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【2020年七夕】サルヴィン川を渡れ!?

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【2020年七夕】サルヴィン川を渡れ!?

リアクション


4章


「まさか羊羹が釣れるとは思わなかったぞ。なかなか面白い……74点だな」
「なんでやネーん☆」
 サルヴィン川に夕食の調達――つまり釣り――に来ていた二色 峯景(ふたしき・ふよう)は釣り針に羊羹が刺さっているのを見てそんな感想が口を着いて出てきた。
 その言葉に反応したエリシア・ブレイロック(えりしあ・ぶれいろっく)は、チャンス到来とばかりに最近練習していた棒読みツッコミをするべく、水平チョップを腹部に入れようとする。
「待ちなさい。勢い良くする水平チョップはツッコミとはちがいますよ?」
 アレグロ・アルフェンリーテ(あれぐろ・あるふぇんりーて)によってせっかくの機会を失くしたエリシアは頬を膨らませて文句を言う。
「せっかくのツッコミチャンスだったのに、どうして止めるんだよ」
「だからといって主に試さないでください。大体、貴女の力は並外れているのですから」
 エリシアに対してお説教をしようとしたアレグロだったがそれは叶わなかった。
「それにしても今日は何か面白いことが起きてるな。今度は人が流れてきたぞ」
 峯景の言葉に即座に反応し、状況確認をするアレグロ。
 そこには確かに二人の姿が確認できた。
 その後ろには守護天使が低空飛行をしながら追いかけているようだ。
「ブレイロックは流されている人の救出、アルフェンリーテは治療の準備だ」
 峯景からの指示に即座に反応したアレグロとエリシア。
 エリシアはすぐに川に飛び込み、二人を掴むと岸まで引き上げた。
 引き上げられた二人の内、意識が飛びかけていたカセイノは、アレグロからヒールをかけられ、むせながらも立ち上がる。
 そこにマリエルも到着して、とりあえず簡潔に自己紹介をそれぞれ行った後、何が起きてるのかを説明する三人だった。
「つまり、アルタイルによって織姫に変えられた奴等を助けに行く途中だったわけだ」
「そんなところだな。妨害する奴等もいるから簡単にはいかねぇんだわ」
「ホント凄かったよ! だって、いろんなもの飛んでくるんだから」
「今生きてるのが不思議なぐらいだよぉ」
 峯景のまとめにカセイノがため息をつきなが述べ、莱菜が笑いながら同意する。マリエルは呟きながら遠い目をしていた。
 思い返してみても、まさにあの空間は混沌と化していたのだから仕方がない。
 最後の呟きにアレグロとエリシアは哀れみの視線を向けつつ詳しく聞こうとはしなかった。
 ――もちろん、聞いてはいけないとどこか悟っていたからなのだが。
「よし、なら迂回して中州に向かうか。ブレイロック、引っ張って行けるか?」
「一度には無理だけど大丈夫だぜ! あたしに任せとけ!」
「では早速向かいましょうか。あまり時間もなさそうですし」



「やっと、中州にまで、たどり着きましたか……」
 息も絶え絶えな様の桃花だったが、他のメンバーも似たようなものだった。
「よくここまでたどり着きましたね。ですが……ここからは簡単には通しませんよ?」
 疲労困憊のメンバーの前に立ちふさがった朔は、しびれ粉を使用し自由を奪う。
 さらにアボミネーションを発動して黒薔薇の銃を向ける。
 二つの効果により、さらに体が言う事をきかなくなったものの、まだ抵抗する意識はあった。
 そのことを確認した朔は口元に弧をえがきながら、相手を挑発するように言葉を発する。
「私を恐れ、体も満足に動けないのに、それでも立ち向かうのか?」
「……無論、だ。誓いを、立て、たその、日、から、守る、と宣言した、のだ……それ、を、こんなところ、で破れる、わけが――あってよいはずがなかろう……!!」
「確か、に、辛い、さ。でもな、今尚、無理や、り機織、させられてる、ミュウは、もっと、辛いんだ……ミュウが――女の子が、助けを待って、んのに、立ち上がらない、なんて、――そんなの、漢じゃねぇだろうが……!!」 
「この先には……郁乃様が、待って、おら、れ、ます。ならば、立ち向かわ、ない、などと、いった、選択肢な、ど、元より、ございません。大切な、人を助ける、ためにも――ここは通させていただきます……!!」
 
