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スイーツ攻防戦

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 第 7 章 -それぞれのティータイム-

 友人へ送るスイーツを彩々で買ってきた恵は、学舎前でお土産用スイーツが販売されている事を帰る時になって知った。
「ああ! ここでも買えたんじゃ……でも、いいか。だけどあの子……ものすごい食べっぷりだなぁ」
 恵は即席で作られたらしいカフェで巨大なフルーツの山、もといプリンアラモード・フルーツタワーを前に幸せ一杯の笑顔で頬張るベリアルの姿を目撃した。
「綾瀬! フルーツを崩さないように食べればプリンも形が崩れないで現れるようになったよ、ねえねえ見てってば!」
「それよりベリアル……あなた、このスイーツ何個目かしら?」
 指折り数えるベリアルにドレスが静かにツッコミする。
「お腹……壊れますわね、帰ったら胃腸薬かしら。いえそれよりは下痢止め?」

 販売カウンターでその会話を聞くヴィナは、紳士らしい洗練された仕草でカフェオレをテーブルに置く。
「冷たいスイーツばかりでは身体を冷やしてしまうよ、君もどうぞ?」
 綾瀬とベリアルの前には仄かな甘い香りが漂っている。置かれたカフェオレを暫く見つめ、綾瀬はカップを手に持った。
「……ありがとう、いただくわ」
 販売コーナーでは、期間限定冬季スイーツを買い求める女性客で終始賑わいを見せたのでした。


◇   ◇   ◇


「おお! これがプリンアラモード・フルーツタワー……で、プリンはどこにあるんだ? この山盛りスイーツから見つけ出さなければならないのか? あ、こら待てロッソ! まだ食べるんじゃない、僕のスケッチが終わってからだ」
「えー! 早く食べなきゃフルーツに乗ったアイスが融けるでしょう……っと、融けるだろう」
 慌てて言い直すローズはスプーンを片手にヴァンビーノのスケッチが終わるまで待つしかなかった。

「……大きい、ですね。3人で一つにして正解だったみたいです」
 予想外の大きさに驚く貴仁と白羽はどこから食べていいのか迷っていた。一大決心した黒羽がスプーンを手にスイーツへ立ち向かう。
「取り敢えず……食べなきゃね! お残しはしない、絶対!まずはプリンってどこにあるのかな」
 上からそーっとカットフルーツを一つずつ食べる黒羽につられるように、貴仁と白羽も死ぬ気で食べ始めた。

 銀とミシェルにはプリンアラモード・フルーツタワー、キャンディスにはアップルパイがテーブルに並ぶ。
「アップルパイ、これは焼き加減が重要ネ。リンゴの甘みが最大限に生かされるポイントをしっかり押さえて……限定品だけあるワ、これは中々出せない甘みと食感ヨ!……それにしても、結構人気メニューだわネ、それ」
 それ、と指したのはミシェルの前にあるプリンアラモード・フルーツタワー。あまりの大きさにどこから食べたものかとミシェルも悩んでしまった。
「こんなに大きいなんて思わなかったから……銀も食べよう? はい、あーん」
 カットフルーツを乗せたスプーンを目の前に差し出されたが、銀は思い切り微妙な顔をしてしまう。いつまでも口を開けない銀にミシェルも眉が下がってしまう。
「……ミシェル、ここじゃそれは……」
「恥ずかしがることないネ! 百合園女学院では女の子同士結構目にする光景……ヨ」

 ―――百合園女学院

 暫し、時は止まった。
 



 その後、会計を済ませながら北都が笑顔でお持ち帰り用やイベント出展情報などが書かれたチラシを添え、

『次も見逃すとは限りません』

 と、笑顔の裏でキャンディスを威嚇してしまうのだった。

 だが、キャンディスの爆弾発言で大きな騒動になり、小さな騒動は目立つことなくそれぞれが幸せなティータイムを過ごす事が出来たのでした。



「バイト代……お金もやけどスイーツのレシピも欲しいなぁ。それがあれば後で商売になるんやけど」
「小金を稼ぐのはいいですが……泰輔、君が売り出すならぜひザルツブルガーの『モーツァルト・クーゲル』も入れて下さい」

 その後、泰輔がレシピを元にワゴンカフェを開き、真っ先に並んだのはベリアルと色花であった。

担当マスターより

▼担当マスター

小湊たまご

▼マスターコメント

第2作目「スイーツ攻防戦」を読んで頂けてありがとうございます。

そして、今回参加された皆様に感謝いたします。
基本的に皆様がスイーツを手に出来るといいなという思いでありました。
ご満足いただけた事を願うと同時に、もっと攻防の様子を描ければとも思います。
まだまだ精進が必要な身ですが、今回の反省を次回に繋いで再び皆様にお会いできる日を楽しみにしております。