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エルデの町を守れ!

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●第4章 アントクイーンを倒せ!

 【EDF】に所属した学生たちがジャイアント・アントを倒していく傍らで、ジャイアント・アントクイーンの退治を目指す学生たちが巣穴の奥へと潜っていた。

「紅蓮の魔術師、参上! ってな!」
 一番に最奥の部屋へと辿り着いたのはウィルネスト・アーカイヴス(うぃるねすと・あーかいう゛す)とパートナーのヨヤ・エレイソン(よや・えれいそん)志位 大地(しい・だいち)とそのパートナーのシーラ・カンス(しーら・かんす)の4人だ。
 大地が大量に用意してきたカセットコンロ用のガスボンベにリターニングダガーで穴を開け、それをジャイアント・アントクイーンに向けて投げつける。ボンベがジャイアント・アントクイーンに近付いた辺りで、ウィルネストが作り出した火球をそれにぶつけた。
「ほいほいっと、焼き尽くせ紅蓮の炎、ファイヤーフレア!」
 火球だけでは無理であろう勢いで炎がジャイアント・アントクイーンを包み込もうとしたが、護衛のジャイアント・アントが間に割って入って、炎に包まれた。
「まだまだ! 続けていくぞ、ウィルネスト!」
 ヨヤもガスボンベに穴を開けて、ジャイアント・アントクイーンへと投げつける。
 一度に2、3個投げられたガスボンベへとウィルネストが火球をぶつけると、大きな爆発が起きた。
 ボンベの欠片が吹き飛んできて、ウィルネストや大地に掠り傷を与える。その傷はシーラがすぐさま、ヒールで癒した。
 爆風が晴れると、数体のアントは倒れているけれど、ジャイアント・アントクイーンはまだ生きている。

「双方剣を引け! ここは争う場面ではない!」
 次にやって来たのは【ピースメーカー】の6人だ。
 神代 正義(かみしろ・まさよし)が、ジャイアント・アントクイーンと4人の間に割って入って、攻撃の手を止めさせる。
 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)も一緒に立ち塞がり、五条 武(ごじょう・たける)をアントクイーンの下へと促した。
「女王よ、話を聞いて欲しい。君の兵隊たちがエルデの町を襲い始めたことから、事が始まったが、双方が共存しあう道もあるのではないだろうか?」
 武が提案するのは、エルデの町をはじめとする周囲の町を襲わない代わりに、巣穴へ一切危害を加えないということ。
 目の前に現れた学生が語る提案を理解しているのかどうか分からないけれど、ジャイアント・アントクイーンは一時、反撃の手を止めていた。
「どうだろうか?」
 提案したことを受け入れてもらえるだろうかと、武は訊ねる。
 けれど、一瞬の間を置いて、ジャイアント・アントクイーンはその口から武をはじめピースメーカー6人に向けて、酸を吐き出してきた。
「やっぱりこうなりますよねー」
 言いながら大神 愛(おおかみ・あい)は正義へと祝福の祈りを捧げる。

