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「――お前はミルザム様の敵か味方か?」
「えっ? あの……」
 殴る。蹴る。ボコる。容赦なく、四人がかりで。
 それを繰り返していた羽高 魅世瑠(はだか・みせる)フローレンス・モントゴメリー(ふろーれんす・もんとごめりー)ラズ・ヴィシャ(らず・う゛ぃしゃ)アルダト・リリエンタール(あるだと・りりえんたーる)の四人。
 犠牲者を出しながら暴れ回っていた四人は、ふと手を止めて辺りを見回した。
「なぁ、魅世瑠。雑魚じゃなくてさー、ミルザム様の敵の親玉ってどこにいるんだ?」
「ラズわかんないけど疲れてきた―!」
「というか、この人たちは本当に敵なのでしょうか」
「敵か? って聞かれてどもったんだから敵じゃないのか?」
 クィーン・ヴァンガードになりきって、使命感から行動しているのはいいが、結局敵がわからずに手当たり次第に攻撃していたのだ。
 その事実に今さら気付いて、四人は顔を見合わせた。
「お前ら! アルも! 何してんだ!?」
 と、叫びが聞こえて、四人が振り返る。息を切らした弥涼 総司(いすず・そうじ)がそこに立っていた。
「総司さん」
「騒ぎを聞きつけて来てみれば……クィーン・ヴァンガードごっこかよ……」
「ごっこじゃない!」
「そんな言い方するなんて、ミルザム様の敵じゃねぇだろうな!?」
「ま、待ってくださいな! 総司さんが敵なわけありませんわ!」
「俺は敵じゃないし、お前らもクィーン・ヴァンガードじゃないんだよ」
 魔女の服の呪いとやらでおかしくなっているのだ、と総司が言った言葉に、総司を庇おうとしたアルダトの顔色が変わる。
「呪い? そんなはずがありませんわ。総司さん、まさかあなた……」
「敵じゃないぞ!」
「で、ですが!」
 言い募るアルダトにため息をつき、総司は少し考え込んで四人全員に告げた。
「……実はな、魔女が敵なんだよ」
「え?」
「おまえたちが着ている服や、他の人間が着ている服に魔法をかけちまったんだ。ミルザム様の敵を増やすためにな」
「何ぃ!?」
「だから、早くその服を脱いで魔女を何とかしないと、……って、おい!」
 総司の言葉が終わる前に、すでに魅世瑠、フローレンスが駆けだし、ラズも後を追ってしまった。
 自分も後を追おうとするアルダトの手を掴んで、総司は慌てたように止める。
「だから、アルはそれを脱げって」
「そうはいきませんわ! 早くミルザム様の敵を倒しに行かないと」
「ああ、だから……」
 説明しようとして、今のアルダトには言葉が通じないと悟った総司は、仕方なしに光条兵器を使う。
 こうするより他に脱がせる方法がないと思ったからだ。
「きゃっ!?」
 そして片手に持っていたドレスをあてがうと、着るように促した。
「乱暴にして悪かったな。かわりにこれを着てくれ」
「このドレス……どうしたのですか?」
「アルに似合うだろうなと思ったら……つい買っちまった。もっとかわいいアルが見たいんだ。着てくれないか?」
「総司さん……」
 わずかに頬を染めたアルだとは、わかりましたわ、とドレスにそでを通す。
「似合います、かしら」
「ああ……綺麗だ」
「そ、そんな……」
 思わず総司の口からこぼれた賛辞に、アルダトは赤面して見せる。
 らしくない様子のアルダトに手を伸ばすと、そっと手が添えられる。
「じゃあ、あいつらを追うぞ」
「は、はい……」
「アル? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですわ。ただちょっと、照れてしまうだけです」
「え、」
 アルダトの様子にまさか、と総司は頬を引きつらせる。
 おそらく、これも魔女の作った服だったようだ。ドレスは似合っているが、魔女の服などはごめんだ。
 アルダトを戻し、あの三人を何とかするためにも、総司は先を急ぐことになるのだった。
「レロロロロ〜!!」
 奇妙な笑い声をあげながら、レロシャン・カプティアティ(れろしゃん・かぷてぃあてぃ)は総司たちの去っていった方を見すえた。
「蒼空学園を乗っ取るにはまず魔女からね! 魔女の力と私のダーク・パワーをもってすれば蒼空学園どころか世界征服もたやすいわ! 待ってろ、魔女〜! レロロロロ〜!!」
 高笑いをしながらレロシャンは、街の中を駆け抜けていった。

「な、何か街もすごい騒ぎだね……」
 街を歩きながらマリエルが辺りを見回す。様子が変わってしまった者が結構いるようだった。
 害のない変化ばかりだから良いものの、やはり混乱が生じているらしい。
「だから何とかするために急いでるんでしょ! マリエル、ほら行くよ!」
「う、うん……」
 愛美にせかされながら、一行は先を急ごうとする。
