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リアクション
黒ローブの男が出現させたキメラは、全部で十五体。
これほどの数を一度に出現させた理由、そして手段を知る男は既に川の向こうに姿をくらませている。事件の真相を解明するには、男の行方を掴まなければならない。
「あーもー! 急がなきゃなのに邪魔するー! リンネちゃんそろそろ本気出しちゃうよ!」
男のところへ行かせないかのように立ちはだかるキメラをうっとおしげに見つめて、リンネが両手に蒼く燃える炎と黒く燃える炎を浮かび上がらせる。得意とする炎熱魔法、『ファイア・イクスプロージョン』をリンネが見舞わんとして、そこに窘めるようなセリシアの声が通り抜ける。
「リンネさん、キメラを倒すことが本当の目的ではありません。ここで派手に戦っては、セイランさんとケイオースさんを救うという真の目的を果たせなくなります」
「そうなりますわね。私からも提言致します、リンネさんたちは先に行ってはどうでしょうか?」
次いで声を発した牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)、パートナーのシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)、ランゴバルト・レーム(らんごばると・れーむ)にリアド・ボーモン(りあど・ぼーもん)、そして彼女に続く者たちが、『ここは任せて先に行け』と言わんばかりにそれぞれ武器を構え、キメラと戦う意思を見せる。
「……そ、そうだよね。ゴメン、リンネちゃん間違えちゃうところだったよ! じゃあ、行くね! みんなも、これで終わりじゃないからね! 向こうで待ってるからね!」
一行に呼びかけて、リンネ一行が戦線を離脱する。
(希望を紡いで下さいませ。……私は多くを望みません。ただ、我々がこの戦場の主役である事願うだけです)
夜空に小さくなっていくリンネ一行から、唸り声をあげるキメラに視線を落として、アルコリアが優雅すら感じさせる手つきで髪を梳き、おもむろに剣と盾を掴む。
「さて、キメラさん。恐ろしいモノって何を思い浮かべます?」
呟いたアルコリアの瞳が妖しく光り、発せられる邪気がキメラの身体を竦ませる。それを合図に、彼女に率いられし者たちが一歩を踏み出し、それぞれの役割に基づいた己の為すべきことを始める。
「行けッ! 今すべきことは、たった一つだ!」
白砂 司(しらすな・つかさ)の振り下ろしたハルバードの刃が、キメラの直ぐ傍の地面を抉る。飛び退いたキメラがまた襲いかかる前に、リンネ一行に続いて男の行方を掴むべく先行しようとする者たちに司が声を飛ばす。
(人だろうと獣だろうと、あるいはそれ以外の何が阻もうとも、通らなければならない者がいるのなら……全力で通すのみだ)
ハルバードを構え直した司のところへ、前衛を突破して別のキメラが飛び込み、殺気に溢れた視線を向ける。
(獣の合いの子はお互い様かもしれませんけど、残念ながら私には守るものが一杯あるんですよっ!)
司の斜め後ろに立ったサクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)が、自らの背後に一瞬視線を向ける。そこには魔法による援護射撃や回復を行う者たち、戦線を維持するために不可欠でありながら脆い存在が、己の目的を全うするための戦いを続けていた。
飛び荒ぶ火弾や地面を穿つ雷撃、それをものともせずキメラが突き進む。自分たちが抜かれれば後衛の者たちに明日はない。皆が明日を見られるためには、今対峙しているキメラを最悪、殺さなくてはならない。
(無益な殺生はしたくない。だが……信じる大義のためになら、罪など幾らでも被ろう)
(力持ちで巨大で火噴いて毒の尻尾があったって、だからと言って諦めたりなんかするもんですか。……知ったこっちゃありませんよ!)
それでも、司とサクラコの固い意志は、行動に的確に反映される。キメラの吐いた炎の正面に立って受け止める司、祈りによる耐性を得ていたことで衝撃は緩和される。そして晴れた視界に、飛び込んだキメラの鋭い爪が煌く。司が何をも通さぬ強い意志に裏打ちされた防御姿勢でそれを受け止め、サクラコがその隙をついて四肢を斬り付け、痛みを覚えたキメラが生物の本能からか一旦は飛び退くものの、未だ殺意は衰えない。
「大丈夫です、時間は私がつくります!」
上手くキメラの壁を突破出来ず立ち往生する者、魔法の詠唱を行っている間の者、行動までに時間を必要としその間無防備を晒しかねない者たちを守るために、ジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)が全身を覆わんばかりに大きな盾を構えて鉄壁の防御を張る。次々と襲い来るキメラの爪や牙の攻撃は全てその盾に跳ね返され、逆にジーナが見舞った氷術に足元をすくわれ、動きを鈍らせる。
(今のこの流れからして……殲滅より牽制に重きを置くべきであるな)
ジーナが防御を張る位置から後方、ガイアス・ミスファーン(がいあす・みすふぁーん)が現場の状況を的確に把握し、キメラを消滅させるよりも行動不能にさせる流れが主と見るや、練り上げた炎を上空に放ち、雨のように降り注がせることで多少の抵抗力減退と行動力阻害狙いに切り替える。
(このキメラ達、操られているだけかもしれないなんて……)
盾の隙間から覗く、殺気立った瞳を目にして、ジーナは装備しているはずの武器を手に取ることができない。攻撃、防御、回復、一通りのことはこなせるようになり、ともすれば本人だけの力で障害を排することができるかもしれないところまで来ながらも、それを望まず戦いに駆り出されているかもしれない相手に振るうことには、抵抗があった。
(……っ、今は、守りに専念、でいいのよね……?)
