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楽しい休日の奇妙な一時

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楽しい休日の奇妙な一時

リアクション

「……商品券か……」
「ああ、商品券だ」
「ならやるしかあるまい」

 夜月 鴉(やづき・からす)三船 敬一(みふね・けいいち)は目的を確認すると、互いの固く握った拳を突き合わせた。


「えっ、バンドですか?」
『そうだ、面白そうだろう? そういう訳でギターは頼んだ』
「ちょっと待ってギターなんて……って切れてる!?」

 敬一からの電話にルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)が目を丸くする。
 だが、抗議をしようにもすでに通話は切れていた。

「ギターなんて出来るかなぁ……でもちょっと面白そうですねぇ」

 そうつぶやきながらエアギターの真似をするのだった。


「キーボードならやるぜ」
『話が早いな、ならばキーターは任せたぞ』
「楽器なんて久しぶりなんだ、あまり期待するなよ」

 敬一からの電話に佐野 和輝(さの・かずき)は笑いながら答えた。
 どうせ賞品が目当てなのだろうが、こういうのも悪くない。

「ボーカルがまだ決まっていないならスノーにやってもらおう」
『おう、それも任せたぞ』

 突然名前を出されたスノー・クライム(すのー・くらいむ)が驚いて振り返る。

「ええっ、私も参加!? それもボーカル!? ちょ、ちょっと待って!!」

 困惑するスノーにルナ・クリスタリア(るな・くりすたりあ)がグッと親指を立てる。

「恥ずかしいの? なら私と一緒に練習しましょうぉ〜♪ 沢山練習すれば、慣れて恥ずかしさもどこかへ行っちゃうですよぉ〜♪」
「わぁ、面白そう! 応援しているからね♪」

 ルナの言葉にアニス・パラス(あにす・ぱらす)も目をキラキラと輝かせる。
 引くに引けない状況となったスノーがトホホとため息をつくのであった。


「バンド? 良いんじゃない?」
『お、乗り気だな。それで楽器なんだが……』
「三味線」
『え?』
「三味線にしましょうかねぇ」

 敬一からの電話にレティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)が嬉しそうに答える。
 それからミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)を呼ぶと、事情を説明した。

「敬一さんも練習があるだろうし、マネージメントはミスティに任せたら?」
『そうしてもらえると助かるな』
「話は聞きましたわ。それで、まだ残っている作業は……」

 レティシアから電話を代わったミスティが敬一と打ち合わせを始める。
 さて、どうなることか。


 控室への通路で、佐野 悠里(さの・ゆうり)がこっそりと奥の方を伺っていた。
 視線の先に居るのはルーシェリアだ。
 ためらう様な素振りを見せていたが、ルーシェリアが一人になると、意を決して駆け出していた。

「お母さん、あ、あのっ」
「えっ!? お母さんですか?」
「ごめんなさい、えーと、その……」

 戸惑うルーシェリアに謝ると、悠里は改めて事情を説明し始めた。
 未来からやってきたという話、そしてその未来でのルーシェリアの娘ということ。

「そう言われても実感がわかないですぅ……父親を聞いても誰か教えてくれないですしねぇ」

 真剣に聞いていたルーシェリアは、少し悩むと悠里の肩をポンポンと叩いた。

「とりあえずその話が本当なら、住む場所も無いでしょうし、ウチに来るといいですぅ」
「わーい、ありがとうお母さん」
「その呼ばれ方には抵抗があるんですけどねぇ……」


 鴉を筆頭に、バンドのメンバーがステージへ上がる。
 ボーカルがスノーでギターがルーシェリア、ベースは鴉。キーターを和輝が受け持ち、ドラムが敬一だ。
 そして三味線を持ったレティシアが遅れて登場した。
 観客席がどよめくが、あらかじめ知っていたルナとアリスは声援を送っている。
 メンバーが揃い、鴉がそれぞれを紹介していく。

「それじゃあ聞いてくれ、『明後日があるさ ポップ・ミュージックver』だ!」

 鴉の合図に音楽が鳴り、歌が流れていく。
 練習の成果を発揮するスノー、しっかりとした指捌きで弾く鴉。
 明確な音を刻むドラムの敬一に、レティシアの三味線の旋律が調和する。
 ショルダーキーボードを巧みに操る和輝と、背中合わせに弾き続けるルーシェリア。
 会場が一体となって大盛況とも言える賑わいを見せていた。


 その頃、沸いている観客席の隅っこではイヴリン・ランバージャック(いゔりん・らんばーじゃっく)が真剣な表情で買い物をしていた。

「百科事典全十三冊、それとセットの高級歯ブラシお買い上げありがとうございます!」
「こちらこそありがとうございます。あれだけ熱心にオススメするなんて、とても価値があるのでしょう」

 イヴリンは預かっていた敬一の財布からお札を出して、押し売りの男にお金を渡す。
 受け取った男はさわやかな笑顔を残して去っていった。
 ステージでは汗をまき散らしながら敬一がドラムを叩いている。
 賞品の商品券が手に入れば食費が浮く、そんな思いを抱きながら……。



担当マスターより

▼担当マスター

嶋野トッポギ

▼マスターコメント

『楽しい休日の奇妙な一時』に参加していただき、誠にありがとうございました。
この度はリアクションの公開が遅れたことを深くお詫び申し上げます。

こんにちは、こんばんは、おはようございます。
今回、嶋野トッポギマスターの代わりに書かせていただきました、和泉 水晶です。

空京にある広大なショッピングモール。
ゴールデンウィークで賑わうその場所で、ちょっとだけ不思議な出来事が起きたりします。
そんな様子を雰囲気だけでも楽しんでいただけたら、と思います。


個別コメントですが、リアクション公開を優先ということで、泣く泣く断念いたしました。
期待されていた方には本当に申し訳なく思います。

それではこの辺で。また皆様にお会いできる時を楽しみにしております。

▼マスター個別コメント