 と、目の前に羽入 勇(はにゅう・いさみ)が立ちはだかった。
「ハーハッハッハッハ! 巨乳に悪の鉄槌を!」
 豪快に笑いながらポーズを決めて一行の行く手をふさいだ勇は、愛美に向かってビシッと指を突き付ける。
「これでもくらえっ」
 そう言って勇が投げたものは、液体爆弾だった。
 ぴしゃり、と愛美に当たったそれははじけてぬめりのある液体を飛び散らせる。
「きゃっ」
 愛美の胸元や、わき腹を濡らしたそれは、てかてかといやらしく光る。
「ま、マナ! 大丈夫?」
「ちょっと……! ぬるぬるするじゃない!」
 けれど量が少なかったのか、威力がないのか、一瞬ひるんだ愛美はすぐに何事もなかったかのように態勢を立て直した。
「……で?」
「え」
 一瞬だけ時が止まり、勇はぱたぱたとポケットを探りだす。
 どうやら武器はあれだけだったようだ。
「え、えっと……」
「次は私の番だよね?」
 そう言って武器を構えて微笑む愛美たちから後ずさりながら、勇は引きつった笑顔を浮かべた。
「はーい、そこまでですよー」
 そこへラルフ・アンガー(らるふ・あんがー)ののんびりした声が入り込んできて、愛美たちが手を出すより早く勇を小脇に抱える。
「あぁーすみませんねーみなさん。それただぬるぬるするだけですからー。ご迷惑おかけしてすみません」
「え、あ、はぁ……」
「う、うわーん!」
「はいはい、退散しますよー部屋で牛乳でも飲みましょうねー」
「覚えてろよー! 小さいからって馬鹿にすんなー!」
 そんな捨て台詞を残して、二人の影が小さくなっていく。
「何だったわけ? あれ」
「さぁ……」
 ミルディアたちが首を傾げていると、今度は背後が騒がしくなる。
「ねぇ、お兄さん。何処行くの?」
 うふん、としなをつくってトライブに擦り寄っているのは、ガートルード・ハーレック(がーとるーど・はーれっく)だった。
 ただしいつものようなスーツ姿ではなく、今日はバニーガールだ。
「何処か行くなら私も連れていってよ、ねぇ?」
 腕に抱きついて胸を押しつけながら、上目遣いにトライブを誘惑している。
 トライブはといえば、ふっと気障に笑って手を差し伸べていた。
「ああ、勿論だお嬢ちゃん。今から行くところは少しばかり危険だが、守ってやろうじゃないか。
「ホント!? うふふ、頼りになるのね。好きになっちゃいそう」
 そう言ってウィンクするガートルードに、トライブはでれた笑みを浮かべる。
「トライブ、軽率なまねは……」
「いいじゃないの、お兄さんがいいって言ってるんだからぁ。ねぇ、トライブさん?」
「ああ、そうだな。お嬢ちゃん一人くらいで困る俺じゃないさ」
 朱鷺の制止もガートルードの色仕掛けに負けたトライブには効き目がない。
「……何だかんだ言って、同行者が増えちゃったねぇ」
 舞羽が苦笑しながら苦い顔をする朱鷺の方を叩いた。
「――お困りだね、乙女」
 そんなときたちの前へ蹄の音を響かせ、白馬に乗ってやってきたのは遠鳴 真希(とおなり・まき)
 颯爽と馬から降り立ち、まっすぐに朱鷺の元へひざまずくと薔薇を差し出す。
「僕が乙女の力になろう」
「……はぁ」
 気圧されて受け取った朱鷺に爽やかに微笑んでみせるが、裾をケテル・マルクト(けてる・まるくと)に支えられているせいか今一つ格好がつかない。
 それを意に介したふうもなくさっと立ちあがると、すかさずケテルが胸元に薔薇をさす。
「はい、真希さぁん、新しい薔薇ですよぉ」
「ありがとう、書の乙女」
「いいえー、それよりもみなさん真希さんの助けを待っていますよぉ」
 早くいきましょう、と微笑むケテルに真希は強く頷く。
「そうだな、僕は乙女の力にならなければならない」
 そしてその『乙女』の元へ真っ先に向かうと、胸元に手を当てて一礼する。
「待たせてしまったね、僕の乙女!」
「へっ?」
「僕が乙女の元に駆け付けるまで無事でいてくれるか……気が気ではなかったよ!」
 間に合ってよかった、と乙女――愛美に顔を近づけると、にっこりと微笑んで見せた。
「これからは僕が乙女の力になろう。共に行かせてくれるね?」
「ついてきたいんだったら止めないわよ。活躍の場は譲らないけどね!」
「ああ、流石心優しい乙女! 僕が華麗に乙女を護ってみせるよ」
「きゃぁ!かっこいいですよぉ!!」
「茶化さないでくれ、書の乙女……。僕は本気なんだ。誓いの口付けでそれを示そう……」
「は?」
 真希が恭しく愛美の頬に口付けようとした、その時。
「やりすぎですよぉ、真希さぁん」
 裾をつかんでいたケテルが、後ろから真希を羽交い絞めにした。
「な」
 途端、真希は顔を真っ赤に染める。むぎゅう、と背中に押し付けられるやわらかな感触。
 薄い布越しのケテルの胸の感触に、真希の意識がふうっと遠のいていく。
