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【ぺいゆさんイラスト500枚突破記念】夢のぺいゆ王国

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【ぺいゆさんイラスト500枚突破記念】夢のぺいゆ王国

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第三章


ミカエラの悲鳴が響いた頃。
お城の上階まで訪れて眺望を楽しんでいたのはニーナ・フェアリーテイルズ(にーな・ふぇありーているず)たちでした。
「いい眺め〜! リッシュ、見える?」
リッシュ・アーク(りっしゅ・あーく)を振り返ったニーナは、むっとしているリッシュを見て顔をほころばせました。
いつもとは違い自分よりも小さくなってしまったリッシュに、ニーナは上機嫌です。
可愛いかわいいとリッシュを撫でくり回しては抱きつきます。
元々弟や妹がほしいという思いがあるニーナにとって、今のリッシュは存分に可愛がりたい可愛い弟分でした。
「やめろ!」
顔を赤くしてニーナを振りほどきながら、リッシュは大層不満そうでした。
それはそうでしょう、いつかは女性にさせられ、今度はショタっ子になってしまったのです。
可愛いと言われても嬉しいはずもなく、早く戻りたいのにと地団駄を踏むリッシュを、遠巻きに見ていた水橋 エリス(みずばし・えりす)夏候惇・元譲(かこうとん・げんじょう)はえも言われぬ気持ちになっていました。
とはいえ情けなさを感じているわけでも憤っているわけでもなく、言いようのないときめきのようなものを感じていたのです。
「どうして俺がこんな姿に」
と見上げてくるリッシュに口元、というか鼻を押さえながら視線をそらす元譲はいつもと違う様子でした。
エリスも「とんでもないことになりましたわね」と答えながら何処か楽しそうでした。
「あ、みんなもショタになったのー?」
と、明るい声が聞こえて駆け寄ってきたのは鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)でした。
「すごいねー、本当にみんな男の子になっちゃったんだー」
「おい、氷雨、あんまりはしゃぎすぎんなよ」
後ろから追いついてきたらしいベリル・シンブル(べりる・しんぶる)が氷雨を窘めますが、氷雨は気にした風もなくみんなの姿を見てきゃっきゃとはしゃいでいます。
「やっぱりベリルだけ仲間外れみたいだねー」
「いやだから仲間はずれなのはどっちかっていうと」
お前の方だ、と言いかけて氷雨の無言の圧力を感じ、ベリルは「もういいよ」と口を噤みました。
「ねぇねぇところでさ、ぺいゆちゃんのところに行きたいんだけど、何処にいるか知らない?」
「そういえばどちらにいるのでしょう」
「ここぺいゆちゃんのお城なんだし、歩いてれば会えるんじゃないかな?」
ご挨拶がまだでしたね、と首を傾げるエリスに、ニーナが答えます。
「そうだね〜。じゃあ折角だしお城探検しながらぺいゆちゃん探そうよ」
異論はないと氷雨の提案に頷いて、みんなは階下に降りることにしました。
滅多に入ることのない城内を見て、豪奢なつくりや装飾品にきゃっきゃとはしゃぐ氷雨やニーナ達は、また誰かを見つけて駆け寄りました。
活発そうな少年が、真面目そうな少年の手を引いて今にも駆け出しそうに何かを指差しています。
「何してるの〜?」
話しかけると、振り返った少年たちが氷雨たちの元へ駆け寄ってきました。
「かくれんぼ! っていうかぺいゆちゃん探し?」
まざる? と言って笑うのはセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)でした。
手を引かれているのはパートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)です。
「遊んでる途中にぺいゆちゃんどっか行っちゃったんだよね」
それで探してるんだけど、というセレンフィリティから話を聞いた一同は、それなら同行しようと申し出ました。
「さっさと元に戻りたいからな」
リッシュはそう言いながら何処を回ったのか、と尋ねました。
「ええと、さっき中庭と下の階は回ったわ」
セレアナの答えに、元譲がふむ、と顎に手を当てました。
「それなら同じ場所に何度も行くとは考えにくい。回っていない場所を探すか」
「そうですわね」
「でも執務室にこもってるとも思えないからな、とりあえずみんなの集まってる所に行ってみればいいんじゃないか?」
「それじゃさっそく行こっか。折角面白いことになってるんだし楽しまないと損よね!」
「そ、そうね……」
戸惑うセレアナの手を再び引いて歩き出すセレンフィリティも加わって、ぺいゆちゃん探しという名の探検が再開されるのでした。


「ばんなそかな!?」
頓狂な叫び声を上げたのは座頭 桂(ざとう・かつら)でした。
案の定他の面々と同じように縮んでしまった姿に気づき、はあああと肩を落とします。
「いやな予感がするとは思うたけど……こんな姿になるとは」
けれど落ち込む桂とは対照的に九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)は楽しげです。
「いやー桂さんかわいいなぁ〜」
桂を抱っこしながらにこにこと笑うジェライザに、桂は戸惑ったように声を上げます。
「離せ! 女がそう男に抱きつくもんやない!」
「いいからいいから。それより甘いの食べる?」
頬をつんつんとつつきながらお菓子を差し出し、また器用に写真や動画をとりながらジェライザは笑顔を浮かべっぱなしです。
「ええから離せ!」
と身じろぐ桂でしたが、何かに気付いたようにはっと顔をあげました。
「何、」
「離せ、ろぜ!」
何か来る! と緊迫した声を上げた桂に、ジェライザも思わず身を離します。
あたりを見回すと何かが一斉に向かってきます。
お城に来た時から感じていた不穏な気配はこれかと桂は身がまえますが、如何せん普段とは違う体躯です。
リーチや感覚が全く違うため、避けようとしても今一つ思うようにいきません。
しかも攻撃が何一つ通らないのです。
まったくもって無害そうに見えないオヤジムシたちを前に得物を下ろすことも出来ず二人が防戦に徹していると、小柄な影が二人の傍へ走ってきました。
「そいつらに普通の攻撃は効かない、こっちへ!」
そう叫ぶ声が耳に入ると同時に、ジェライザと桂は飛び退って距離を置き、一撃を跳ね返して声のした方に走りました。
二人を誘導するように走る小柄な影の正体は七尾 蒼也(ななお・そうや)です。
「あれは何だ」
逃げながらそう問うと、蒼也は「俺もよくわからないんだけど」と前置いて口を開きました。
「あれはオヤジムシとかいうやつらしい。噛まれた人間が名前通りオヤジになるんだとさ」
自分はパートナーから頼まれて虫退治に来たんだ、と蒼也は言います。
「どうやらみんなが小さくなったときの反動エネルギーだか何だかで生まれたみたいなんだよね」
「やから普通の攻撃が通らへんのか」
「それじゃあどうすればいいんだ?」
ジェライザの問いに蒼也が先を指差します。
「手はあるよ。まずはぺいゆちゃんに会わないとね」