百合園女学院へ

薔薇の学舎

校長室

波羅蜜多実業高等学校へ

温室大騒動

リアクション公開中!

温室大騒動

リアクション


11.復活します
 
 タネ子の悲鳴は止むことがない。
 頭が近づいてこないのは、みんなが必死に戦って足止めをしてくれているからだ。

「ありがとう……」

 永太は呟いた。
 汗が目に入る。でも、やり続けなくちゃいけない。
 どうにかして……どうにかして……
──ようやく、終わりが見えてきた。
 腰を伸ばしながら周りを見ると、そろそろ皆もそんな状態なのか、起き上がってアイコンタクトを交わしてくる。
 オーバーヘッド型のヘッドホンを装着し、ショパンを聞きながら優雅斧を振り回しているザイエンデ。
 ジガンとノウェムは同じ箇所を連携プレーで切りつけて──リナリエッタは離れた場所からシャープシューターで根っこを狙い撃ちしている。

「ここに植えられたが為にこんなことになってしまったタネ子さん。でも……現に管理人さんは食われてしまったわけだし……」

 あれで私たちがここに入らなかったら、あの人は一体どうなっていたんだろう?
 少し考えて、リナリエッタは背筋に冷たいものを感じた。

「こわっ……! でもおかしいなぁ。中々当たらない」

 永太達の近辺が穴だらけになっている。一体何を狙っているのだろうか……

 永太は斧を振り下ろす。

 そして──

 ざく。

 根が切れた。


ぐげえぇええええぇええええ!!!!!



 甲高い雄叫びを発すると、タネ子はしゅるしゅるとしぼんでいく。

「え?」

 みるみるうちに、触手の森も、覆いつくした葉も、根も、視界から消えて無くなっていく。
 側に寄ってみると、巨大なハマグリが掌で転がせるくらいの、小さな小さなシジミへと──変わっていた。

「これが……あのタネ子か?」

「もしかして根が弱点って……1本でも切りさえすればこうやって小さくなるってことですか?」

 ノウェムはその場にへたりこんだ。

「疲れました〜」

「俺もだ〜」

 ジガンも大の字になって寝転ぶ。

「やっと……終わったんですね」

「やりましたね」

「終わったよー!!」

 永太とザイエンデ、リナリエッタ、満夜や想がやってきた。

 ジガンも再び起き上がり。

「…………」

 顔を見合わせると、皆で声をあげて笑った。

 ◆

 小さなタネ子は覗きこむと、頭のシジミもどきをぺけぺけと広げ、茎を揺らし、まるで踊っているかのように見える。

 こうしているとなんて可愛らしい、愛らしい生物なんだろうか……

「これで一安心ですね……」

 有栖は優しい笑顔でタネ子を見つめる。

「処分されずにすんで、本当に良かったです」

──救助された管理人さんは衰弱は激しかったものの、比較的、軽症とのことだった。
 騒ぎの責任も取らされることはなく、二・三日もすればこの職場──温室に復帰出来るようだ。
 この温室は、オーバタさんでなければ管理することは出来ない。
 だけど室内の惨状を見たら、治った体調が悪化するかもしれない……

「あの果物……戻った時には萎びていたんだよね。きっと、もぎ取ってから数分しかもたないんだ。だから上の人達はあそこですぐ食べて──」

 次こそ絶対食べやるんだから!

 乃羽は固く心に誓った。

 メイベルは、タネ子の頭を、つんとつつく。
 まるで喜んでいるかのように首を揺らすタネ子。

「かーわいいですぅ☆」

 メイベルの弾ける笑顔に、セシリアとフィリッパは微笑しあった。

……巨大タネ子は排除したと告げ、この件は解決した。誰もこの小さな植物が、あの巨大な生き物だとは思わないだろう。

「行きますか……」

「うん」

 ケイティとカリンは、名残惜しそうにタネ子を何度も振り返る。

(本当に良かった)

 タネ子は、小さな鉢に移されて温室の片隅に置かれた。

「これなら問題は起こらないですぅ。もう二度と、管理人さん食べちゃ駄目ですからねぇ」

 澪は、優しくタネ子を諭した。

 温室を離れていく生徒たち。

……だが。

 皆は知らなかった。

 鉢の下の穴から、徐々に伸ばしつつある根のことを。



 タネ子は再び、大地に……巨大な根を張り巡らそうとしているのだった……

担当マスターより

▼担当マスター

雪野

▼マスターコメント

こちらのシナリオを担当致しました雪野です。ご参加下さいまして、ありがとうございました。
ケルベロス君もタネ子さんも喜んでいることと思います。
今回は……お察しの通り色々微妙に裏切ってしまいました(笑)。
サンプルアクションも引っ掛けがあります。と言うかそうなってしまいました。その為、自分の首を絞めることにもなりました(苦笑)。

称号の付与に関しては、ここで書いたことはなかったのですが……
下記三名に差し上げた称号のみ暴露させて頂きます。

天城 一輝   様 ……【かがやけ!黄金水☆】
皆野 秀    様 ……【きらめけ!黄金水☆】
ルイ・フリード 様 ……【降りかけろ!黄金水☆】

です。
意味は、リアクションを読んで頂ければご理解出来るかと……
ある意味彼らも犠牲者です。ご使用の有無は勿論お任せしますので。放置可です。

今回はアクションが完全採用されていない方が多いかもしれません。
触手関連も、物足りないかもしれませんが、基本コメディですので(笑)。
楽しんで頂ければ嬉しいです。ご参加ありがとうございました。

追記
1/3 3頁目 MC・LC名前入れ替わり修正致しました。申し訳ありませんでした。