「あ、あらぁ?」
 ぐらりとバランスを崩した真希の身体が愛美の方へ倒れ込むのを、横から伸びた手が止めた。
「はい、すとーっぷ」
「何やってんの、もう」
 真希の身体を引き離すように支えながら、朝野 未沙(あさの・みさ)が制止をかけた。
「だめよー、マナ? あたし以外に簡単に触らせちゃ」
 ねっ、と微笑む未沙の様子は、いつもとどこか違っている。
 未沙もまた魔女の服に影響されてしまったということは、百合園学園のその制服を見ればすぐにわかった。
「ま、まなみん? 早く魔女のところに行きましょ……」
「そんなことより〜、あ・た・し・と、気持ちいいことしましょ?」
 うふふっとかわいらしく笑いながら、未沙は小首を傾げて抱きつこうとしてくる。
 愛美の腕を引いて一歩引かせながら、ミルディアたちは先を急がせる。
「まなみん! ほら、早く!」
「そうだよマナ! みんな困ってるから、ね!」
「え、ええ……」
「ちょっと〜! 待ちなさいよ!」
「ヒャッハー!! 見つけたぜ! マリエル〜!!」
 先を急ごうとすれば未沙に引きとめられる。それを繰り返していると、後ろから奇声とともに南 鮪(みなみ・まぐろ)が追ってきた。
「このスパイクとモヒカンを身につけてくれ! いや、つけさせるから脱いでくれ!!」
「ひっ」
 街中でそんなことを叫びながら走ってくる鮪に怯えたように喉を鳴らしたマリエルは、すぐに愛美やミルディアの腕を引いて走り出す。
「マナっ、みんなっ、い、行こっ!!」
「ちょっ」
「マリエルさん!?」
 秋日子や真奈たちの制止の声を振り切るようにマリエルは魔女の尖塔に向かう。
 慌てて後を追いながら軽く後ろを振り返った翡翠たちは、こっそり内心でため息をついた。
「あんなのに付きまとわれては逃げたくなる気持ちもわかりますがね」
「……難儀な道中ですね」
 ウィングは苦笑しながら、愛美やマリエルが無茶をしないように足を急がせるのだった。

「――悪くねえじゃねぇか」
 煙草をふかしながら白衣をまとったパートナーを見やった瀬戸鳥 海已(せとちょう・かいい)は、ついでだと言って眼鏡を差し出した。
「似非保健医みたいで似合うぜ鈴倉」
「似非、とはまた結構な言い草だな副会長?」
「ああ?」
「まぁ、いいさ。早く装備を選ぶといい。可愛い子たちが俺の助けを待ってるからな」
 途端きらきらとしたオーラを纏って黒い薔薇を片手に微笑む鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)に訝りながら、海已は執事服を手に取った。
 黒一色でシックなそれを気に入ったとばかりに眺め、虚雲を待たせると試着するといってその場を離れた。
「ただ待っているのも暇なものだな」
 しばらくはぼんやりと通りを眺めていた虚雲だったが、前方で女子生徒が転んだ瞬間無意識に動いていた。
 少女を助け起こし、顔をそっと覗き込むと優しい声音で安否を問う。
「大丈夫か?」
「え、はい……」
「どこか痛いところは? って、膝を擦りむいてるじゃないか。手当をしないとな」
「えっ、だ、大丈夫です! それくらい!」
「遠慮しなくていい。さぁ、俺と二人で保健室に行こう」
「――何をやってらっしゃるのですか。鈴倉様?」
「……副会長?」
「馬鹿なことをしていないで、さっさと小谷様たちを助けに参りますよ」
 そう言って虚雲の襟首を掴むと、少女にそっと微笑みかける。
「おかしな真似をして申し訳ありません。大丈夫ですか?」
「は、はい!」
「それならよかった。介抱もせずに申し訳ないのですが、先を急ぎますので……」
 大丈夫です! とかすかに頬を染めた少女にまた微笑みを返すと、虚雲を引きずったままで背を向けた。
「そろそろ離してくれないか副会長」
「馬鹿な真似をしないで小谷様の元に行くと誓うなら」
「わかったから引きずらないでくれ」
「かしこまりました」
 頷いた海已は虚雲からぱっと手を離して、振り返ると笑ってみせた。
「それじゃあ、行きますよ」
「へいへい」
「今から行けば尖塔につく前に合流できるでしょう。急ぎますよ」
 そう言って二人も愛美たちが行ったであろう尖塔へ向かうのだった。

「セスー、次はあの店行きたいにゃん」
 猫耳パーカーを羽織ったヤジロ アイリ(やじろ・あいり)は、パートナーであるセス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)に擦り寄った。
「で、でも、アイリ……マリエルさんが待ってますので」
「えー…あと一軒〜」
「しょ、しょうがありませんね……一軒だけですよ」
 苦笑いで妥協したセスがアイリを率いて店へと足を向けた瞬間。
 ――バシンッ!!!
