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■猫軍団の脅威

 イルミンスール魔法学校の玄関口。
 太陽の光が照り付け、凄まじい気温に包まれるこの空間でエリザベートとアーデルハイトは小さな両腕一杯に猫を抱えていた。
 玄関にたどり着くなり、放り出すようにして手放すが、華麗な着地を見せつけてくれた猫達はあっという間に室内へと戻っていく。
「……のぅ」
「わかってる、わかってるですぅ……うあっつ!?」
 抱えてきた猫達の毛を服に身につけながらエリザベートはガックリとうなだれ、あまりの熱さに飛び上がった。
「おお、何やってんだ? 随分と楽しそうじゃねぇか」
 そんな2人の前に現れたのは朝霧 垂(あさぎり・しづり)
「楽しくなんてないですぅ、暑くて暑くて……って酒くせぇですぅ!」
 辺りに漂うアルコールの香りは垂本人から漂ってきており、よく見ると顔も赤い。
「いやぁ、去年作ったマタタビ酒が無くなりそうなんで、今年も貰いに来たぜ〜」
「おお、持ってけ持ってけ! 猫の引き寄せる悪夢の植物なぞいくらでも持ってっていいぞ!」
「お、じゃあそうさせてもらおうかな?」
 マタタビという言葉に拒絶反応を示しているアーデルハイトの事は気に留めず、垂はマタタビを引き取りに学内へと向かっていった。
「のわーっ!?」
「ふわぁーっ!!」
 そんな垂と入れ替わる様に、大量の猫に追われてやってきたのはハイコド・ジーバルス(はいこど・じーばるす)白銀 風花(しろがね・ふうか)
 ハイコドの腕から伸ばした猫じゃらしの様な触手に、猫達の狩猟本能が刺激されたのか一斉に追いかけられているようだ。
「ほう、誘導とはやるのぅ」
「あ、いや、ちょっと遊んだだけなんだが」
 うまい事、大量の猫が外へと連れ出されたのを見てご満悦なアーデルハイトだが、猫の波に飲み込まれ、地面に寝転がった状態のハイコドは心此処にあらずといった状態だ。
「マジックアイテムの補充に来ただけなんだがなぁ」
 買い出しという目的は済み、少し遊んだだけでこの始末、どうしてこうなったのだろう。
「あなた〜!」
 そんなハイコドを追いかけてやってきたニーナ・ジーバルス(にーな・じーばるす)の片手には遊具用のボールが握られている。
 勿論、それが目当ての猫も居るのか、彼女を追いかけてきた猫も居るようだ。
「ねぇ、折角だし遊んで行ってもいいかしら?」
「ん? 時間はあるし構わないが……」
 ちらり、とエリザベートとアーデルハイトに視線を送ると、2人は外でやれ、と無言の威圧をしてきているようだ。
「……ここでな?」
「ふふっ、よかった。でも遊ぶにはちょっと暑いわね」
 威圧に負け、ハイコドが言うとニーナは威力を抑えた『ホワイトアウト』を発動させる。
 すると、辺りには弱い冷気が充満し、憎たらしい熱気が多少和らいだようだ。
「お、いいな、コレ。 そういえば風花は?」
 そういえば、先ほど一緒に走ってきた風花の姿が見えない。
「ああ、あの子は……」
 そう言いながら、ニーナは自分の来た道を指さすと、そこには猫の大群に揉みくちゃにされた上で猫の絨毯に運ばれている風花の姿があった。
「ハコ兄様〜! ニーナさん〜!」
 そのモフモフとした風花の毛が猫の格好のおもちゃになってしまっているのか、じゃれ付かれながら必死に手を振っている。
「ひゃあっ! な、舐めないで! むー、猫に負けるのは兎として癪ですわ〜!」
 自らを舐めまわす猫を抱き上げると、風花は逆に猫をぶらぶらと揺らす。
 そんなことをしている彼女だが、自分が運ばれていることはすっかりと失念しており、後に猫絨毯に運ばれる毛玉として騒ぎになるのだがこれは別の話。
「……後でテレパシーでもなんでも使えばいいか」
 風花が楽しんでいるなら邪魔する理由は無い、とりあえず放置しておくことにする。
「……よし! あんた等はここで遊んでるですぅ!」
 そういってエリザベートは再び学園内へと走り去っていく。
 冷気のおかげで多少やる気がでたのだろうか。
「室内は暑苦しいというにのぅ……」
 アーデルハイトは既に涼むと決めたのか、近くのベンチに座り込んでいる。
「にゃー、ハコ君にゃー」
「……あ?」
 猫の脇を両手で持ち、猫に隠れて鳴き真似をするニーナ。
「人形じゃないんだからよ。ほら、大きな猫さんよ」
「ひゃっ!?」
 ハイコドが『大きな猫』の顎を撫でると、ニーナは驚いたような声を上げる。
「わ、私は猫じゃないわよ!」
 顔を真っ赤にするニーナだが、その顔はどこか嬉しそうだ。
「はは、悪い悪い」
 笑いながらも、猫がどうしてこんなに集まっているのかそれが気になっていたハイコドはニーナの持つ猫に近づく。
「にゃー、なんで僕達ここに集まってるのかにゃー、ってこら、逃げるな!」
 猫の鳴き真似をして問いかけてみるが、猫はあっという間にニーナの腕をすり抜け逃げていってしまう。
「顔が怖いから猫さんもにげちゃうんだにゃー」
 また新しい猫を捕まえたニーナがそう言って茶化すと、ハイコドもついムキになったのか反撃し、2人はしばらく猫の中で楽しんでいた。