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蒼空学園遠泳大会!

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蒼空学園遠泳大会!

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 泳ぐの大好き! 夏大好き! な晃月 蒼(あきつき・あお)が大会へ参加したのは偶然であった。
 もともとは砂浜へと泳ぎに来ていた。
 そこで見つけたのが、何かの準備をしている蒼空学園の学生たち。遠泳大会を行うのだと聞き、水着姿で他校の学生だというのがバレないのをいいことに、早々に受付を済ませた。
 パートナーに知られれば、怒られると思い、知らせていない。
 今頃、自身を探し回っているだろうかと少し心配もしたけれど、怒られる方が怖いので、内緒にしておくことにした。
 胸が浮くからということを理由に、マイペースで背泳ぎする。
 周りで鼻血を吹いて脱落した学生が居るとか、救護班の学生が溺れたとか、聞こえてきたけれど、気にせずマイペースで泳ぎ続けた。
「コースはもう少し、右方向ですよ」
 方向音痴のためか、真っ直ぐ泳ぐことが出来ず、途中、幾度となくそう注意されたが、その都度、方向を変えつつ、彼女はマイペースに泳いだ。

 救護班にとって、一番の救護対象は沢 スピカ(さわ・すぴか)であった。
 受付の時点で顔色が悪いように見えたため、参加しないことを促した。
「ふふ。渚のホワイトマーメイドと呼ばれたこの私に隙はありません……」
 けれど、そう言って参加すると言う彼女に気圧され、参加を受け付けてしまった。受付が終われば、テントの近くで準備運動をしていたのだが、その時点でゼーハーと息が上がっていた。
 その様子から、スタート直後から目を離すな、ということで広瀬班がスタート地点の近くに控えていたのだ。
「優勝はもらいましがばばばば……ごぼぼ……」
 スタートしてから足がつくまでの間は良かった。
 そのため、スピカも調子に乗り、そのようなことを口にしたのだが、いざ泳ぎ始めると、去年の2メートルという記録をわずか10センチほど更新しただけで、溺れ始める。
「大丈夫か!?」
 そんな彼女を見ていた周がゴムボートから降りて、すぐに駆けつけ――もとい、泳ぎつける。
 ゴムボートに戻すより、浜に戻る方が早いために、浮力を利用して抱き上げながら、周はスピカを浜まで運んだ。後から周のパートナー、レミも駆けつける。
「あ、ありがとうございます……」
 溺れた拍子に飲んでしまった水を吐き出したスピカは、息も絶え絶えに礼を告げた。
「どうってことないさ。ここで助けたのも何かの運命だからデートしよう!」
 スピカの手を取って、口説き始める周の姿に、拳を握ったのはレミであった。
 周の頬を殴って、スピカから離れさせ、砂浜に正座させる。
「裏方だけど、とっても大事な仕事だよね? なのに周はいつもいつも……皆に恥ずかしいと思わないのっ!?」
 そう説教を始め、横たわったままのスピカも砂浜に居た救護班テントに居た学生も驚く。
「ほら、さっさと、ゴムボートに戻る! ……えっと、沢くん、だったよね? 大丈夫? ヒール要る?」
 周に投げかけた厳しい言葉とは一転、スピカには優しく訊ね、返事も待たずにヒールを施す。
 テントでの休息は、そこで待機している学生たちに任せて、レミもまた、ゴムボートに戻っていった。

「マイペースバトラーとしての、本領を発揮させていただきましょう」
 泳ぎ始める前にコースをしっかりと頭に焼き付けた本郷 翔(ほんごう・かける)は、どう泳げばいいのか、イメージをはっきりさせていた。
 体力配分や泳ぐ速度なども綿密に計画した上で、中盤に差し迫る辺りを泳いでいる。
 ふと、その場に留まるように立ち泳ぎしながら、他の参加者の泳ぎのペースを眺めた。
 気分転換のためだ。
 中盤に差し迫った辺りから、それまでのんびり泳いでいたがややスピードを上げ始める者も居れば、最後までスパートはかけないのかずっとのんびり泳いでいる者も居る。
 それを眺めてからまた、翔は泳ぎ始めた。
 けれど、眺めたからといって何かが変わったわけではなく、最初からと代わらぬスピードだ。
 マイペースなまま、翔は泳ぎ続けるのであった。

(準備運動しといてよかったな……途中で足をつったとかマヌケすぎるからな……)
 足がつって救助された学生を見ながら、競泳用の水着を着た弥涼 総司(いすず・そうじ)はそんなことを思い泳いでいた。
 序盤から中盤にかけて、それなりのスピードを出して、先頭集団についてきている。
 順位としては、最初の考えどおり、ラスト200メートルでスピードを上げれば、優勝も夢じゃないだろう。
 その位置を保ったまま、総司は泳ぎ続けた。

 白地にハイビスカス柄のビキニを纏う一乗谷 燕(いちじょうだに・つばめ)と淡いオレンジの競泳水着を纏うパートナーの宮本 紫織(みやもと・しおり)は一進一退を繰り返しながら泳いでいた。紫織がやや先を行くのであるが、燕も時折、前に出る……といった感じだ。
 紫織とはパートナーであると共に、常にライバルでもありたいと思う燕は、今大会でもパートナーと協力して泳ぐコースではなく、1人コースに2人それぞれで参加したのだ。
(着替える時から思っていましたが、燕殿に比べてそれがしの胸は……)
 泳ぎつつ見える燕の胸元に、紫織はため息をつく。
「?」
 ため息をつく紫織の様子を不思議そうに見ながらも折り返し地点を回ると、燕は声を上げた。
「……ほんなら、ここらから、いよいよ本番どすぇ〜」
「燕には、絶対負けたくない、だって水の抵抗とかそれがしの方が少ないもの!」
 燕の声に、紫織にも火がつき、後半はスピードを出して泳ぎ始める2人であった。