 と空を切り裂いた鞭がアイリの側の地面を抉った。
「にゃっ!」
「猫の餌などどうでもよくてよ」
 冷たい声でそう切り捨てたのはネイジャス・ジャスティー(ねいじゃす・じゃすてぃー)だった。
「それよりも早く魔女のいるという尖塔に行きますわよ」
 ふふっと不敵に笑って見せながら、鞭でアイリを絡め取るとずるずると引っ張っていく。
「ね、ネイジャス……その扱いはあんまりでは……」
「あらセス、甘やかしたら為にならなくてよ」
 ちろりと向けられた一瞥はまるで氷のよう。セスは頬を引きつらせてこくこくと頷く。
 今のネイジャスには逆らわないのが無難だと本能が告げている。
 ネイジャスはおとなしくなったセスに満足そうに笑いながら、踵を返すのだった。
「ほほほほ! 待ってなさいなモンスター共! 私の鞭で調教し直してあげますわ!」

「皐月、他に欲しいものはないかい?」
 神代 師走(かみしろ・しわす)日比谷 皐月(ひびや・さつき)に飲み物を手渡しながら、優しい声でそう問うた。
「大丈夫だよ、師走。そんなに気を遣わないで」
「いやぁ、気を遣ってるつもりはなんだけどね。どうもその格好を見てるとね」
 そう、今の皐月はとてもかわいらしい男の娘。
 ちぎのたくらみを使用して幼児化し、おまけにスモックとスカートとロングヘアのウィッグ。
 胸パッドまで入れるという念の入れようだ。
「すっかり可愛くなっちゃってまァ……」
(可愛いのはいいが……このままでいいわけではあるまい)
 頭を撫でながら目を細める師走を見てか、皐月にルーシュチャ・イクエイション(るーしゅちゃ・いくえいしょん)が語りかけてくる。
「うん……」
(まさかあやつ、そのままで良いと思ってはいないだろうな)
「まさか」
「うん? どうした皐月?」
「うん……えっとね」
 皐月は戸惑ったように頷くと、ルーシュチャの言葉をそのまま伝えた。
 このままではいけないこと、愛美たちが元に戻すために魔女の住む尖塔に行っていること。
 自分たちも行って直してもらうべきであること。
「だからさ、師走。一緒に魔女のところに行こう?」
 ふにゃ、と笑いながら小首を傾げた皐月を見て、師走はまた目を細めて頷いた。
「そうだねぇ。やっぱりいつもの皐月が一番だしね」
「よかった、じゃあ」
「だけど、流石にこの姿の皐月を連れていくわけにはいかないからね。待っといておくれ」
「へっ」
 言うが早いか師走は、皐月の頭をひと撫ですると踵を返して行ってしまった。
「いっちゃった……」
(何を呆けている。往くぞ)
「え、あ、そうだね」
(……まったく仕方の無い奴だ。彼奴一人ではどうにも心配だ)
「うーん、でも、僕が行っても出来ることあるかな」
(何を案じておる。姿と性格が変わろうとも、戦闘能力までは変わらん。彼奴より余程戦える)
 だから、と促すルーシュチャに頷いて、皐月は師走の向かった方に足を急がせた。
「どうしてこうなった」
 高村 朗(たかむら・あきら)は辺りを見回して、盛大なため息をついた。
 周りのみんなは執事やビキニアーマーやメイドや女王様エトセトラエトセトラ……
 魅力的な姿になっているというのに。自分のパートナーときたら。
「オウ! 朗サン、出発すっぞ!!」
 意気揚々と改造単車を押しながら、ルーナ・ウォレス(るーな・うぉれす)は朗を振り返った。
 出発はちなみに「しゅっぱつ」ではなく「デッパツ」と読むのが正式である。
「ええと、ルーナ……本当に行くのか?」
「何言ってんだ? 行くっかねーだろ?」
 早く乗れよ! とシートを叩いて促すルーナに、朗はまたため息をついて渋々便乗する。
「っしゃー!! 飛ばすぜー!!」
 そして単車は唸りをあげて魔女の元へと突進していく。