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第3章 着せ替え魔人の恐怖story1

「鴉っていつも似た服ばかり着ているわよね。私たちでイメチェンさせてあげない?」
 ユベール トゥーナ(ゆべーる・とぅーな)は本人の意思をガン無視して、パートナーたちと話を進める。
「そうですわねぇ。実は・・・衣装を持ってきたんですの」
 それに便乗してアグリ・アイフェス(あぐり・あいふぇす)夜月 鴉(やづき・からす)を着せ替えようと企む。
「ワタシも・・・」
 カバンに詰めた青色のパーカーを白羽 凪(しろばね・なぎ)が2人に見せる。
「それじゃあ、とりあえず・・・」
「実行しますわよ」
「うん・・・」
「(悪く思わないでね。これも鴉のためなの)」
 周囲に騒ぎ声が聞こえないようにユベールは背後から鴉の口をハンカチで塞ぐ。
「ふぐぅうほぉお!?(訳:何をするんだ!?)」
「ワタシが胴体を持ちますわ、凪は足をお願いします」
「―・・・分かった」
 まるで捕らえた生贄を祭壇へ運ぶように鴉を更衣室へ拉致する。
 ロリオを助けに来たはずが、パートナーたちの餌食になってしまう。
「トゥーナたち・・・俺をこんなところへ連れてきてどうするつもりだ!」
「鴉を着替えさせるに決まっているじゃないの。今更恥ずかしがることはないでしょ」
 さも当然のようにユベールが言い放つ。
「まず、わたしが持ってきたペンギンの着ぐるみを着てみなさいよ。いつも同じような服ばかり着ていないで、たまにはイメチェンしたらどう?」
「いえ・・・、ワタシが先に・・・」
「何言っているんですの、ワタシの黒のベストが一番ですわ。特にトゥーナのそれ、なんですの。鴉にカミングアウトでもさせる気?」
「ワタシの青色のパーカーの方が・・・」
「この着ぐるみが先よ!鴉もそう思わない!?」
 鴉に勧めようとする凪を押し退け、ユベールはズィッと前へ出て彼の傍へ近寄る。
「―・・・どれが先でも対して変わらなくないか?」
 彼の適当な発言が、もめだした状況をガソリンに引火させるように悪化させる。
「だったら私が持ってきた着ぐるみを着てっ!」
「プッ、何ですのそれ。どこかの遊園地で鴉をアルバイトでもさせる気ですの?センスの欠片もありませんわね」
 口元に片手を当ててアグリはクスクスと小ばかにしたように笑う。
「なっ!?何よ、そっちこそ普通すぎるんじゃないの。つまらなさすぎるわね」
「普通じゃないのも、斬新でいいかも・・・」
 それも一種のファッションに入るかもと凪がこくこくと頷く。
「必要以上に目立ってどうするんですの?」
「確かに・・・普通の方が無難っていうことも・・・」
「思い切ってイメチェンさせるのに、何でどこでもあるような普通の格好をさせるのよ」
「んまぁっ。着ぐるみを着せようとする方がおかしいんじゃありません!?そんなのを着て学校へ登校させるなんて、いい恥さらしもいいところですわ」
「2人とも・・・喧嘩は、や・・・、やめよう・・・ね?」
 ぎゃぁぎゃぁと言い合いをする2人を止めようと凪はあたふたしだす。
「あんなファッションセンスゼロのやつより、私のベストを着てみてくださらない?」
「いいえ、私が先よ!」
「分かった、分かったから・・・3つとも着るから喧嘩するな」
「ではワタシが着せ替えさせてあげますわ」
「フフッ、ここは私がっ」
「ワタシも・・・」
「トゥーナが着せ替えさせると、必要のないところまで服を脱がしそうですわ。ワタシが脱がせて着せてあげますわ♪」
「それどういう意味!?」
「聞いての通りですわ」
 今度は誰が着せるかでもめてしまう。
「3人で協力してという手が・・・」
「いいですわねそれ。そうしましょう♪」
「この際、仕方ないわね」
 ボソッという凪の提案にアグリとユベールが乗っかる。
「さ、3人!?いや、ちょっと待て・・・くるなぁあっ」
 更衣室のスミスへじりじりと追い詰められる鴉が恥ずかしさのあまり、彼女たちをドンッと突き飛ばす。
「俺が自分で着る・・・。こっち見るなよ!」
 3人に後ろを向かせてアグリが用意したベストを着てみる。
「まぁまぁだな。次はこっちのを着てみるか」
 ベストを脱いで凪が持ってきたパーカーを試着する。
「こういうのを着るのもいいな。えっと次はトゥーナのか」
 気に入った様子でパーカーを脱ぎ、最後にペンギンの着ぐるみを着た。
「―・・・これを俺に着せて登校させようっていうのか?町を歩くだけでも変な目で見られるじゃないかっ」
 怒りのまり着ぐるみをベシッと床へ叩きつけるように脱ぎ捨てて学園へ帰ってしまう。
「ぇえ、似合うと思うのに」
 ユベールは無残に捨てられた着ぐるみを拾って彼の後を追いかける。
 それを見たアグリと凪は捨てられて当然と心の中で呟き、2人も鴉の後を追うように学園へ戻る。



