ」
「すいません、取り乱しました……えぇと、つまり。あと2年で追いつきます。
追いついて見せます。ベルの隣まで」
ベルネッサは、凶司の瞳をじっと見返した。
「だから……待っていてくれますか?」
視線を逸らさないようにしながら、凶司は告げた。

ベルネッサは、微笑を浮かべ、頷く。

「ありがとう。凶司にそういうふうに思ってもらえて、うれしいよ」

「じゃあ……!」

「うん。まだ、凶司のことは弟みたいな存在に見えるのは事実。
でも、これまでもそうだったけど……。
これからどんどん成長していくのを期待してるんだ。
そしたら、一人の男として見てあげてもいいかもね?」

「ベルネッサ……!」

「だから、ベルでいいってば。……この調子じゃまだまだかな?」

「ええと、その……ぼ、僕、頑張ります!
一日も早く、ベルにふさわしい男になれるように!」

ベルネッサはにっこりと笑った。

「楽しみに待ってるからね」

「それと……これ、バレンタインのお返しです!」

凶司は、手作りのクッキーを差し出す。
今日のために用意したものであった。

「り、理論は完璧なはずなんです。
ただ、僕、普段、料理とかあんまりする方じゃないし……。
何度も練習したけど、味はまあ普通だと思うんですけど、
手作りの方が気持ちがこもるかなって。
ぼ、僕、バレンタインチョコってもらったの初めてで、あの……」

「うん……私も、すごくうれしい。ありがとう」
ベルネッサは、笑みを深くして、クッキーを受け取った。

「どれどれ、お店で開けたら怒られるかな……?
ホワイトデーだし平気よね?」

「あ……」

「うん、美味しい」
ベルネッサは、クッキーを頬張って笑みを浮かべる。

「ホワイトデーって日本の習慣でしょ?
だから、私も、すごく新鮮でうれしい。
どうもありがとう」

「は、はい……!」

凶司は、舞い上がって真っ赤になり、
その後の食事の味は、まったく覚えていない。