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リアクション
第五章 後方からの襲撃
全体集団の後方にて。
ベア・ヘルロット(べあ・へるろっと)とパートナーのマナ・ファクトリ(まな・ふぁくとり)、クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)とパートナーのハンス・ティーレマン(はんす・てぃーれまん)は衛生部隊として、負傷達の治療に奔走していた。
「防衛システムに? あまり無理をしないでくださいー……怪我のほうは大丈夫?」
マナがブリュンスタッドの傷の治療を終えて、首を傾げる。
「うん、ばっちり治ったわ。ありがとう」
ブリュンスタッドが怪我の具合を確認し、礼を言いながら微笑んだ。
「こちらも終わりましたよ、クリスフォーリル様」
同じくハンスから治療を受けたクリスフォーリルも、礼を言ってから、前を行く集団の方を見遣り。
「大分、順位が……。中の上くらいの順位……を取りたかったけど」
ほつりと漏らした。
ベアが彼女の頭をポンと軽く叩く。
「今回の訓練、順位は関係無いらしいよ。あまり気にする必要は無い」
隣で、クレアがふむと目を細める。
「それに、特に裏も無いようだな。教官が同行しないと言った時は何か仕掛けてくるのかとも思っていたが……安心した」
「教官がわたくし達を騙すようでは、この先が不安でしたからね」
ハンスが微笑む。
そばで後方を警戒していた御月 流也(みづき・りゅうや)が頷く。
「でも、警戒しておくに越した事は無いです。不測の事態は何も、それだけでは……」
「って、言ってるそばから、あれ!」
衛生小隊の警護についていたヒルダ・ヴァーリイ(ひるだ・う゛ぁーりい)が示した方。
砂煙を上げて黒狼の群れが迫ってきていた。
「ここで引いたら女がすたる! ってね」
ヒルダの声と共に、ヒルダ、クレア、クリスフォーリルの一斉射撃が黒狼の先頭集団を一気に蹴散らす。
そして、流也とブリュンスタッドがそれぞれ武器を構えて駆け出していく。
「確かに、ここで引くわけにはいきません」
流也の剣が軽やかに振り下ろされて、黒狼を地面に斬り伏せる。
返して、斬り上げる刃を足さばきと共に横に流して、二匹目。
裂く。
その横を火術による火弾が飛んだ。
黒狼との戦線の後方、サイドカーを付けた軍用バイクが砂煙を上げていた。
「数で圧されているな」
バイクを狼の群れへと向かわせながらセオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)がサイドカーの緋桜 ケイ(ひおう・けい)に言う。
「ああ、援護するぜ!」
そして、再びケイの放った火術が、距離を飛んで黒狼を焼く。
それを流也の剣が斬り裂いてとどめを刺す。
バイクは、銃撃を続ける後衛組のそばに止まった。
ベアがサイドカーから降りてきたケイを見て首を傾げる。
「イルミンスールから?」
「……あんたらはアオガクからか」
ケイがベアと、その横のマナを見遣りながら片目を細める。
マナが、こくと頷き。
「うん、ベアが絶対に誰も死なせたくないからって」
「俺は教導団の連中が入学早々パラ実送りってのはあんまりだと思ってな」
そして、ヒルダがケイの方を見遣り、軽く目を丸くした。
「女の子じゃん。言葉が悪いから男だと思ったよ」
「ちがッ! 俺はウィッチじゃねぇ。ウィザードだ!」
「嘘だぁ」
「ああもう――セオボルト、あんたからも言ってやってくれ」
「では、ケイを頼む」
セオボルトが、言い残して武器を構えながら前線へと駆けていく。
「おおい!」
若干恨みがましげなケイの声を背にセオボルトは、流也の動きをカヴァーするように槍で黒狼を牽制した。
それに気付いて、流也は切っ先を巡らせる動きの中で、一瞬だけ、セオボルトと目を合わせた。
「さっきバイクを運転してた」
「ああ。自分はセオボルトと云う」
「流也です」
その間に、二人は二匹を地に伏せる。
「もう一息だ。全力で守り切るぞ」
「ええ」
応えて、流也が流した切っ先とヒルダの銃撃が重なる。
ケイの放った火術が黒狼の鼻先に爆ぜて、セオボルトの槍先がそれを突いて捨てる。
やがて、クレアの放った一撃が最後の一匹の息の根を、止める。
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