リアクション
――ハロウィン後、百合園女学院校長室――
悠希は戻ってきた卒業アルバムを静香と一緒に、本棚に戻した。
(ボクは、アユナさまも、舞士さまも守るという約束を、果たせませんでした……)
ファビオがアルバムを欲していたわけではないということに、気付けなかったから。
「アユナさんだ」
静香は帰宅していく生徒達の中に、アユナの姿を見つけた。
窓には近付かずに、そっと悠希と共に彼女を見守る。
アユナはハロウィンの夜『麗しきマリル』と出会ったらしい。
夜中の12時の鐘がなるまで、マリルはアユナ達と共に『盟約の丘』とファビオが呼んでいた丘で彼を待っていた。
鐘が鳴り終わった後、
「馬鹿な子……」
とマリルは空に向かって呟いて、飛び立ったという。
アルバムには興味を示さず、アユナには「またね」と言葉を残したらしい。
ヴァイシャリー家で嘆きのファビオらしき人物が襲われたことは、一般人に口外禁止となっている。
百合園女学院では静香と白百合団員にのみ、説明があった。
ただ、パーティーに出席し、彼に気付いた百合園生もその事件を知っているため――そのうち、広まってしまうかもしれない。
アユナは何も知らない。
友達と一緒に、少しだけ笑みを浮かべて。
時折遠くを――空を見上げて。
諦めたように目を伏せて、歩いていく。
彼女達が見えなくなるまで、悠希と静香は校長室の窓から見守っていた。
―狙われた乙女 完―
皆様、お疲れ様でした。
狙われた乙女〜ヴァイシャリ編〜にご参加いただき、ありがとうございました。
白百合団に所属を希望された方には、称号を発行しておりますのでご確認下さい。
物語が入り組んでいますので、解説を含めた感想を述べさせていただきたく思います。
●キマク工作
パラ実生の方々が内部からの働きかけを頑張って下さいました。
これにより、一般のパラ実生の心持に変化がありました。
●組織謝罪
全体的な役割としては、百合園襲来の際の相手の姿勢、目的、人数の増減に関わる分野でした。
こちらの結果は最悪の事態の2歩手前くらいと考えています。
組織が不良の暴走族クラスではなく、ヴァイシャリー外でも活動しているマフィアクラスである可能性については今までのガイドとリアクションで読み取れないことはないと思います。
また、前回組織メンバー(綾を含む)との交渉や情報引き出しが行なわれていない(成功していない)ことから、百合園側の皆の中で一番組織の規模や恐ろしさについて認識しているのは、綾である状態でした。今回のガイドで彼女が変なことを言っている、及び皆を騙そうとしていることも明白だったかと思います。
彼女が組織で監禁されておらず、空京では百合園とのトラブルを止めようとしていたこと、騙されていると分かっているのに離れられない状態にあったこと。
現時点では白黒はっきりせず、色々な可能性が考えられるということ。
以上、1つ1つについて、理解の上、行動をかけられた方もいたと思いますが、そのすべての状況(情報)を利用した上での打開に繋がるアクションはなかったかなーという印象です。
今回の作戦は、白百合団以外の方が主に……主にパラ実生の方が目立っていますが、手段としては前回と同じ、強引な突入による奪取でした。
前回駆引き全てパスした強引な方法により、組織側からの報復と進んでしまっていましたので、更に同じ手段に出たことで、報復は増すことになるというのは……多分予期しての、それでも綾は組織と敵対すべき、綾の身を確保しておくべき、との考えだったと解釈させていただきますが、それならば、綾自身への報復(綾の大切な人)のガードは最低でも入れておかないと、この結果は避けられないと思います。
●アルバム泥棒
こちらは頭脳的ではなく、感情感覚的な動きに合った分野だったかと思います。
主に、琳鳳明さんの双方への働きかけにより、ファビオが求めたアルバムを、盗むのではなくアユナに預けるという手段をとることになりました。盗んでいるシーンは演技として描写いたしました。
また、ファビオという人物の身柄を確保できた可能性が高かったのもこちらに関わった方々だと思います。
彼がパーティーに行くことは予期できたと思いますので、もしそちらにアユナが向かっていたらまた違う結果になっていたと思うのですが、アユナと友人になってくださった皆様は、ファビオが大切なのではなくて、友人のアユナが大切だったと思いますので、彼女が怪我をしない、罪にもならないようにと、彼女のことを一番に考えてくださった皆様の暖かさと、百合園生らしさを感じさせる展開になりました。
●運河工作、倉庫街ハロウィンパーティ
レン・オズワルドさん主催のパーティーが倉庫街で行なわれました。
百合園関係者ではないこと、大人であること、この事件に今まで関与していないこと。そういったご自身の立場での立ち回り、ヴァイシャリー領主家のラズィーヤとの接触、駆引き、パラ実生を上陸させない浮きを使った誘導方法、ノンアルコールといった細かい点まで、申し分なく圧巻でした。
ただ、このパーティーが大きな成果を上げているのは、パラ実の羽高魅世瑠さんの存在が非常に大きいです。また、パラ実生らしい動きをされた国頭武尊さん、正面以外の場所状況調査と報告を進んで行なっていたエルサーラ サイジャリーさん、そしてラズィーヤを絡めていたことによる百合園がパーティーを把握していたこと、それらの絡み合いによる結果でもあります。