 ライト付ヘルメットを被ったクラーク 波音(くらーく・はのん)は、複雑な巣穴をマッピングしながら抜け、最奥の部屋へと辿り着いた。
 ジャイアント・アントたちと学生たちが戦っている様子に、すぐさまエンシャントワンドを掲げる。ジャイアント・アントたちの間に酸の霧を発生させ、外殻を軟化させた後、ワンドの先から電流を放った。
 電流はジャイアント・アントたちの身体を駆け抜け、次々と絶命させていく。
「エッチ団結! FIGHT!! ……の略かしら?」
 最後の部屋に辿り着くまでの間、聞こえてきた掛け声にすっかり感化された騎沙良 詩穂(きさら・しほ)は「E・D・F!! E・D・F!!」と掛け声を上げながらやって来た。
 何の略か分からなかったので、彼女なりに解釈して首を傾げる。
「エッチ団結! FIGHT!!」
 パートナーのセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)も一緒になって、新たな掛け声を上げ始めた。
 最後の部屋では既に戦闘が始まっており、ホコリなどが舞っている。詩穂は、掃除と称してホコリと共に、ジャイアント・アントを倒していく。
 セルフィーナは、詩穂に襲い掛かってくるジャイアント・アントの攻撃を受け流し続けた。
「デカスギ……」
 パートナーのリリス・チェンバース(りりす・ちぇんばーす)に半ば無理やり連れて来られた田桐 顕(たぎり・けん)はジャイアント・アントたちの大きさにただ呆気にとられていた。
 そして、このような大きさの昆虫を相手に出来るかと、すぐに引き返そうと踵を返す。
「どこに行くんです、今逃げたら後で、後悔しますよ」
 けれど、リリスに制服の襟を掴まれた上、そんな言葉と共に重圧を加えられて、引き返すことは諦めた。
 出てくるジャイアント・アントたちを次々と相手していく。けれどもキリがなく、顕はついに声を上げた。
「いい加減ムカついてきた、まとめて駆除してやる!」
 そのまま奥へと進んできて出会ったのは親玉――もとい、ジャイアント・アントクイーンだ。
 身の丈ほどもある大剣『アインヴァルト』を振るい、単騎で挑むも、鋭い牙に噛み付かれて、傷を負ってリリスの元へと戻ってくる。
「なにをやっている! 頭を冷やせ! 馬鹿者!」
 戻ってきた顕の胸座を掴んだリリスはそう告げ、彼に冷静さを取り戻させる。
「あ……そう、だな。すまん」
 諭された顕は呟くように応え、改めて大剣の柄を握り直した。
 リリスもエンシャントワンドを構え直すと、他の学生たちと連携を取りながら、ジャイアント・アントクイーンとその取り巻きジャイアント・アントに向かっていく。
 市販の害虫駆除用薫煙式薬剤を持ち運べるだけ持ち運んできたリリサイズ・エプシマティオ(りりさいず・えぷしまてぃお)とパートナーのリヴァーヌ・ペプトミナ(りう゛ぁーぬ・ぺぷとみな)は、その間へ辿り着くなり、薬剤をセットし始めた。
「直接的に戦う必要など、まるでありませんわ! もう少し皆さん、頭を使った方がよろしくてよ!?」
 リリサイズの言葉に、それぞれの武器や魔法を駆使して、ジャイアント・アントたちに立ち向かっていた学生たちは相対しながら何事かとそちらを見る。
「HEY、皆リリサイズ様の言う事聞いて早めに避難しやがれでございます!」
 リヴァーヌも周りの学生たちに避難を促す。
 けれど、避難しろと言われたところで、簡単に避難できるわけではない。
 牙と交えている武器を下ろそうものなら、噛り付かれてしまうだろう。
「逃げないというのでしたら、もう火をつけてしまいますわ!!」
 言って、リリサイズは薬剤から距離をとった状態でエンシャントワンドの先に火の玉を作り出すと、それを薬剤に向かって放った。
 引火した薬剤からは煙が出始める。それを見届けて煙を吸い込まないうちにリリサイズとリヴァーヌは外へと逃げていった。
 充満していく煙に、学生たちは酸を恐れて持ってきていたゴーグルやマスクをつけ始めた。
 ジャイアント・アントたちはというと、少しばかり苦しんでいるようだが、その煙で倒れる様子はない。
 所詮は、普通の害虫用の駆除剤というところなのだろうか。
 エリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)に頼まれて、ギャザリングへクスで大量に作った特性のスープを持たせた影野 陽太(かげの・ようた)は、エリシアを見送り出していた。
 エリシアはジャイアント・アントと対峙すると共に、スープを飲んで魔力を増強させる。
 まず1発目は昆虫が低温に弱いということを信じて、氷術を使った。ジャイアント・アントの身体の一部が凍りついたところで、そこを目掛けて続けざまに雷術を放つ。
 凍ったところで通電性が増したジャイアント・アントの身体を雷撃が駆け巡り、そのジャイアント・アントはずん……と地面へ倒れた。
 途中現れたジャイアント・アントたちで火などの魔術的なものに弱いことを確かめてきたシルバ・フォード(しるば・ふぉーど)
 ジャイアント・アントクイーンの間に入るなり、ジャイアント・アントたち皆に向けて、爆炎を放つ。
 けれどもジャイアント・アントクイーンを守っているものたちなだけあって、これまでのジャイアント・アントたちと比べて、一撃で落ちるようなものたちではなかった。
「シルバ、こちらに卵が」
 雨宮 夏希(あまみや・なつき)の言葉に、隣の間を見ると半分ほど燃やされた卵が壁際に並べられていた。
「可哀想だな」
「可哀想ね」
 けれど、これを放っておいては再びアントたちがエルデをはじめとした周辺の町を襲ってしまう。
 住民のためだと割り切って、2人はここまで光源として持ってきていた松明の火を卵の片隅に移した。
 片隅から次第に卵が燃えて行き、壁面を炎が走る。
 それらが消えるころには卵は全て、燃えカスとなっていた。