リアクション
8
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初冬である。
時計は午前4時30分を回ってはいたが夜明けはまだ遠かった。
「これで一件宅着。とはいかんやろうけど、とりあえず全員無事みたいでよかったわ」
大久保は全員無事の連絡を受けると、ほっとしたように地面に腰をおろした。
「盗賊さんたちは全員逮捕……ですか? 」
レイチェルが大久保に尋ねる。
「逮捕もなにも、オオミヤ会長は警察に被害届も出してへんからな。ピンクダイヤの秘密が公になって立場を追われるのは確実やろうけど」
盗賊のリーダーが、自らの記憶と引き換えにメモリークラッシャーを発動させたのは、ピンクダイヤの秘密を公にしてもらえる人間を見つけたからだ、と大久保は推測した。で、あるとするならば、その期待に報いねばなるまい。
「どうして? 」
葛城が眠たそうな表情で呟く。
「どうしてオオミヤ会長はピンクダイヤを手放さなかったのでしょうか?大金持ちになった今、いわくつきのダイヤを手元に置いておく必要はなかったのではありませんか?処分するなりすればよかったのでは? 」
「おそらく、セキュリティ会社オオミヤがここまで成長したんは、ピンクダイヤのおかげや。末代まで守り抜かねばならないピンクダイヤの秘密があるからこそ、会長はんはセキュリティを研究し続け、一代で巨万の富を手に入れるまでになった」
「いつバレるかわからない戦争犯罪を闇に閉じ込め続けることで……でありますか」
「けったくそ悪い話やけどな、そう言う事や」
「……なかなか、朝日が昇りませんね」
レイチェルは月の消えてしまった湖の水面を見つめながら、ため息をついた。
「ご心配なく。登らぬ太陽はないであります」
葛城の言葉に大久保は頷いて答える。
「一件落着したら……みんなでお昼寝やな」
そう言うと、水浸しでこちらに向かってくる仲間たちに、大きく手を振りはじめた。
了
はじめましてナカジマドライブです。
初めてのリアクション執筆でしたが、皆さんのアクションのおかげで、楽しい時間を過ごすことができました。(びしょ濡れの結末になるとは思いもしませんでしたがw)
当初は、もう少しシンプルな展開を考えていたのですが、書き進んめていくうちに、各々のキャラクターに愛着がわき、物語が膨らんでしまいました。「愛着を持ったまま書き進めてみよう」と筆を進めまたのですが、筆が滑っていないことを祈るのみです。
「メモリークラッシャーの爆発」と言う理不尽な状況に立ち向かってくださって本当に、ありがとうございました。
皆さんにも少しでも楽しんでいただけたら幸いです。