百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション公開中!

嘆きの邂逅(最終回/全6回)
嘆きの邂逅(最終回/全6回) 嘆きの邂逅(最終回/全6回)

リアクション

 爆発音にレキが振り向く。
「大丈夫だ、行こう」
 隆光が動揺している前方の敵の腕を撃ち、武器を落とさせた。
「うん」
 共に突入した仲間や、ファビオの救出に向った仲間達を思いながらも、ぎゅっと拳を握り締めて、レキは隆光と共に車庫の方へと急ぐ。
「ボスを捕らえなければの」
 ミアもその後に続く。
 階下から現れたボスらしき人物が屈強の男達に護衛されながら、正面からも見えた車庫の方に向っていく姿を目にしていた。
「車庫の方はまだ撃たないで。回り込んでくれる人もいたらうれしい」
 小声で外にいる白百合団員に電話をし、外から援護射撃を行ってくれているメンバーに伝えておく。

「突入組は手前側、潜入班は外に出たとさ」
 連絡を受けたナガンは、クラウンに場所を指定し、合図を出す。
「壊すじゃん!」
 クラウンは六連ミサイルポッドを、タンクのような場所に撃ち込んだ。爆発音が響き、炎が上がる。
 更に、煙突の方にもミサイルを撃ち込んで破壊する。
「避難だ! 血路を開け」
「資料を持て!」
 そんな声が響き、武器を持った男達が次々に飛び出してくる。
 ナガンは殺気看破、ディティクトエビルで敵の動きを探る。
「逃げ道はないんだなァ!」
 そして容赦なく、男達に機関銃の攻撃を浴びせる。

「お前が頭領だな!」
 連絡を受け、外へ飛び出した岩造が車庫へと駆けつけた。
「く……っ」
 屈強の男3名に守られているのは……小太りの男だった。モンタージュ写真の男に間違いない。
「岩造様は組織の頭を! 護衛は私にお任せを!」
 ファルコンナイトが加速ブースターで迫る。
 男が銃を撃ち、ファルコンナイトの体を傷つけていく。それでもファルコンナイトは退かずに、剣で男を薙ぎ払った。
「やっと、見つけたぜ。逃げ道はない、観念しろ」
 通路から駆けつけた隆光が、敵の足を狙っていく。防弾服を着ているようで、敵は一発では倒れはしなかった。
「これならどうじゃ」
 ミアが氷術を放つ。敵の足が凍りつき、まともに動けなくなる。
「勝ち目はないよ!」
 レキと隆光がシャープシューターで護衛の男の腕を狙い、武器を落とさせる。
「今です!」
 ファルコンナイトが、武器を失った護衛をチェインスマイトで斬り伏せた。
「くそっ」
「させはしない!」
 懐から爆薬のようなものを取り出した頭領の足を隆光が撃ちぬいた。
「お前をこの手で逮捕する!」
 壁に手をついた頭領の下に岩造が走り込み、ブライトグラディウスを突き刺した。
「ぐふ……っ」
「降参したら殺したりはしないよ!」
 レキが銃を向けながら言う。
 頭領は脇腹を貫かれたまま、手を上げて降参をする。
 岩造は即、縄で拘束をしていく。
「教導団に連行する!」
「ここはヴァイシャリーだから、ヴァイシャリー軍に引き渡してね。協力ありがとう」
 レキはそう言い、拘束を手伝っていく。

「こっちですよ」
 氷術で逃げる敵の移動を阻みながら、ベファーナが傷だらけのリナリエッタに呼びかける。
「爆発には巻き込まれないで済んだわぁ」
 ベファーナと合流し、リナリエッタは大きく息をつく。
「桜谷鈴子団長が心配されてましたよ。無事戻ったら話があるそうです」
 ベファーナの言葉にリナリエッタは微笑する。
 陽動としての役目は果たせたと思うけれど、単独での無茶な行動とまた鈴子に注意されてしまいそうだ。

「しっかりして、悠希」
 悠希が目を開けると、そこには懸命に自分にヒールをかける莉緒と謙信、それから静香に似た魔道書の姿があった。
 魔道書は自分ではなく、静香本人に来てもらいたいと思っていただけれど……静香が来ていたら、最悪命を落としていたかもしれない。
 静香がそれに応じたのなら百合園生の指揮をとるという彼本人が今果たさなければならない責務までも放棄させてしまっていただろう。悠希がヴァイシャリーや百合園の友人達の為に、今なさなければならないことよりも、静香の言葉を優先してしまったように。
「やはり……どこか間違っていたでしょうか……」
 治療を受けながら、悠希は自分が静香の側でしてきたことを振り返る。
 悠希には、直ぐには答えが出せなかった。

「頭領、捕縛されたってよォ。どうする? 死んどく?」
 ナガンは攻撃してくる者には容赦なく弾丸を撃ち込み、武器を捨てて投降する者は白百合団に任せていく。
 終始派手に殺傷の方向で、ナガンは敵の注意をこちらに引き付け、戦力を確実に殺いだ。
 こちらが回復魔法で傷を回復できるように、敵側も魔法は使えるのだ。
 篭城戦とテレポートによる避難、人質を前面に出しての交渉や人質の殺害等と敵が選ぶ時間を与えない、激しい攻撃が必要だった。
 ナガンの真意は兎も角。彼がいなければ、戦闘は長引いていただろう。
 ヴァイシャリー軍人による突入も始まり、工場は鎮圧される。
 潜入班から連絡を受けている、地下の調査も行われるはずだ。
 ボスが軍に捕まり護送される様子を目にした後、ナガンはすうっと空を見上げた後――ガッツポーズをした。
 空は晴れ渡っていた。