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【裂空の弾丸】Recollection of past

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【裂空の弾丸】Recollection of past
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第4章 変形! 飛空艇戦艦モード!

「ブリッジ! ベルネッサへのコントロール機能移行! 急いで!」
 飛空艇の中は騒然としていた。
 ベルネッサが要塞から帰還したのだ。
 彼女がブリッジへと入ると、まるで待っていたようにローザマリアたちが一斉に立ち並ぶ。
 トマスが、彼女に司令官の席をうながした。
「おかえりなさい、ベルさん」
 そう言ってほほ笑んだトマスに、ベルネッサはほほ笑みを返した。
「ただいま」
 それがきっかけとなって、緊張に包まれていた艦内は一気に明るいムードになった。
「おかえり! ベル!」
「おかえりなさい、ベルネッサさん!」
 みんなの声がベルネッサを暖かく迎えてくれる。
 その声を聞いていると、ベルネッサはここに戻ってこられたことを心から嬉しく思った。
(……良かった……みんなと無事にいられて……)
 しかし、そんな空気に水を差す者もいる。

 ドガアアァァンッ!

 ミサイルが着弾して、ブリッジが大きく揺れた。
「あっ! そうだ、ハデス!」
 すっかり忘れていたが、飛空艇はハデスからの総攻撃を受けていたのであった。
 トマスがすぐにオペレーター席に戻って大型モニターに外の景色を映し出す。
 ドクター・ハデスが、画面一杯に顔を映し出してわめいていた。
「俺を忘れるんじゃなあぁぁぁい!」
 もうギャグキャラなんだから早いところ消えればいいのに……。
 なんて思いもあるが、ハデスはいたって本気だ。
 合体したペルセポネとヘスティア(オリュンピア)に指示を出して、ミサイルをどんどん飛ばしてきた。

 チュドオオォォンッ! ドゴオオォォォッ!

「まったく! しつこい野郎ですね!」
 アルマがげんなりとした気持ちも含めて怒声を放つ。
「待って! あれは……!」
 そのとき、ローザマリアは画面内に現れた騎竜の姿を見た。
 それは――王騎竜『ア・ドライグ・グラス』に乗ったグロリアーナの姿であった。
 甲板に出て戦っていた彼女は、事態を重く見てグラスを呼び、ハデスへの直接攻撃を仕掛けていたのだ。
 そのおかげで、ハデス軍勢の勢いが削がれている。
 左右からはシャーウッドの森空賊団の部下たちに囲まれ、しだいにハデスたちは追いつめられていた。

「ぐぬぬぬ……おのれぇ……」
 ハデスは小型飛空艇の上で歯噛みしていた。
 次第に自分たちが追いつめられていることは百も承知である。
「こうなったら、奥の手だ! オリュンピア!」
「は、はいです!」
「なんでしょう! ハデス先生!」
「こちらの持てる限りのミサイルを全弾発射! 一気に飛空艇を沈めてしまえぇい!」
 ハデスは強硬手段というか、やけっぱちに出た。
 小型飛空艇に積んであったミサイルも同時に発射する。
「わ、わかりました〜!」
 オリュンピアが残りのミサイルを全て発射。
 無数のミサイルの雨が、飛空艇に向けて飛んでいった。

「ベルネッサ! マズいわよ!」
 ローザマリアがベルネッサへと叫んだ。
 敵のミサイルが近づいてきていることを知ったのだ。
 このままでは、飛空艇と言えども持つかどうか……。
「こうなったら、変形しかないわね!」
「変形!?」
 ベルネッサが言った一言に、ブリッジ内の乗組員全員が驚いた。
 しかしそういえばそうだった。ベルネッサがいないため、不可能とされていたが……。
 この飛空艇は戦艦モードへと変形することが可能なのだった。
「で、でもっ! 名前はどうするの!」
 こんなときにそんなもん重要か!?
 だがベルネッサたちにとって、それはイメージ的にもテンション的にも、なくてはならないものらしい。
 ほんの少し悩んだ末に、ベルネッサが出した答えは――
「……その場のノリ!」
 ということであった。
 おい、それでいいのか!
「飛空艇、戦艦モードへ移行!」
「了解!」
 ベルネッサの指示を受けて、トマスが飛空艇全体の機能を戦艦モードへの準備へと変更させた。
 そして繰り出される――その名前は――

「飛空艇……インテンス・ディザスターモード!!」

 飛空艇は希望をもたらすものであった。
(希望の探索者――ホープ・シーカー……。だったら、戦艦は、あたしの怒り……!)
 激しき災いを与えるもの――インテンス・ディザスター。
 ベルネッサの心にいま、方舟の新たな名前が刻まれた。

● ● ●


 ズガガガガガガガガァァァァン……――!

「ハハハハハハッ! くらえくらえくらえええぇぇ!」
 ハデスは大音声の笑い声をあげながら、ミサイルを次々と放った。
 その爆炎と煙によって、飛空艇の姿はすっかり見えなくなるほどだ。
「標的の飛空艇へのミサイルの全弾命中を確認しました」
 オリュンピアとなっているヘスティアがそのように告げる。
(やったか……!)
 ハデスは半ば望むようにそう思った。
 しかし――
「……レーダーに反応! 敵飛空艇、健在! 無傷ですっ!」
「――なにぃっ!?」
 煙がかき消えたそのとき、そこにあったのは黄金の顔のごときアークシールドに守られる飛空艇の姿だった。
「ば、バカな! あれだけのミサイルの直撃を受けて無傷だとっ?!」
 ハデスはのけぞるようにして狼狽えた。
 戦艦モードへと変形した飛空艇は、重々しい姿をしている。
 元々の損傷の跡は少なからず見られるものの、先ほどハデスが撃ち尽くしたミサイルは全て防御されたといって間違いなかった。
「くっ……アークシールドはバケモノか!」
 苦々しく吐き捨てたハデス。
 その隙が、まずかったのだろう。
「飛空艇の主砲から高エネルギー反応!」
 ヘスティアが危険を告げる。
 戦艦モードの飛空艇は、その船頭にある主砲にエネルギーをチャージしていた。

 ウォンウォンウォンウォン……――

「ハデス博士! 危ないです!」
「!?」
 だが、すでに遅い。

 キュゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!

 飛空艇のブラスターキャノンが、一気にエネルギーレーザーを発射したのだった。
「ぬああああぁぁっ!?」
 ハデスはなんとか間一髪のところでそれを避ける。
 しかし、被害はすさまじい。
「……うそ…………」
 小型飛空艇は下弦の半分ほどが半円の形でえぐられていた。
 これにはさすがにハデスもタジタジである。
「くっ…………こうなったら……」
 こうなったら!?
「戦略的撤退だあああぁぁ!」
「ああっ、待ってくださいハデス博士〜!」

 プロロロロ……プスン、プスン……

 壊れかかった飛空艇でなんとかこうにか逃げていくハデス。
 その後を、オリュンピア状態のヘスティアとペルセポネが追う。
 なんというか……まあ、いつも通りのハデスの撤退なのだった。