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リアクション
降り続く雨を防ぐテントの下。パソコンをチェックする武来弥の黒眼が光る。
「この二人は何も知らなかった、と」
匿名のアドレスから送られてきた写真を一つ一つ見ていく。池の決壊阻止ができたこと、イルミンスール二人組の居場所を示す写真、屋上の調査の様子の写真が並ぶ。
「……ん?」
「どうかしましたか、弥くん」
「見ろよ、これ」
エスペディア龍姫に武来弥が示したのは、一人の女性が写った写真。
「これ、校長先生ですか!?」
パソコンの画面いっぱいに校庭の片隅で蒼空学園校長、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)が豪快に滑って転んでいる姿が映し出されていた。ぬかるんだ地面に足を取られたのか、泥まみれになって地面にへたり込んでいる。
「あの人、転んだりするんですね……」
「なんでこんな写真が……」
首を傾げていると、携帯電話が震えた。
『【氷術】行きます!』
「了解」
携帯電話を耳に当てたまま、テントの外、池の方向に視線をやる。
「弥くん、本郷くんからメールが届きました」
「見ておいてくれ。オレは検証しなきゃならないからな」
目を凝らす。ほどなくして氷魔法の輝きが見えた。その光は瞬時に貯水槽の間に向かい、消える。
「やっぱりあそこか!」
視線の先にはゴーレムが二体、腕を振り回していた。それを【水害対策遊撃】の先発隊が取り囲み、攻撃を繰り出している。
「知らせねぇと!」
「弥くん! ちょっと見てください!」
用意しておいた拡声器に手をかけると、エスペディア龍姫が肩を叩いた。
「今忙しいんだ!」
「犯人が分かったのかもしれないんです!」
「! 本当か?」
拡声器を置き急いでメールを見る。
「噂の怪しい人物は……この人なのか」
いまいち納得のいかない表情で、拡声器を取る。
「まあいい。とりあえず皆に伝えよう」
言って大きく息を吸い込むと、武来弥が叫んだ。
「緊急連絡! 雨のもとは貯水槽の間にある!!
また犯人は養護教諭の可能性が高い!」
拡声器からの声を耳にしながら、ゴーレムと対峙する【水害対策遊撃】の先発メンバー。
「やっぱり、そうですよね」
菅野葉月は納得して頷く。ゴーレムが二体もいるのだ。何かを守っていると見て間違いない。
「結構強いね……」
ミーナ・コーミアが息をつく。雨に打たれ続けていて体力も奪われている。
腕を振り回すゴーレムと、歩いてパンチを繰り出すゴーレム。その体はなかなか強固だ。
「ゴーレム達の背後に、怪しい箱があるよっ! 壊そう!」
たった今ゴーレムに飛びかかったアクア・ランフォードが叫んだ。比島真紀も頷く。
「どうやら何かの機械のようであります!」
「アティナ、行きましょう!」
「壊すのですわね?」
言葉を受け、百鬼那由多とアティナ・テイワズが走る。東重城亜矢子も続く。
「わたくしも加勢しますわよ!」
「俺も!」
津崎洸、龍堂雷も続く。
「では私はゴーレムの気を逸らします!」
草薙葵が動き回るゴーレムの気を引くため、攻撃を仕掛ける。その内に六名がゴーレムの妨害をすり抜け箱を叩く。
六人に叩かれた箱は砕け、火花を見せた。一方、ゴーレムに立ち向かった影は崩れ落ちた。
「っ、一人で気を引くのはやはり無理がありましたね……」
「自分も気を引こうと思ったでありますが……間に合わず申し訳ないであります」
「いいえ、しょうがないですよ」
利き腕の肩を殴られ、武器を取り落とす草薙葵が苦く笑う。比島真紀はパートナーを振り返った。
「サイモン、彼女をテントへ運ぶであります」
「わかった」
「いえ、自分でいきま……っ!」
歩こうとしてよろめく草薙葵を、比島真紀が支えた。
「遠慮はいらないであります。傷は早く治すべきでありますよ」
「ありがとうございます」
頭を下げた草薙葵が、サイモン・アームストロングに運ばれていく。
「あたしの剣技、見切れる?」
草薙葵の負傷などつゆ知らず、どこか楽しげにアクア・ランフォードがバーストダッシュで飛び上がり、ゴーレムに切りかかる。
腕を振り回すゴーレムの肩口に直撃。土色の金属にひびが入る。
「手ごわいですわね……バルバラ、行きますわよ!」
「はい!」
ゴーレムに背を向けた東重城亜矢子の声に反応し、バルバラ・ハワードがゴーレムの背後に現れた。
「挟み打ちですわっ!」
共にカルスノウトを掲げ、二人で切りかかる。
高い金属音と共に、動きまわるゴーレムに傷がついた。
「どこまで頑丈なんですか!」
叫びつつ百鬼那由多が【隠れ身】を使用。気を逸らすようにアティナ・テイワズが躍り出る。
「鬼さんこちら、ですわ!」
カルスノウトを振り上げ、ゴーレムの頭に切りかかる。しかし振り続けられる腕に、近寄りきれず空を切る。
「倒れてください!」
盗賊の特性を生かし、猛スピードで走った百鬼那由多がゴーレムに足払いを仕掛けた。
バランスを崩し、ゴーレムが倒れ込む。
「今だ!」
龍堂雷が飛翔。カルスノウトを振り上げ突き立てる形でゴーレムの頭を狙う。
「龍堂さん、危ない!」
津崎洸の声に振りかえると、もう一体のゴーレムが腕を振り上げていた。
「くっ!」
突き立てようとしていたカルスノウトを急いで持ち上げ、腕の衝撃を流す。
その隙に津崎洸が倒れたままのゴーレムに肉薄。足に刃を突き立てる。
「行けっ!」
バリン、と砕ける音がして、片足が二つに裂けた。
途端、雨が強くなった。
「うっ、重たい……」
「機械が暴走したのか……」
アクア・ランフォードと龍堂雷が顔をしかめる。他の先発隊も同じだった。その場にいない者を除いては。
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