動揺を孕みながらも、ジーナは前線の維持のため、そして後衛への攻撃を防ぐため、盾役に徹する。その行動は他の者たちに行動する機会をもたらしており、十分賞賛されるものである。それに、攻撃ならば彼女に負けず劣らず、むしろ強力無比な一撃が用意されていた。
(結果的に『こういう状況』になるにしても、多少は相手から情報を聞き出さないと。リンネ、後で追いついた時にまとめて説教だからね。カヤノとレライアにこの姿を見せるためにも、少しでも早く、そして多く、キメラを戦闘不能に追い込む!)
一足先にローブ男を追ったリンネ一行の態度にダメ出しをしながら、十六夜 泡(いざよい・うたかた)が魔力で構築した氷の鎧を纏い、ちょうど『アイシクルリング』の影響を受けたカヤノのように、複数枚の氷の羽を伸ばす。
「リンネ、ちょっとだけ真似させてもらうよ!! 天界に舞う生命(いのち)の結晶よ……魔界に根付く永久(とわ)なる氷壁よ……」
リィム フェスタス(りぃむ・ふぇすたす)の行使したギャザリングヘクスによる魔力の高まりを泡が両の拳に集中させれば、そこには純白の輝きを持つ氷と蒼白の輝きを持つ氷が構築される。それを確認して、泡が他の仲間たちの攻勢により集められる結果となったキメラへ爆速の踏み込みで飛び込む。拳を打ち付ければそれらは一つになり、そして右手に纏った氷の結晶を高々と掲げる――。
(し、しまった! 名前考えてなった……え、え〜とぉ……そうだ!!)
僅かの間に泡が考え付いた、魔法の名前は――。
「エターナル・フォース・ブリザード!!」
瞬間、掲げた右手の氷術の結晶が一際大きくなり、僅かの後に破裂する。泡を中心として無数の氷塊の嵐が巻き起こり、キメラを襲う。かつてこの大陸に存在したと言い伝えられる同名の魔法は、相手の周囲の大気ごと氷結させ瞬時に死に至らしめる慈悲の欠片もない威力を有していたとされるが、今直撃を受けたキメラは身体の一部分を凍らされ、行動不能に陥らされるものの消滅にまでは至っていない。泡自身の魔力量の問題などもあるが、一番の理由は泡がキメラの消滅を望んでいなかったことが、今回の結果を生み出したと言えよう。
(あ〜……流石に馴れないことやったから疲れたわ。ここは一旦後方に下がって回復を待ちましょうか。リンネ達がローブ男見つけたらこっちにも連絡が入るでしょうから、それから追いつけばいいわよね)
同じく魔力を行使してへろへろになっている様子のリィムを胸ポケットに収め、泡が一旦戦線を離脱する。その戦場では、当初の三分の一にまで数を減らしたキメラと冒険者との攻防が、未だ続いていた。
(こ、これがシャンバラなのね……危険過ぎる社会勉強だとは思っていたけど、現実その通りじゃない)
想像を絶したキメラの様相と立ち振る舞い、そして先輩魔法使いの強力無比な魔法の一撃を目の当たりにして、伏見 明子(ふしみ・めいこ)はすっかり萎縮していた。
(……とはいえ、こうして震えているだけってのも、庶民の心意気に反するわね。出来ることを出来るだけやりましょう)
気を入れ直して、仲間の騎士が前線を構築している間に、暴れるキメラを対象に明子が詠唱を開始する。完成した魔法、酸の霧を発生させる魔法をキメラに向けて放てば、骨をも溶かす酸の霧を受けたキメラが暴れながら、霧からの離脱を図る。
「よし、私はこの位置から援護射撃だ。必中の一撃、受けるがいい!」
明子から数歩前に出たフラムベルク・伏見(ふらむべるく・ふしみ)が、その暴れるキメラへ向けて弾丸をばら撒く。至る箇所に弾丸を受け、確実に抵抗力を減じられていく。
「次、行くぞ……何!? た、弾がないだと!! くっ、こんな時に……だがまだ通常弾は残っている、これで……」
散弾のストックを切らしたフラムベルクが、単発の弾に切り替えようとしたところで、明子の声が飛ぶ。
「ふーらーむー! アンタ寝起きでポンコツなんだから自重しなさい!」
「What’s……!? た、確かに封印解放直後だし旧式ではあるが! 余りにあまりではないかマスター!?」
「アンタこれくらい言わないと止まんないでしょー。それに、出過ぎて突破でもされたらどうするのよ。頼りになるのはアンタだけなのよ」