綿密な話し合いで作り出したシーンではないはずです(よね?)。PC達が話を作っていく文章ゲームらしいシーンとなっていると思います。
●河川敷戦
どういったメンバーが、どんな目的でどの程度来るのかが判断できない場所でした。
最悪の状況から、最良の状況まで想定した作戦が欲しかったところですが、全体的な作戦はありませんでした。
四天王を狙った朱黎明さん。今回来襲した四天王はレベル的には到底敵わない相手ではありましたが、アクション次第ではその座を奪うことも可能だったかと思います。ただ、取り巻きがあまりにも多すぎて、取り巻き対策でほぼアクションを費やさなければならなかったところが残念です。この場所で四天王交替に至るという展開も、PCの絡み合いや連携によりあり得ない展開ではなかったと思います。
百合園に潜入していたカリン・シェフィールドさんの、百合園を守ろうとした戦いはとても素敵でした。表には出ない(知られてはいけない)評価、感謝されることのない戦いですよね……。
●正門前
こちらも交渉分野、駆引きを試みるPCがいなく……といいますか、ここまでの展開の結果により既に交渉が通じる状態ではありませんでした。
作戦としては、崩城亜璃珠さんのバリケード案、撤退案は共に重要だったと思います。
ロザリンド・セリナさんの仲間への鼓舞、姿勢と台詞、白百合団の乙女として、とても素晴しかったと思います。1回の調査と、今回の防衛での功績及び素行の評価により百合園女学院の生徒会から白百合団の班長に推薦されました。以後、川岸担当の百合園キャンペーンと、マスターコメントで班長として行動できると説明されているシナリオにご参加の際には、下級生3人ほど従えて行動をすることが可能です。但し交戦の指示、決定権はありません。
神楽坂有栖さん、ミルフィ・ガレットさん、セント ジョルジュさんは、命令違反(未遂)により見習いに降格となります。当分白百合団の戦闘行為を含む作戦には参加できません。ただ、今回の行動がPLとしてしてはいけないこと(アクション)だったかというと、そんなことはありません。PCの姿勢として、そういった行動を起こしてもなんら構わないものと思います。今回の件をPC成長に繋げても、方針が合わないようなら団を離れてみてもいいかと思います。
副団長の案は、前回の作戦が引き起こした状況に対して、自分達は身を持ってその責任の重さを知らなければならないという自戒の下の、団員への指導でもありました。自分達の責任と感じて、彼女についてきてくださった方々に感謝いたします。素晴しい姿勢だと思いました。
氷川陽子さんの、綾をこの場に連れてこようというお考えや厳しさは副団長と似ているとも感じました。
崩城亜璃珠さんが副団長に、〜部下がついてこれなくなる、等と仰っていますが、もしこの作戦の結末が「敗北してみせる」まで、進んでいたのなら、事件後に、ついていけないと多くの団員が退団したと思われます。撤退案、ありがとうございます。
そしてまさかの一騎打ち……。
この展開は全く予想できませんでした。
相手が手負いであったこと、立役者の羽高魅世瑠さんの援護があって、なんとか百合園側が勝利となっております。
神楽崎優子の四天王就任については、本人は嫌だと思いますし、パラ実生の御し方なんて彼女には分からないんじゃないかと……。パラ実送り候補であることをカミングアウトされた崩城亜璃珠さん等の立ち回りに期待です。
この四天王の座については、世界情勢(グランドシナリオ)の状況を見つつ、百合園の皆さん(PC)とどうするのか考えていければと思います。
とりあえずは副団長にC級四天王でいてもらえば、当分暴走族、番長程度のパラ実生は百合園に手出しできなそうです。
●校舎内待機
正門前で食い止められなかった場合、恐ろしいことになっていたと思われますが、泥棒事件も演技となり、特に事件は起きませんでした。
雷霆リナリエッタさんの、パラミタと地球人の立場の違いの指摘。直ぐに大きな展開に発展する台詞ではありませんが、ポイントとなる言葉をPCがこうして発して下さることを嬉しく感じました。
●ヴァイシャリー家ハロウィンパーティー
まずは、神倶鎚エレンさんの名家との立ち回り、お見事でした。
嘆きのファビオに関しては、2回の段階で情報をあまりつかめておらず、展開も遅れていたため(2回で名家となんらかの組織の繋がりや、ラリヴルトン当主の不正暴きなどの行動があれば変わっていたかも…)、順当なラストだと思います。
レイル・ヴァイシャリーについては変装と護衛の方々がしっかりしていたので、誘拐されたり傷つけられることもありませんでした。
●ミクル・フレイバディ、ミルミ・ルリマーレン
この2人は、狙われた乙女〜別荘編〜に登場していたNPCです。
別荘編でミクルについて何か判明していれば、また違う展開になっていたと思いますが、別荘編はコメディですのでコメディとして楽しい終わり方ができたことに、それでいいんだと私は満足しています。
●百合園女学院後編は?
こちら「狙われた乙女」は、キャンペーンの前編であり、これから始まる物語のオープニング的なシナリオでもありました。
後編はヴァイシャリーにあったとされるシャンバラの離宮絡みのシナリオになります。
後編でまた皆様にお会いできたらい幸いです!
ご参加、本当にありがとうございました。
尚、川岸の次のシナリオガイドは11月13日公開予定(ほのぼの系。恐らくキャンペーン後日談)です。