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輝く夜と鍋とあなたと

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輝く夜と鍋とあなたと
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「要はオッケーって言ってくれたし……これってお鍋デートだよね!? デートって……きゃ〜♪」
 東雲 秋日子(しののめ・あきひこ)が自分の部屋で百面相しながら洋服を選んでいるのを見てしまった者がいた。
(要さん!? お鍋デート!?)
 奈月 真尋(なつき・まひろ)は慌てて辺りを見回し、空京で配られていたチラシを発見した。
(そっだらこと……させねぇですよ!)
 真尋はすぐに遊馬 シズ(あすま・しず)にメールを送ったのだった。

 夕方の空京広場前。
「……あの、2人とも呼んでないよね? えっと……なんでいるの?」
 秋日子は待ち合わせ場所にいた真尋とシズを見て、口をぱくぱくさせている。
「みんなで鍋って聞いたんだが……真尋サンから」
(どうやらデートだったみたいだな……スマン、秋日子サン)
 シズの言葉を聞き、秋日子は真尋をちょっとだけうらめしそうな目で見る。
 真尋は目を合わせない。
「みなさんで食べたほうがきっと美味しいですよね!」
 要・ハーヴェンス(かなめ・はーべんす)の言葉に秋日子はうなだれた。
「……あれ、秋日子くん……なんだか少し顔色悪くなってませんか? もしかして、気分でも悪いんですか!?」
「いや……そうだよね……みんなで食べる方が美味しいよね……ふふ……気にしないで……」
 心配して要は声を掛けたが、デートだと思ってふわふわしていた心が一気に叩き落とされたのだからちょっと立ち直れない。
「さ、鍋が待ってますよ!」
 さあ、さあ、と真尋は秋日子の腕をつかみ、広場の中に入って行くのだった。

「ちょっと、待ち!! その肉はまだ味が染みてねぇはずですよ!! 勝手なことしねーでください」
 カマクラの中では水炊きを囲んで楽しく鍋……なのだが、鍋奉行が目を光らせていた。
「あ、すみません」
 みんなによそってあげようとしていた要だったが、真尋の言葉に菜箸を引っ込めた。
「特に、鶏肉なんですから、しっかり火を通さねぇとですよ! ああ、こっちの春菊はもう食べても大丈夫です」
 そう言うと、真尋は全員の器に春菊を入れて行く。
「これも大丈夫だよな」
「ダメです!!」
 シズは葛きりに手を伸ばそうとしたが、真尋に止められてしまった。
「葛きりは最後の方で味がしみしみになったところを頂くんですよ!」
「別に食べる順番なんかどうでもいいんじゃないか? ……なんでそんなに睨むんだよ。俺、なんか変なこと言ったか…?」
 じっとりと真尋に睨まれ、シズはたじたじになってしまった。
「秋日子くんはどれが食べたいですか?」
「私は……」
「そこっ! 要さん! 勝手に秋日子さんに近づくのは禁止ですよ!」
 ちょっと話しかけただけなのだが、真尋に会話すらさせてもらえない。
 鍋奉行強しっ!
「あ、お肉は今が食べごろです! 今、取らねぇと硬くなっちゃうのですよ!」
 おりゃーっという掛け声が聞こえて来そうな雰囲気で真尋は4人の器に鶏肉を均等に入れていく。
「あ、ほんとだ……柔らかいのにしっかり味が染みてるし、美味しい」
「正しい鍋は、いつもより美味しいんですよ」
 秋日子の言葉を聞き、嬉しいようだ。
(デートの予定だったけど……これはこれで楽しいからいっか)
 秋日子は3人がわいわいしているのを見て、そう思ったのだった。

 帰り道は皆でぶらぶらとゆっくり歩いている。
 月と星がよく見え、自然と足がゆっくりになるのだ。
「今日は楽しかったですね。大勢で賑やかなのも楽しいですけど、今度は2人だけでのんびりするのもいいかもしれませんね。秋日子くん、どうですか?」
「えっ……!?」
(それって、それって……デートのお誘いだよね!!!)
「要さん! ウチの目が黒いうちは、秋日子さんとふたりっきりデートだなんてぜってぇさせねぇですよ!!」
 鍋が終わって少し大人しくなっていた真尋が復活した。
「えっ……あ、そっか……デートになっちゃいますね」
(……わかってたけどさ……やっぱりデートって認識じゃなかったんだね……うぅ)
 要の言葉にちょっとだけ落ち込んだ秋日子。
(秋日子サン……ファイト)
 心の声が聞こえてくるようで、シズは思わず応援したのだった。