「おや明子、それは僕が頼りないとでもいうのかい? 心外だねえ、せっかくこんなに楽しそうな仕事に巡り会えたんだ、僕だってやることはやるさ」
不敵な笑みを浮かべるサーシャ・ブランカ(さーしゃ・ぶらんか)に、明子が呆れつつ答える。
「……じゃあその口元から垂れそうな唾を拭きなさい。あと、これどうにかならないの? 便利だけと落ち着かないわよ」
明子が、自分の頭から生える犬耳をぴょこんと動かして呟く。
「さあね、私にはどうにもなるものではないね。……おっと、やって来たよ、食いでがありそうな獲物が」
楽しそうに呟いたサーシャに危機を感じた明子が振り向けば、前衛と中衛を突破して一体の手負いのキメラが猛然と駆けてくる。フラムベルクの位置からでは、二人を援護するのに厳しい。
(いやー! こんなところであの猛獣のエサになるなんて、いやー!)
息を大きく吸い、丸焼きにせんと炎弾を吐きかけたキメラに、明子がもうダメと頭を抱えたその時、蹄の音を響かせて騎乗姿勢を取ったシャロット・マリス(しゃろっと・まりす)がすれ違い様一撃を見舞い、攻撃を事前に阻止する。
(やっぱり、一撃の威力が弱い……馬の体重まで乗せられれば、完全に行動を止められたのに)
槍の扱い、そして馬の扱いに未だ習熟していない様子のシャロットが、自らの力不足を嘆く、しかしながら、攻撃を未然に防いで仲間の損傷を回避し、なおかつ足止めに成功したことはそれだけで十分価値のあるものであった。
「その隙に一撃、行動不能にしてあげる! 後で目が覚めた時に仲良くなれればいいな♪」
光学迷彩で姿を消し、塔の代わりに樹木の上に陣取ったミーレス・カッツェン(みーれす・かっつぇん)の狙い澄ました一発がキメラの四肢を側面から撃ち抜き、地面に縫い付けるようにキメラを転がす。
「あなた方、ここは一旦お引きなさいな。後の相手はわたくし達にお任せいただけるかしら」
明子のところへ、箒にまたがったランツェレット・ハンマーシュミット(らんつぇれっと・はんまーしゅみっと)がやって来て告げる。シャロットとミーレスがキメラの進軍を防いでいる間に、戦列を整えなさい、そういうことであった。
「! ねえ明子、あれ見て!」
ランツェレットの指示に従って後方へ引いた明子を、それまで戦線の状況をを眺めていた九條 静佳(くじょう・しずか)が引き止め、一点を指差す。
「あれって、魔法陣!? 誰かがここに転送されてくるの?」
自分たちもやって来た転送の魔法陣が浮かび上がるのを、明子は次に何が起きるのかと不安の表情で見守る。
「ひぃ〜ん」
キメラと切り結んでいたララ サーズデイ(らら・さーずでい)が聞こえてきた悲鳴に振り向けば、ユリ・アンジートレイニー(ゆり・あんじーとれいにー)に向けてキメラが大きく息を吸い、炎弾を見舞う寸前であった。
「くっ! ユリ!」
剣を交えていたキメラを退け、ララが自らに内蔵された加速ブースターを起動させる。爆発的な加速力を得たララの身体は、炎弾がユリを丸焼きにする前に間一髪、ユリを抱えて炎弾の射程から逃れる。
「ユリ、大丈夫かい?」
「だ、大丈夫なのです〜」
目に浮かんだ涙を拭ってやり、ララがユリを立たせる。そこに別のキメラが好機とばかりに爪を光らせて襲いかかってくる。
「気高く尊く咲いて散る魂。光臨せよ、天上に咲く黄金の薔薇!」
リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)の詠唱が響き、キメラの頭上から雷が降り注ぐ。雷に打たれたキメラが地に伏せるのを見届けて、ララとユリがリリのところへ無事帰還する。
「リリ、助かった」
「いいのだよ。……しかし、キメラの素早さは厄介なのだよ。何か効果的な魔法は――」
リリが呟いた瞬間、地面に転送の魔法陣が出現し、そこから数名の精霊を連れた生徒が姿を現す。
「っと、到着だぜ! 俺達が来たからにはもう安心だ、キメラは任せときな!」
精霊を引き連れてきた鈴木 周が声を張り上げる後ろで、共にやって来た精霊たちが事態の把握に務めている。
「……いないのか」
「ん、どうした、リリ?」
