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【猫の日】ニャンルーの知られざる生態

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【猫の日】ニャンルーの知られざる生態

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■ エピローグ ■



 庭園中央。
 そこに伝説のタカーイマタタービ(小枝)が生えている。
 門番茶トラのボスネコダ・モンクアッカを突破したマシュマロ一行は庭園内を一直線に進んでいた。
 植えられている植物達はどれも見たことのある種類ばかりで別段変わったものは無かったが、サイズは全て大型で、色彩は濃淡豊かで、香りがどれも強かった。
 強かったが、におい対策を既に立てていて一行の周りには風術の恩恵で今のところ鼻が曲がりそうなくらいの柑橘系の匂いなどほのかにも感じさせない。
「あ、あったにゃ!」
 マシュマロは駆けた。その後ろを契約者は付いて行く。
「これにゃ、これが、タカーイマタタービ(小枝)にゃ」
 言ってマシュマロが示した地面には一番太い部分でも直径二センチもない、木と言うにも忍びないほどか細い小枝だった。しかも、葉が一枚もついていない上に、
「え、ガラス?」
 植物とは到底思えない無色透明さだった。
「そうにゃ。とっても繊細にゃよ」
 ガラスにしか見えない植物を繊細の一言で片付けたマシュマロは躊躇いもなくその小枝を根本からぽっきりと手折った。
「花も咲いてないし、葉もついていないし、これなら持って帰れるにゃ」
 花が咲く前なら、《誰か》の夢の世界で唯一現実世界に持って帰れるタカーイマタタービ(小枝)を両手で握るマシュマロは目を閉じて感慨に耽った。
 そして契約者達に体の正面を向けると深々とお辞儀した。
「みにゃさん。本当にありがとうございましたにゃよ」
 言って、小枝の先をポキポキと細かく折って、契約者達の手にそれぞれ渡していく。
「僕も、僕のご主人様もお金とか全然持ってにゃいのにゃ」
 渡された三センチにも満たないガラスの欠片はそれでもニャンルーの手にはそれなりの大きさだった。見れば見るほど触れば触るほどガラスとしか思えないタカーイマタタービ(欠片)。
「お礼の代わりと言ってはにゃんにゃんだけど、おっそわけにゃ。そっとこう嗅ぐといいにゃ。人に戻る前にタカーイマタタービ(欠片)の素晴らしさを知って欲しいにゃ」
 今すぐにお試しあれと促されて、契約者達はそっとタカーイマタタービ(欠片)を口元に寄せる。
 直ぐ様、得も知れぬ恍惚感に意識が遠のいていった。



「大丈夫ですか?」
 揺り動かされて目が覚めた。
「大丈夫ですか? 起きられますか?」
 顔を覗きこんでくるのは、青空を背景にした喫茶店のウェイトレス。
「――あの」
 状況が良く飲み込めない。
 先ほどまでニャンルーになってマシュマロの為に見知らぬ世界を冒険していたはずだった。
「本当に困りますよね。誰の悪戯だったんでしょう」
「……いたずら?」
「はい。お店の前で発煙筒が焚かれたみたいですよ。しかも改造したのかわからないですけども煙を吸ったお客さんの何人かが眠ってしまって」
 そう、あなたの様に。
「こうして揺り動かすとすぐに起きるので病院に連れて行こうか迷うんですが、どうですか? どこか違和感とかありませんか?」
 病院に行きますかと問うウェイトレスに大丈夫ですと答えてから、大きくため息を吐いた。
 あれは夢だったのだろうか。
 自分がニャンルーになって密林や峡谷、庭園で門番を倒したのは全て夢なのか。
 猫の日を前日に控えて、周りが盛り上がっている影響で見た夢だったのだろうか。
 何気なく道行く人々に視線を向けた先に、生徒が連れ歩く一匹のニャンルーが居た。
 マシュマロ・オイシイにとても良く似ている。
 そのニャンルーが深く深くお辞儀をした。
 まるで、ありがとうございますにゃ、と言わんばかりに。
 と、自分が何かを握っているのに気づく。
 手の中には三センチにも満たない小さな小さなガラスの欠片があった。



 明日は【猫の日】。
 マシュマロのプロポーズは成功するだろうか。
 きっと成功するだろう。

担当マスターより

▼担当マスター

保坂紫子

▼マスターコメント

 皆様初めまして、またおひさしぶりです。保坂紫子です。
 今回のシナリオはいかがでしたでしょうか。皆様の素敵なアクションに、少しでもお返しできていれば幸いです。
 今回は【猫の日】企画ということで色々特別で特殊な環境等がありました。少しでも楽しんでいただけたらと思います。

 また、推敲を重ねておりますが、誤字脱字等がございましたらどうかご容赦願います。
 では、ご縁がございましたらまた会いましょう。