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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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リアクション

「やっぱり夜魅ちゃんはバレンタインって何か知らなかったんですねー」
 アリア・ブランシュ(ありあ・ぶらんしゅ)はくすくすと笑いながら、夜魅と一緒にチョコを食べた。
 バレンタインの街に出たアリアは、バレンタイン限定の珍しいチョコや美味しいチョコに目が移り、気づくとたくさん買いすぎてしまっていた。
 あげる当てもないし、どうしよう……と思っていたところで、夜魅のことを思い出し、彼女に声をかけることにしたのだ。
「バレンタインって言うのはね、地球のキリスト教って宗教の聖人に由来する日なんですよ」
 アリアは夜魅にバレンタインの由来を話してあげ、さらに今のバレンタインの話をした。
「パラミタだと日本式のバレンタインがメインだから、女の子が男の子にチョコを贈って告白する日みたいに言われてるようですけど。割といろんな国の人がいるから、男性が女性にお花を贈ることもあるんですよ」
「おくるのは男の子が女の子に、女の子が男の子にだけなの?」
「ううん。友チョコって言って、お友達同士で交換するのもあるし、大切なお友達に贈るのもあるし、こうやって友達とチョコを持ち寄って楽しむとかもあるし……」
「いろいろあって、たのしそうだね」
 そう言うと夜魅はニコッと笑った。
「いまのとってもたのしい。チョコってはじめて食べたけど、あまくておいしい」
 夜魅の言葉にアリアも喜びの笑顔を見せた。
 帰り際に、アリアは夜魅に小さいチョコの入った箱を渡した。
「夜魅ちゃんは私にとって大切なお友達です。これからもずっと仲良しでいられますように……」
 願いを込めて渡すとともに、アリアは種明かしをした。
「実は本当はこれを渡すつもりでチョコを買いにいったんです。でも、あれこれ目移りしちゃって……。あんなに目移りするなんて自分でも思ってませんでした」
 それだけたくさんアリアが自分のことを考えてくれて、自分のためにあれこれ選んでくれたんだとわかり、夜魅は感謝の笑顔を向けたのだった。


「チョコを買いに?」
 神楽 授受(かぐら・じゅじゅ)の提案に、夜魅はきょとんとした。
「楽しいことをたくさん教えるって約束したでしょ? 今日は大切な人にチョコをあげる日よ!」
 授受に背中を押され、夜魅は街に繰り出した。
 いろんなチョコのお店を見て回りつつ、授受は夜魅を猫カフェへ誘った。
 ミス・スウェンソンのドーナツ屋……通称ミスドに縁のあるミャオル族のようなにゃんこ族ではなく、本物の猫がいるカフェだ。
「夜魅ちゃんはどんな飲み物がいい? 外が寒かったから、あったかいのがいいよね」
 授受がメニューを見せても、どれを選んでいいのか分からないらしく、夜魅は首を傾げた。
 なので、授受は夜魅のために、甘いココアを頼んであげた。
「ほら、撫で撫でしてあげて〜。
 授受は飲み物を飲みつつ、近づいてくる猫を愛でた。
 夜魅はそっと手を伸ばし、猫が逃げないのを確認して、優しく撫でた。
「そうそう。そういう感じ」
 上手に撫でる夜魅を授受は褒め、しばらくの間、一緒に猫との戯れを楽しんだのだった。

「これからもよろしくね、夜魅」
 授受はお出かけの帰りに、夜魅にチョコを渡した。
 そして、ちょうどそこに水城真菜のチョコ作りに参加していたエマ・ルビィ(えま・るびぃ)が帰ってきた。
「あ、ちょうどいいところに」
 エマはジュジュと、それから夜魅にもチョコクッキーをあげた。
「いつもありがとう。友チョコ、ですわ」
「ありがとう。授受ュのためにつくりにいっただろうに……いいの?」
「はい、たくさんありますから、大丈夫ですわ」
「授受のためじゃないしねー」
 くすくすっと授受が笑うと、エマは顔を赤くした。
「ジュ、ジュジュのためでもありますわよ。もちろん、旦那さんにもあげますけれど……」
 エマはとびきりの愛を込めて、旦那さんのためにチョコクッキーを作ったのだ。
(ファイズ、喜んでくれるといいな…)
 と、想いが少しでも伝わりますようにと祈りつつ。
 授受はもらったチョコクッキーを口に入れ、「今日はチョコの食べすぎだよね」と笑いながら、夜魅を誘った。
「これからエマと一緒にヒナと陸斗と、白花にも渡しに行くけど、夜魅はどうする〜?」
 授受は春川雛子井上陸斗、そして、夜魅のお姉ちゃんである白夜に渡しに行こうとしていたのだ。
 最後に白夜の名前が出て、夜魅は一瞬微妙そうな顔をしたが、エマと授受に従い、ついていった。


 アリアとチョコを食べたり、授受と出かけたりする夜魅を見て、コトノハ・リナファ(ことのは・りなふぁ)はホッとした。
「変な虫が夜魅につく心配はなかったようで良かったですわ」
 夜魅のパートナー……というより実質的には保護者であるコトノハは、夜魅に今まで好意を持っていた人たち以外が付いてきたりしないか、心配したのだ。
「夜魅に好意を持っていたのは確か瀬島壮太さんと緋山政敏さんだったはず……。彼らならともかく、変な虫が夜魅に付かないように気を付けないと!」
 そう思ってコトノハは夜魅を監視していた。
 ちなみに言うと、壮太はバレンタインデーの日は百合園の遠鳴真希と甘いバレンタインを過ごしていたので、来ることはなかった。
 コトノハは夜魅をルシオンと自分の子として可愛がっているので、親として夜魅を大事にしたい、見守らなくちゃいけないと思っていたのだ。
 ルオシン・アルカナロード(るおしん・あるかなろーど)はホッとするコトノハを見て、安心すると共に……あることが気になっていた。
「コトノハ曰く、バレンタインデーは女性が好きな男性にチョコを渡して告白するものだとか……。我とコトノハは結婚を控えている……。我もチョコを貰えるのだろうか?」
 しかし、コトノハにそんな気配はない。
「……」
 しばらく考えた後、ルシオンは悩まずに直接聞いてみることにした。
「コトノハ」
 ルシオンが声をかけると、コトノハは振り向き、虹色の瞳をルシオンに向けた。
「どうしましたか?」
「いや、チョコレートのことだが……」
 そこまで言って、察しの良いコトノハは慌てた。
「はわわ、ルオシンさん、ごめんなさいっ!! チョコの代わりに……私を食べてくださいっ!!」
 大きなリボンを取り出し、コトノハは慌てて自分に巻いた。
 コトノハだって、ルシオンを大事に思っていなかったわけではない。
 できるだけ早くルシオンと籍を入れたいと思っていた。
 その時ももうすぐ、ルペルカリア祭でやってくる。
 薔薇の花嫁になる日がやってくるのだ。
「これは……チョコよりもっと良いものを頂けたな」
 ルシオンは微笑み、コトノハをぎゅっと抱いた。
 そして、頬にキスをし……2人は夜魅が帰るまでの間、甘い時間を楽しんだ。