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魔列車を襲う鉄道強盗

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魔列車を襲う鉄道強盗

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第二章 列車、運転再開

「よし、おめえら準備はできたか!」
 強盗たちは一度引いた後、対策を練っていた。そして、光術対策にフルフェイスヘルメット、雷術対策にはゴム手袋を身につけた。
「よし、再攻撃だ!」
強盗の一団は貨物車に向かい始めた。すると突然、遠方から地鳴りのような音が響いてきた。
「今度はなんだ!?」
強盗が音のする方向を見ると、地平線のかなたに赤い小さな点が見えた。それは、だんだんと大きくなっていった。
「す、すげえスピードで近づいてきてるぞ!」
赤い点は、エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)のパートナー、緋王 輝夜(ひおう・かぐや)だった。輝夜はBlitzschlagに乗り、小型飛空挺の5倍程度のスピードで救援に駆けつけてきたのだ。
「さあ! 出てきな列車強盗ども! あたしがやっつけてやるよ!」
「かしら! どうします。応援が来たようですぜ」
「うーむ、気にするな。所詮一人だ。気にせず攻撃しろ!」
 強盗は貨物車に向かった。それを輝夜が見つけた。
「いたね! 強盗!」
 輝夜はミラージュとドッペルシャドーを使い、多数の幻影を作り出した。そして、不可視のツェアライセンが強盗を襲った。
「ど、どいつだ!? どいつが攻撃してやがる!?」
輝夜は敵を攪乱させながら、列車に近づいた。そして深追いはせず、近づいてくる敵を追い払った。

応援は、地上からだけではない。空からも増援は来ていた。ルカルカ・ルー(るかるか・るー)ダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)である。
「列車が見えた! いくわよ!」
 と、ルカルカは言い、飛行魔法を自分たちにかけて空から飛び降りた。彼らはマントの隠れ身を使い、貨物車の屋根の上に飛び降りた。強盗達は幻影と戦闘中だったこともあり、誰も彼らが到着したことに気付かなかった。彼らは素早く運転席へ向かった。
「いた、運転手さん! 治療しよう!」
運転席には銃撃された運転手が気絶して倒れていた。息は会ったが、かなりの大けがである。
「よし、その間に俺は列車を動かすとしよう。機械は俺の専門分野だ。まあ、任せておけ」
と、ダリルが言った。
「たっのもしーい!」
ダリルは運転席に座った。ダリルは、計器に向かい電脳支配を試みた。
「よし、ここをこうすれば…大丈夫だろう…あっ!」
 ダリルは突然大声をあげた。
「どうしたの?」
「この魔列車、電子機械だけで制御されていないらしい。アナログの機械も使われている。電脳支配でわかるのはデジタルの情報だけだ。アナログの部分は動かせない」
 運転手が気絶している以上、ダリルだけでは列車は動かせなかった。彼らが立ちすくんでいると、運転席の扉がいきなり開いた。
「俺に任せてください」
と、言ったのは御神楽 陽太(みかぐら・ようた)だった。後ろには箒を持ったエリシア・ボック(えりしあ・ぼっく)
がいる。ダリルは陽太に言った。
「任せてくれって、動かせるのか?」
「これを使います」
陽太は『魔列車でGO!』を取り出した。
「これなら魔列車の運転については全てわかります」
そういうと、陽太は運転席についた。
陽太の操作により、列車の機器が動き始めた。
「いけそうです。誰か乗客に列車が動くことを伝えてください。いきなり動いたら危険でしょう」
「よし、俺がやろう」
 ダリルは車掌用のマイクを取った。
「乗客の皆、運転手が負傷したから、臨時運転手が列車を運転する」
 強盗によって止められた列車が、再度動き出した。

「動き始めたわ!」
と、言ったのは客車に居た桜月 舞香(さくらづき・まいか)だった。
「良かったアルね! これでこの事件もひと段落アルよ!」といったのは奏 美凜(そう・めいりん)である。
列車が動き始め、彼女たちも一息つこうとしていた。
「でも、速度があまり出てないみたいです……」
と、桜月 綾乃(さくらづき・あやの)が言った。綾乃は鉄道に詳しかった。
「確かに、かなり遅いみたいね。なんでかしら」
「たぶん、この客車が故障してます。そのせいです」
綾乃は微妙な揺れの違いから故障を感じ取った。
「直せないの?」
「走りながらは多分無理です」
「それは困ったわね、このままじゃ強盗を引き離せないわ。どうしよう」
窓の外では強盗たちが並走し、銃弾を列車に浴びせている。何とかしてスピードを取り戻さなければいけなかった。
「いい考えがあります。この客車を切り離しましょう」
「切り離すって言っても、乗客がいるアルよ」
 それを聞いて、客車に居た九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)が会話に参加した。
「いや、不可能じゃないよ」
ローズは今まで、乗客のけが人たちの治療にあたっていた。
最初けが人が出た時、舞香は「お客様の中にお医者様はいらっしゃいますか!?」と呼びかけた。その呼びかけにローズは応えた。
急停止時に頭をぶつけた人や、流れ弾に当たった人、割れた窓ガラスの破片が刺さった人など、多くのけが人を一人で救助していた。簡単な治療用具での応急処置のみだったが、そのおかげで乗客に死者や重傷者はいなかった。
「乗客たちを貨物車に移動させれば?私は出来なくないと思う。幸い動けないほど重傷なひとはいないよ」
「なるほどアル」
 そうして、乗客たちは貨物室へ移動した。
「では、連結器を切り離します」
綾乃は作業を始めた。すると、強盗がいきなり現れた。屋根の上からだった。
「へっ。良い標的だぜ」
「危ない!」
舞香はいち早く強盗に気付き、持っていたファンデーションを投げた。顔に粉がふりまかれた強盗はバランスを崩し落ちてきた。
そして、美凜が落ちてきた強盗を客車へ派手に蹴り飛ばした。その光景に、乗客から歓声が上がった。
「この列車には、正義のチャイナ服美少女戦士がついてるアル! 悪人はカンナに代わってお仕置きアルよ☆」
「できました! 客車を切り離します!」と、綾乃が言った。
そのまま強盗だけを乗せて客車は切り離された。列車は従来の速度を取り戻した。