少々残念そうに呟いたリリに、ララが尋ねる。
「闇黒の精霊、特に少女型の精霊がいれば、闇黒系魔法が試せたかもしれないのだよ」
「ほう、それはどのような効果を発揮するのだ?」
ララの問いに、リリが仮説を展開する。要は、スピードで翻弄する相手に対し、周囲のものを引き寄せる漆黒の球体を投下して引き込み、球体に触れた瞬間爆散させる、というものであった。
「しかし、協力者がいない、と」
「残念なのだよ」
呟くリリの横で、ユリが携帯を取り出し、メールを打ち始める。
「ワタシ、ヴィオラにメールしてみるです。ヴィオラならきっと、キメラの洗脳を解く何かを知っているはずです」
「ユリ、いくらなんでも間に合いはしないのだ」
「でもでも……」
「わかった、頼むのだ。できることは何でもやってみるのだよ」
リリに頷いて、ユリが携帯メールを送信する。
果たして有用な情報は得られるのだろうか――。
シーマ・スプレイグの発動させたメモリープロジェクターが、先程シーマが記憶した前衛で戦う生徒の姿を前方に映し出す。その映像は鮮明であり、キメラはその映像を本物と思い込んで突撃し、当然のように攻撃を空振りする。
「ふふ……命までは取りませんよ、安心してください」
その声が聞こえた直後、地面が巻き上げられ草葉でキメラの視界が塞がれる。視界を確保するべく四方八方に爪を振るうキメラ、土埃が晴れる頃には消耗したのか、低く唸るキメラはそれ以上突撃をしてこない。
「これで終いです」
キメラの後方に姿を現したアルコリアが、手にした剣をキメラの太股に突き刺す。瞬時に二箇所を穿たれ、行動の自由を奪われたキメラがどさ、と地面に倒れ込む。
剣を仕舞い、再び優雅な手つきで髪を梳くう。辺りにようやく静けさが訪れつつあった。
「さて、ここからは我輩の出番じゃな。助けられる命、助けようとすることに何を躊躇うというのか」
ランゴバルト・レームが倒れたキメラに近寄り、癒しの力を行使していく。その行動を見咎めた一人の冒険者が、耳に届く安らかな歌い声を聞いて、地面に膝をつける。
「やめときな、戦いはもう終わったんだ。戦後治療も立派な俺達の役目だぜ」
歌い終えたリアド・ボーモンが言い残して、治療を行うランゴバルトを手伝いに行く。
「よくがんばったわね、シャロット、ミーレス」
無事戦いを生き残った一行が安堵の溜息をつく中、ランツェレット・ハンマーシュミットがパートナーのシャロット・マリスとミーレス・カッツェンを労ってぎゅむ、と自らの胸に二人を抱き寄せる。
「あの、えっと、困ります、その、胸が」
「きゃははは、あったか〜い!」
シャロットがランツェレットの胸の感触に赤面し、ミーレスが頬を寄せて甘えた様子を見せる。
この場での戦いは、冒険者の勝利に終わった。
十五体のキメラの内、消滅させられたのは五体。つまり残り十体は、この場に行動不能の状態で放置されることになる……と誰もが思ったその時、さらにこの場に現れる人影と獣の姿があった。
「戦闘は終了したようだな。ミレイユ、ルイ、今ならまだ、森に逃げ込まれる前にキメラを捕獲出来るはずだ。反撃を受けないように気を付けるんだ」
「うん、分かった。やってみるよ」
「イレブンさんもお気をつけて」
研究所からカプセルの予備を調達することに成功したイレブン・オーヴィル、ミレイユ・グリシャム、ルイ・フリードの三名が、パートナーと共にキメラを自ら作成したカプセルに捕獲していく。捕獲作業はものの数分で終わり、周囲は戦闘の勝利を喜ぶ歓声と、傷の手当を受ける者の少し痛そうな悲鳴を含んで推移していく。
「さぁて、こっからどうすっかだな。俺達は美人のおねーさん救出に向かうとして、戦って疲れたヤツは――」
これからの方針を話し合おうと集まった一行は、次の瞬間、夜空を流星のように飛び荒ぶ一筋の漆黒を目の当たりにする。遥か遠くを飛んでいるはずなのに、それが通り過ぎた瞬間物凄い寒気が一行を襲う。
「なんだ、ありゃあ――」
呆然と見上げる一行を尻目に、漆黒の筋はイルミンスールへ向けて飛び去っていった――。
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