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学園に生まれた迷宮

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学園に生まれた迷宮

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第四章
頓挫した計画とおかしな洞窟

 ネックレス、イヤリング、ピアスにスカート、ワンピースにネグリジェ、上下の下着に靴下。道中、契約者一行は洞窟に落ちていた女性ものの衣類やアクセサリーを大量に拾っていた。
 洞窟の大広間にはさらに大量の女性の制服、アクセサリー、何処から盗んだのかパワードスーツまでが丁寧に、極力汚さないようカバンや箱の中に敷き詰められていた。奥の方で転がされてる行方不明者も発見され、全員無事が確認された。
「あ、あった! ああ、良かった。服は後から買えばいいけど、これだけは絶対に……」
 九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)も服を盗まれた被害者の一人。スキル・サイコメトリを使って、盗んだ犯人の足取りを地道に追ってここまで辿り着いた。そんなローズは盗まれた自分の服から何やら紙のようなものを大切に、大事にしまった。
「うーん……確かにトレジャーセンスが反応してるわね」
 騎沙良 詩穂(きさら・しほ)も改めてスキルを発動。やはり奥地に何かある。
「ローズちゃんはどう? サイコメトリで何か読み取れ……どしたの?」
「え? あ、いや、服があったから……。す、スキルよね。今使うから」
 サイコメトリが発動。この洞窟の過去を読み取る。
「……誰かがお宝を隠すような過去はないわ。すごく新しい洞窟だから、過去と言ってもほとんど土と岩だけど」
「うーん、何があるんだろうなあ。温泉とかかな。これだけ深く作っていれば掘り当てても何も不思議じゃないよね! ここで話してても分かるわけないし、行ってみよう!」
 詩穂はうきうきしながら、その先に延びる通路を進み始めた。

「やはり……言っていた通り、行き止まりだな」
 鬼龍 貴仁(きりゅう・たかひと)は、洞窟の最奥、行き止まりの壁に手をついて言った。
「反応は、この先か。何か仕掛けでもあるのか?」
 貴仁の周りでも、冒険者たちが思い思いの方法で壁を調べていく。思い切りパンチをぶち込んでみたり、叩いてみたり、スキルを使ってみたりするが、何も起きない。
 これ以上進むのは無理のようだ。皆がそう思い、ため息を吐いた。
 貴仁も奥の壁をため息交じりに蹴りつけた、その時だ。
「うおぉ!?」
 なんと、奥の壁が一部崩壊。貴仁はバランスを崩し、出現した道に転がった。
「た、貴仁さん! 大丈夫ですか?」
「詩穂、明かりはあるか? 私たちも行ってみよう」
「ああ、びっくりした。大丈夫です。なんか奥に空間があるみたいですよ」
 冒険者たちが一気にざわつき始める。
 詩穂とローズが、明かりを手にして空いた穴の奥へと入り込んだ。貴仁も起き上がり、身体についた土埃を払って明かりを点けた。

 そして、その場にいた全員が感嘆の声を上げた。

 そこにあったのは、広い空間の壁ほぼ全体に、多種多様な宝石の原石だ。
 赤、青、緑、ピンク。地下深くに空間があることもさることながら、視界を埋め尽くすほどの宝石の宝庫は、今まで誰も見たことがないだろう。
「す、すっごーい。宝石だ!」
 詩穂も辺りを見回し、飛び跳ねている。
「で、でも、これって……迂闊に掘り出したりしたら、危ない?」
「あ、ああ。空間ができてるってことは、迂闊に原石を掘る地盤のバランスを崩して崩落の危険性はある。まだ触らない方がいい」
「ローズさんの言う通りです。見渡す限り宝石で魅力的ですけど、地盤安定しているかどうかきちんとチェックしたほうがいいでしょう」
 貴仁が、周囲の宝石を見回した。地質学については詳しくないが、少なくともいきなり岩を引っこ抜いたらバランスを崩して生き埋めにされるかも、くらいは分かる。
 彼の言う通り、怪我をしたら元も子もない。一度戻って、その道のプロたちに調査をお願いするのが一番早そうだ。
 他の契約者たちも、不本意ながら退却の意思を固め始めていた。
「そうね……盗まれた服も取り返したし、犯人も検挙したし、二度と見られないかもしれない光景も見れたし、成果としては完璧よね」
 これだけの宝を前に詩穂は少々残念そうだが、全体を見回して頷きを一つ。
「そうです。それにこれだけのお宝、勝手に逃げたりしないですよ。学園が管理してるから悪党も入りにくいでしょうし、幸いこの洞窟にはトラップもいっぱいありますし」
「だね。よし、皆、一度帰還しよう!」
 ローズの高らかな掛け声に、冒険者一同は意気揚々と引き上げて行った。
 洞窟は制覇。行方不明者も全員救出。加えて盗難事件も犯人一味を捕縛。文句なしの大成功を収めた彼らは、後に蒼空学園の馬場校長から直々に表彰されることになる。

 そして奥地で発見された宝石の原石群は、のちに専門業者の一団が各地から派遣されることになるそうだ。