 アインと和希、桃花の言葉に続くようにそれぞれ立ち上がり、前を見据える。
 口を挟まずに見ていた朔は目を瞑り、すぐに開くと横にそれた。
「なるほど……言葉だけなら何とでもいえます。――よって、偽りがないか証明して見せてください」
「元よりそのつもりだ……その目にしかと焼き付けるがいい」
 そして織姫たちの下へ向かう後ろ姿を見送りながら息をついた朔は、アルタイル達がいるであろう場所に顔を向けながら呟く。
「この様子ならセリスの試練も乗り越えるだろう。――あとは、アルタイル……か」



「まったく、不甲斐無いですわね! このままではあの女たちの下へたどり着いてしまうではありませんの!」
「お嬢様、そんな怒ったらあきません。えらいベッピンさんやのに、もったいないで? ほら、紅茶でも飲んで落ち着き?」
 彦星たちが中州に着いたのを確認したアルタイルは怒り一色。
 今にも飛び出して行きそうなアルタイルを落ち着けるべく、容姿を褒めつつもさりげなく紅茶まで用意して引きとどめる社だった。
 と、そこに少しだけ別行動をしていたるるが戻ってくる。
「そうそう、そんな顔してたら彦星さんに嫌われちゃうよ? ねぇねぇ、るるにも紅茶ちょうだい?」
「少し待っとってな? 一応砂糖も付けといたるわ」
 そうして受け取ったのだが……
「あっ……ごめんなさい、カップ落としちゃった……」
 そのまま逆さになって流れていた風鈴の中にカップを落としてしまう。
「ああ、気にせぇへんでええで、カップの一つや二つ。それより、こぼしたときに、るるちゃんにかかってないかのほうが大問題や」
「るるは平気だったよ。心配してくれてありがとう!」
「そんなんあたりまえや。……カップは誰かに見つけてもらうことを祈っとこか」
 そのまま下流に顔を向けた後、るるの方に振り向くと、るるはしっかりと頷いてみせた。
「うん、気づいてくれる人がいるといいね」



「うん? あれはたしか……社さんのカップ? ――準備はできた、か」
 るるがわざと落としたカップに気がついた陽一は、美由子に連絡を入れる。
「社さんたちからの合図があったぞ。そろそろ閉幕だ」
「分かったわ。あとはこっちに任せて!」
「いや、元から任せっぱなしなんだが……まぁいい。頼んだぞ」
 そして役目を終えた陽一は一人呟く――
「俺は、一体いつまで動けないんだろうか……」



「お兄ちゃんから連絡があったわ。どうやら準備できたみたいよ」
「了解した。――正悟、任せた」
「分かったよ。じゃあ、アルタイルさん攫ってくるね」
陽一から連絡を受けた美由子の報告に、マクシベリスは正悟に言葉短く行くように伝える。
 正悟もすぐに気づいて、アルタイルのもとへ向かっていった。
「あとはセリスの作戦を残すのみ、か」



「アルタイルさん、織姫さんたちの所へ行きましょう!」
 そう告げた直後、正悟はアルタイルを抱えて走り出す。
「なっ……下ろしなさい! 私に触れていいのは彦星様だけですわ! いきなりなんなんですの!?」
 そんなアルタイルの言葉に耳を傾けることもなく、正悟は爆走していく。
「さて、お嬢様が向かってしもた以上、俺らも向わなあかんなぁ」
「でも歩いていこうね? るる、あんな速く走れないよ……」
「まったくや。……さて、どうなるんやろな?」