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学園水没!?

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学園水没!?

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第三章 大団円

 学園の上空に、澄んだ青が広がっている。
 寮屋上では、盛大にバーベキュー・パーティが開かれていた。
「皆さん、お疲れ様です。どんどん食べてくださいね」
 エスペディア龍姫がバーベキューセットに手をかける。焼き上がった串はどんどん奪われていく。
「さぁ〜お楽しみの時間じゃ♪」
 ロザリア・リージュドットが豪快に肉を貪る。
「美味しい!」
 ラティア・バーナードが口をもぐもぐさせながら満面の笑みを浮かべた。サテラ・ライトもつられて笑う。
「お嬢様、わたくし達も美味しい物を配りましょう!」
「うぅ、高いなぁ……」
 紫煬遥香が足元を見ながらサンドウィッチ片手によろよろ歩く。と、同じく足元を向いて歩いていた比島真紀にぶつかった。
「ご、ごめんねぇー。わ、高い……」
「自分の方こそすまないでありま、す……」
 顔を上げたために下界が目に入り、思わずしゃがみこむ二人。
「貴殿も高所が苦手でありますか?」
「うん。そうー」
 顔を見合せると、紫煬遥香が優しく微笑んだ。
「一緒だねぇ」
「肉を食いつくすぜっ!」
 その傍らでデズモンド・バロウズが何本も串を持って瞳を輝かせた。アルフレッド・スペンサーが苦笑する。
「あまり急いで食べるとよくないですよ」
「へっ、頼まれたってやらねぇからな!」
 串を掲げて宣戦布告した少年は、勢いよく肉を頬張り飲み込む。
「!」
 と、手足をバタバタし始めた。どうやら喉に詰まったらしい。
「だから言ったんです」
 軽くため息をついて、水を受け渡すアルフレッド・スペンサー。デズモンド・バロウズは飛びつくように水を取った。


「これで一件落着だぜっ! 剣聖仮面ケンリュウガー、大勝利!」
 カルスノウトを振り回して掲げるのは武神牙竜。自作の特撮ヒーローコスプレで、色々なポーズをとる。かっこいいポーズを模索しているらしい。
「仮面乙女マジカル・リリィ、大勝利!」
 傍らで同じくコスプレ姿でポーズを決めるリリィ・シャーロック。負けじとポーズを変えていく。
 そんな二人の近くで、イルミンスール生の調査をしていた面々が語り合っていた。
「君、イルミンスール生に化けてたのか?」
「そうだよ。おびき寄せようと思って」
 串を片手に高月芳樹とアルフィエル・ノアが語る。
「逆効果みたいだったけどね。いい考えだと思ったんだけどな」
「名案だけど、今回の場合は駄目だったわね」
 苦笑するアメリア・ストークス。高月芳樹も笑う。
「まあ、悪いことをしてなかっただけよかったぜ」
 その傍で久慈宿儺に板東綾子が問いかけていた。
「あなた、いつもあんな風に強引なの?」
「……あんな風とは?」
「さっき、イルミンスール生を捕まえたときのことよ」
「あぁ、あのとき自分を止めたのはあなたでしたか。どうもどんな方だったか思い出せなくて……ちゃんと謝らないといけないと思って……」
 言い終わる前に、板東綾子はその場を立ち去っていた。
「やっぱりこうなったのね……」
「ロッポン、お疲れ様だね」
「ロッポンって……私のことですか?」
 にこにこ笑ってスティド・ハルパニアが六本木優希に語りかけた。
「うん。いいランス捌きだったよ。大人しそうに見えたけど、結構やるね」
「わ、私だって、やればできるんですからっ!」
 ランスで自身を庇うようにして、言い放つ六本木優希。顔がほんのり赤い。
「なんにしても、解決してよかったね」
 言ってスティド・ハルパニアは去っていく。
「私の剣捌きにも負けてなかったですよ」
 ナターシャ・ホフマンも六本木優希に笑いかけた。


「……色々深読みしすぎたようですね」
 楽しそうな面々を横目に、本郷翔がため息をついた。
「養護教諭の謝罪内容には、驚かされましたね」
 九条風天が苦笑する。
「ある意味、私達は彼に救われたのかもしれませんね」
 苦笑して、九条風天は先程の放送を思い出す。


『今回の梅雨騒ぎは、全て僕、養護教諭である起木保(ききたもつ)の起こしたことです』
 テントに作られた放送設備を使い、起木保が語り始めた。
学園の水不足を防ごうと、勝手に行動した結果です。水を管理する立場である僕は、空梅雨のせいで学園の水が少ないことに気付いた。そこで自作の「雨雲発生装置」と雨雲をつくるために必要な水分を集めるための「水分呼び寄せ装置」を使用し、雨を降らせようと思いました』
 一息つき、起木保が続ける。
『寮屋上で試運転してみると、降雨に成功しました。そこで、一旦止めて定期的に雨を降らせようとしたのですが……
スイッチがきかなくなってしまったのです』
 教師の声がだんだんと小さくなる。
『何度も止めようとしましたが、機械は言うことを聞いてくれず……僕はそれでも、学園のためになるからと放置していました……。
結果、学園を危機に陥れてしまい、申し訳ないと思っています』
 深いため息が、スピーカーから響いた。
『本当に、申し訳ありませんでした』


