First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last
リアクション
「そう言えば、そろそろ1年ですよね〜。イグナが機械が苦手なのは、判っていますけれど……そろそろ携帯電話を持って貰えると良いですよね〜」
「む……いや、我には……」
非不未予異無亡病 近遠(ひふみよいむなや・このとお)の提案にイグナ・スプリント(いぐな・すぷりんと)が困惑する。
「アルティアも、イグナさんに携帯電話を持って貰えると……連絡しやすくて良いと思うのでございます」
「なら、ケータイを買いに行けば良いと思いますわ」
「貴公ら……我の意見は、無視なのだよ?」
さらにはアルティア・シールアム(あるてぃあ・しーるあむ)とユーリカ・アスゲージ(ゆーりか・あすげーじ)の援護が加わり、半ば説得される形で携帯電話を買うことになった。
「でも……ここ、空京ですよ? 今から、ツァンダまで行くのは……遠過ぎると思いますけれど?」
「シャンバラのケータイのメッカがツァンダなのは知ってますわ。でも、空京にだって、売ってますわよ?」
空京にある広大なショッピングモールの一角。
無事に登録も終わり、紙袋を携えて携帯ショップから出てきたイグナを迎えたのは、無気力な感じで近遠によりかかる男の子だった。
状況が飲み込めないイグナに、ユーリカが説明をする。
「あたしたちがお店の外でイグナちゃんを待っていたら、急にふらふら〜とやってきて、近遠ちゃんに張り付いてしまったのですわ」
ユーリカの言葉に近遠が横に移動すると、ぼーっとした表情の男の子もそれに合わせて動く。
そして服の裾をきゅっと握る。
「迷子になって心細いのでございましょう。近遠さん、アルティアたちで保護者の方を探すのはだめでございましょうか?」
「そうですね、ほってはおけません。イグナ、電話帳登録は後になりますけどよろしいですか?」
近遠の言葉にイグナは男の子の頭をそっと撫でた。
「弱き者は護らねばならぬ、それが我の本懐なのだよ」
◇
「どうしたの?」
妙にそわそわした常闇 夜月(とこやみ・よづき)の様子に、鬼龍 白羽(きりゅう・しらは)が尋ねた。
鬼龍 黒羽(きりゅう・こくう)が視線の先をたどると、アミューズメントセンターの入り口に設置してあるポップが目に入る。
そこには、あの話題作の続編○○がテスト稼働中、と書いてあった。
見れば夜月がこくこくと頷き、気付いた白羽が苦笑いをしている。
納得した黒羽は、まだ元気の無い笑みを浮かべる鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)の腕を取ると、店の中へと引っ張った。
とある件で落ち込んだままの貴仁は、流されるままに力なくついていく。
「ね、貴仁。新作のテスト期間中だってさ。面白そうだから遊んでみようよ!」
目当てのゲームはすぐに見つかった。
まだ早い時間で店内には人が少なく、いくつか並んでいる台の一つを占有する余裕がある。
黒羽が椅子に座ると、対戦席の向かい側には夜月が座った。
「うわあ、全然勝てないよ」
何度も夜月に挑む黒羽だったが、その度に圧倒的な技量の差を見せつけられて負けていた。
諦めて席から立とうとした黒羽の肩を、柔らかいものが押さえつける。
振り向いた黒羽が見たものは。
「し、師匠!?」
「あきらめたらそこで試合終了にゃ! 勝つまで席を立つことは許さにゃい、修行にゃ!」
無性に可愛い猫の師匠が立っていた。
手にした竹刀をバシンと鳴らす。
悲鳴を上げながらも修行を頑張る黒羽の姿に、貴仁は俺も少しは頑張ってみるかなと思うのだった。
◇
「えーと……」
コスプレのねこ耳やら衣装やらを買うつもりでショッピングモールに訪れた白露 ネユン(はくろ・ねゆん)の前には、三匹の猫が立ちふさがっていた。
しかも無性に可愛いふさふさのペルシャ猫である。
戸惑うネユンがじっと見ていると、三匹がじわじわと距離を詰めてきた。
そしておもむろに肉球をぽふんぽふんと当ててくる。
「か、可愛い……。あれ、ひょっとしてワタシ、襲われてるのかな?」
三匹から次々に肉球を受けるが痛くは無い。
それどころかもふもふとした毛に囲まれて、少しくすぐったい感じがする。
まるで別の世界にいるような気分だった。
「衣装を買わないと……ああでも、この状況は捨てがたいわ……」
全力で意思を買い物へと向かわせるが、肉球がくる度に溶かされていく。
てしてし。
うっとりとした表情のまま、ネユンの時間が過ぎていくのであった。
First Previous |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
Next Last