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猛女の恋

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猛女の恋

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 室内では、マルハレータが遅いランチを食べている。勿論ステーキだ。顔を上げて、走りこんできた泉を見やるマルハレータ。少し離れた明り取りの窓には、円とオリヴィアが立っている。ウタは床に座り込んでいる。
「なんだい、お客さんか。挨拶ぐらいしたらどうだい」
 マルハレータの言葉に泉が答える。
「泉だ。あんたに頼みがある。カノンを助けてくれ。瞳と声を返してやってくれ」
「藪からぼうに・・・ふざけた頼みだね。いやだよ」
「頼む」
 ステーキを切り分けながら「言っただろ、いやだよ」と泉を見もせず食事を続けるマルハレータ。
「あんただって恋したことあんだろ?人の恋心をもてあそぶのは許せねえんだよ。」
 叫びながら、突進する泉。
「どんなすげえ魔女だか知らないが、魔女の世界にだってソシキとか力関係はあんだろ。学園の生徒たちはみんなカノンの味方だ。ナメた真似しくさると、パートナーの魔女全体を敵に回すことになんぜ。分ってんのか!」
 頭突きを食わせようとするが、マルハレータにいなされる。遅れて飛び込んできたのはラルク。彼はマルハレータには眼もくれずウタを抱える。
「俺に?まれ」ウタを横抱きにすると、そのまま走り出し、
「人質救出!」
 大声で叫ぶラルク。
「なんとストレートなあ・・・男らしいのだわなぁ」
 オリヴィア、呟くと円に目配せして、そっと窓から外に出る。勿論、ガラスの小瓶を手に持って。

 外には、魔女発見の一報を聞いて、小型飛空艇で百合園から駆けつけたベア・ヘルロットとマナ・ファクトリがいた。
「こいつをカノンに届けてくれ!」
 ラルクはベアにウタをたくす。
 マナがウタを抱える。


 室内では、明り取りの窓から飛び込んだ葉月とミーナがマルハレータと戦っている。
 マルハレータは、肉やぶどう酒を葉月に投げて、物陰に身を隠す。肉が嫌いな葉月はへきへきしている。
「戦いは苦手なんじゃ。面倒での」
 煙幕を起こすマルハレータ。
「努力が結果をもたらします。勝つには研鑽を怠らないようにすることです。あなたのように怠惰な魔女には負けません」
 剣の鍛錬を積んだ葉月は、視界がさえぎられても気配で相手の場所が分る。
 葉月の剣がマルハレータの喉を狙う。
「人の恋心につけこむあなたは許せない」
 マルハレータが葉月の剣を避けて火を放つ。背後にいたミーナがそれを防ぐ。ユインがマルハレータの後方に回る。魔術を使った瞬間を狙って、スプレーショットを滅多撃ち。
「あ、魔法は解いてから死んでね。死ねば解けるかな?」
 ユインが、スプレーショットを打ちながらマルハレータに話しかける。しかしその姿は消えている。
「えっどこよ?」
「これ以上、家を壊さないでくれ」
 マルハレータは外に走り出る。葉月、ミーナ、ユイン、泉は窓から脱出する。
 廃坑の入り口では、クロスが待ち構えていた。出てきたマルハレータを乱射する。オウムを追ってきた怜史も参加。
 銃弾のなかを潜り抜けたマリハレータが箒に乗って空に逃げ、ファイアストームを打つ。ウィングが魔法を反射する剣で魔法を防ぐ。ファイアストームがマリハレータを襲う。
「和解しような、和解。こういった遊びはキライなのじゃ」
 攻撃をよけたマルハレータが、空から叫ぶ。その言葉にレベッカが銃を乱射する。
「パラ実生相手に下手な交渉や言葉遊びはキレさせるだけだ、観念しな」
 アリシアがアイリスの前に回りこみ、光条兵器を構え攻撃しながら、盾となってパートナーを護る。
逆上したマルハレータが地面に近づいて攻撃をしかけようとする。にクロスが宙に飛び、ランスで攻撃を行う。ひるんだ魔女に、クロスは服に隠し持っている数十本のナイフを投げて攻撃する。

 攻撃をよけて反撃しようとした矢先、ふっと、マリハレータの眼が泳いだ。少し離れたとこにいる桐生円の小瓶が目に入ったのだ。光り輝いていた小瓶からは急速に光が失われていく。

 そのとき翠葉が、明り取りの窓から室内に火術を放った。
「醜いものは全て燃やし尽くすわっ。」
「うわぃ、私も参加するねぇ。ほんと、面白いことになりましたねぇ」
 ルーシーも火術を放つ。マジックローブで火の粉をよけながら、「うわぁ、燃えますねぇ」室内をまる焦げにしているルーシー。
「これ以上、家を壊さないでくれ」
 マルハレータが降りてくる。

「降参じゃ」
「降参?」

 その場にいた全員が声を上げる。
「お前たちは、カノンの魔法を解く方法を知りたいのだろ。カノンに聞いてみろ、カノンは魔法を解いたよ。契約は終わりだ。まったくつまらない」
 円がもつ小瓶を見やるマルハレータ。
 小瓶からは、光の粒がキラキラと空に浮かび消えてゆく。

「勝手に降参なんてするんじゃねぇ、俺たちはそれだけじゃ気がすまねぇ。テメェは本当の恋って奴を知ってるのか?それができねぇからそういう事をするんじゃねぇのか!?いいか。人間には恋が必要なんだよ。恋で人は成長できるんだ、カノンに謝れ」
 ラルク・クローディスが叫ぶ。
 葉月が訊ねる「なぜカノンを狙った・・・」
 マルハレータがうつろな瞳で語る。
「恋など随分したわ。もう飽きた。なぜカノンか、それはな、無垢で強欲で愚かな心を砕いて吸うと、子供のころに戻れるのさ。あたしはもう面白いことがないからね、人の心を吸って夢を見るのさ」
 マルハレータを取り巻く皆が、怒りをあらわにしている。
「わしを殺すな。カノンの元に連れてゆけ」