「悪意で降らせていたわけではなかったんですね。そう考えると、一方的に責めるわけにいきませんね」
「そうですね」
 本郷翔と九条風天が青空を見上げた。九条風天の耳に、ごく近くから話声が届く。
「あの先生、機械いじりが趣味なんだってな」
「そうらしいですねぇ。梅雨の原因の機械もゴーレムも、自分でツァンダの近くの洞窟から取ってきた物を改造・修復したものだそうですぅ」
「あぁ、じゃあよくいなくなるのは、その機械集めのせいなのか」
「みたいですねぇ。部品なんかもよく拾いに行くらしいですよ」
「はた迷惑な先生だな、全く」
「関係ないと思われていた情報が、真相に一番近かったみたいね」
 渋井誠治とシャーロット・マウザーが真相について語っていると、月白葵が会話に混ざった。


「みんな、お疲れ様〜」
「一番重労働だったんじゃねぇか、俺ら」
「そうでござるな」
「疲れたね」
「まあ、これでもう池が決壊することはないよ」
「俺達がしっかり堤防を作りましたからね。二度と同じことは起きないでしょう」
「皆さん、飲み物もってきたですぅ」
 にみてる、佐々良縁、椿薫、鷹谷ベイキ、十倉朱華、安曇真幸、メイベル・ポーター……【決壊対策班】の面々が集まって語り合っている。
「知っておるか? あの土建屋ハーレック興業の支払いは、養護教諭がローンで支払うらしい」
「皆への謝罪だけでは甘すぎる気がしましたし、ちょうどいいんじゃないですか?」
「これであの先生も反省するといいな」
 ガゼル・ガズンの問いかけに、風森巽と櫻井恭介が答えた。
「わたくし、疲れましたわ」
「いいところを後続隊に持っていかれましたね……」
「でも、ワタシ達が攻撃してたおかげで倒せたんだよ!」
「そうそう。感謝してもらわなくちゃね!」
「葵、怪我は大丈夫か?」
「はい、大丈夫です」
「楽しかったね!」
「確かにあーる華野さんは一番楽しそうでした」
 東重城亜矢子、菅野葉月、ミーナ・コーミア、アクア・ランフォード、龍堂雷、草薙葵、あーる華野筐子、カライラ・ルグリア達
【水害対策遊撃】のメンバーもテント傍に集まって語らい合う。テントの前はやけに騒がしかった。
「ロンっ!」
「え、ウソだろ!?」
「マリーくん、勝ちすぎです」
「今日のツキはマリーに向いているようだな」
 卓を囲み、マリー・ストークス、武来弥、エスペディア龍姫、龍堂雷が麻雀を行っているのだ。どうやらマリー・ストークスの一人勝ちらしい。
「マリーちゃん、すごいねぇ!」
 傍で東條カガチが見守っている。
 そんな騒がしさから少し離れた屋上の手すり付近で、村雨焔が佇んでいた。
「……アリシア、もう雨は降っていないが?」
「いーじゃない!」
 外套の下で、アリシア・ノースが村雨焔にぴたりと身を寄せていた。
「暑いし、食事もできないだろう」
「もーっ!」
 頬を膨らめるアリシア・ノースを、村雨焔は引き剥がしにかかった。
「雨……止んでしもたな」
「いいことですわ」
「いいことやけど……ちょっと残念や」
 村雨焔達とやや離れた位置で、御槻沙耶がじっと嵩乃宮美咲を見つめた。
「……これでやっと、夏が来ますね」
 朗らかな笑みを浮かべ、手すりに寄りかかる百鬼那由多がアティナ・テイワズに語りかけた。
「那由多と過ごす初めての夏になりますわね……。楽しみですわ」
 たがいに微笑みあって、空を見上げた。つられるように、全員が空を見上げる。
 どこまでも続く青い空が、蒼空学園溜池キャンパスを優しく覆っていた……。

 終

担当マスターより

▼担当マスター

鳳羽 陸

▼マスターコメント

このシナリオに御参加下さり、ありがとうございます。
 
ゲームマスターとしての初仕事でした。いかがでしたでしょうか。
反省点は多々ありますが、皆様に楽しんでいただけたなら光栄です。
 
また、結末に関しては様々な憶測もあり、楽しくアクションを拝見させていただきました。
結果的に犯人となってしまった教師は、どこかで再登場するかもしれません。

なお、今回かなりの文章量ですが、本来のノーマルシナリオ分くらい書きました……。書きすぎました。
イベントシナリオとしては異例の長さですので、悪しからず。次は通常の長さで書かれるはずです。

では最後にもう一度、御参加まことにありがとうございました。