リアクション
◇ 混戦が繰り広げられている中心部で、小さな呟きが繰り返される。 「モヒカンは壊していい。……モヒカンは壊していい」 ブラックコートを身に纏った斎藤 ハツネ(さいとう・はつね)は、何度も『破壊対象』を呟きながら気配を隠して戦場を駆ける。 ならず者達の背後を取ると玩具を貰った子供のように笑いながら背中にダガーを突き立てた。 周りのならず者達が無闇に振り回す血煙爪や、ショットガンの流れ弾で負傷していても、敵を倒すことに夢中で怪我を気にしている様子は無い。 刺したダガーを笑顔で抉るハツネにエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が、 「素敵なお嬢さん、貴女の玉の肌に傷がついては大変だ」 と一輪の花を差し出しつつヒールをかける。傷の治癒にも花にも、さして興味を示さずにハツネはエースの顔をまじまじと見つめる。 「……えっと?」 「モヒカンじゃないから、壊さないの」 ハツネはそれだけ言うと、ダガーを握りなおして新しい敵を求めて去っていった。 (……モヒカンだったら、どうなっていたんだろう) よく判らない所で命拾いをした気分になっているエースの隣で、明るい声が響く。 「ほらほらー! 危ないよっ」 「マジで危ねぇっ!」 逃げ惑うならず者達を追い立てるように、クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)が機関銃を乱射している。 敵にも見方にも分け隔てなく最小の被害で済むように、警告を発しながらの発砲。 更に、出来るだけ集団になっている敵を分散できるように、固まって動いている敵に銃口を向けていく。 そんなクマラの考えを知ってか知らずか、大石 鍬次郎(おおいし・くわじろう)はハツネのすぐ傍らで、ならず者達を背後から斬り飛ばしながら、うっすらと笑みをこぼす。 「ククク……楽しいねぇ、愉快だねぇ」 刀にこびり付いた血を合間に払いながら、敵の間を縫うように奇襲を重ねていく。 「楽しそうなのは構わんが……数が多いな」 敵の隙を付いて攻撃しているハツネと鍬次郎に向かって射撃を仕掛けようとしている敵を狙撃していた東郷 新兵衛(とうごう・しんべえ)が一人ごちた。 狙撃対象が多いので打ち抜くのは楽だが、中心部で戦っている仲間達の傷も増えていく。 ◇ 「何だこりゃ……」 ツァンダから一足速く村の上空へと駆けつけたトライブ・ロックスター(とらいぶ・ろっくすたー)が見たのは、負傷した仲間と暴れまわるならず者達だった。 手早くレッサーワイバーンで上空を旋回しながら、ならず者達のリーダーを探し出す。 (アレか……?) ならず者達の中でも一際モヒカンが大きく、中心部で暴れているリーダーらしき人物に目星を付けると、トライブはレッサーワイバーンから飛び降りた。 「誰だてべぶぅば!」 着地と同時に、目を見開くならず者の顔面を殴りつけながら開いた手で刀を抜く。更に、突然振ってきたトライブに反応が遅れている周囲の敵に向かって音速を超えた斬撃を叩きつける。 上空から当たりを付けていたリーダーらしき敵に向かって駆け出そうとした瞬間に、森の方から悲鳴が聞こえた。 そのまま敵のリーダーを叩こうと考えていたのだが、思考より先に身体が動く。 駆けつけた先ではアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)が、光を失いかけている光条兵器を手に、ならず者達に立ち向かっていた。 肩で息をしながらも接近する敵に剣を振るアリアを、ならず者達が弄んでいる。 「……まだ、負けないっ」 「ほぉ? ハハッ! 膝が笑ってるぜぇ」 疲弊したアリアをならず者が蹴り飛ばし、既に抵抗する力が残っていないアリアの頭を地面に押さえつけて冷たい笑いを浮かべた。 手にした血煙爪を器用に使ってアリアのローブを切り裂いていく。そして、露になった腹部に向かって手を伸ばす。 「はぁ、はぁ……んっ、や、やめて……いやああああ!」 悲壮な悲鳴が、村に響き渡った。その時―― |
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