「天使の服がありますよ、着てみませんか?」
 ベネデッタ・カルリーニ(べねでった・かるりーに)は衣装部屋から見つけた服を、リタ・ピサンリ(りた・ぴさんり)に着て欲しいと頼む。
「え、着替えるの!?」
 ニコニコと微笑みながら歩み寄る彼女に、ずりっと後退りをする。
「でも、誰か見ているかもしれないし・・・」
「ドアを閉めれば大丈夫ですよ。可愛い服を着たリタを見たいんです。私のお願い、聞いてくれませんか?」
「うーん、どうしようかな。(やばいよ!今ここで服を脱いだら夕べ寝る前に穿きかえたパンツの柄と違うって分かって、おねしょした事がばれちゃうじゃないの)」
 おねしょがばれないように、着てあげようか考え込むフリをする。

 -リタの脳内会議-
善のリタ
「隠しているとばれた後が怖いよ、今白状しちゃおうよ!」
悪のリタ
「何言っているの、そんなの抱きついてごまかしちゃえばいいよ」
善のリタ
「いけないよそんなの!大好きなベネデッタを欺くようなことしちゃいけないっ」
悪のリタ
「お仕置きが怖いなら黙っていよう♪」
善のリタ
「ベネデッタのイメージするリタじゃなくなっちゃうよ」
悪のリタ
「たまにはリタだって小悪魔になるんだもん」
本体のリタ
「リタ、黙ってる!お仕置きやだよぉ」
善のリタ
「いけないよそんなの」
悪のリタ
「フフフッ、悪のリタの勝ち〜。善のリタは出ていって♪」
善のリタ
「きゃぁああぁっ」
 善のリタは悪のリタによって追い出されてしまった。
 -脳内会議終了-

「着てあげる♪」
「嬉しいです、リタ!着替えさせてあげますね」
 可愛いリタを見たいがために、うきうき気分で白い羽のついた服に着せ替えさせる。
「とても似合ってますよ、リタ。私の可愛い天使」
 ぎゅっと天使のようなリタを抱き締める。
「ベネデッタ大好き!」
「私もですよ・・・。―・・・」
 抱きつくリタの頭をひとしきり撫でた後、ベネデッタは表情を一変させる。
 左手で脇に抱え上げ、眉を吊り上げる。
「えっ?」
「ではそろそろお仕置きを始めましょうか。粗相しただけでなく、こっそりパンツを穿きかえて済まそうだなんて。100回では済みませんね。覚悟しなさい」
「いや!お仕置きはいやーーー!いたーい!ごめんなさーい!もうおねしょしない、隠したりしないからーー!」
「いいえ、許しませんっ」
 暴れるリタを抑えつけ、彼女のお尻を平手で何度もパシィインッと叩く。
「(なんて弾力に富んだお尻・・・、か・・・)」
 その先の心の呟きはカットされ、“しばらくお待ちください”という花畑の映像が流れる。
「これに懲りたら、隠したりしないでくださいね!」
「うぅ、分かったぁ。ぐすんっ」
 真っ赤に腫れた痛む尻をさすりながら、リタは涙声で謝った。