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【2019修学旅行】穏やかな夜に

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【2019修学旅行】穏やかな夜に

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 玖瀬 まや(くぜ・まや)葉月 可憐(はづき・かれん)は、大部屋で一頻り友人達と楽しく過ごした後、2人部屋に移動をして布団を並べて敷いた。
「夜食べると太るって言うけど、今日ぐらい良いよねっ♪」
 間にスペースを作って、まやは昼間購入したお土産や、おやつ。それからまやがいつも肌身離さず持っているブタさん貯金箱を置く。
「うん、皆でわいわいも楽しいけど、二人っきりなパジャマパーティーも楽しいよねっ♪」
 可憐はお盆の上に並べた湯呑にお茶を注いでいく。
 可愛らしいパジャマ姿の2人は、向かい合わせに座ったり、横になったりしながら2人だけの時間を楽んでいく。
 パートナーも含めた4人で行動することが多いこの頃だけれど。
「2人きりってのはすごく久しぶりな気がするっ! えへへっ今夜は可憐ちゃん独占ーっ♪」
 まやと可憐は元々幼馴染で、以前はこうして2人だけで過ごすことも多かったのだ。
「……えへへ、そういえばパラミタに行ってからは色んな事があったから、こうやってのんびりと思い出話するのも久しぶりだよねっ」
「ホント、色々あったよね。これからももっともっと色んな事、一緒に楽しめたらいいなっ♪」
 なんだか懐かしい感覚も受けて、2人は終始笑顔だった。
 パラミタに行く前のこと、行ってからのこと。
 修学旅行のこと。
 止めどもない話しをして、2人はお菓子をつまみながら笑い合う。
「色々なこと、一緒にしてきたけれど……パートナーとの出会いは、別々だったんだよね」
「うん。可憐ちゃんとアリスさんの出会いについて聞きたいな〜♪」
「えっとね、私はアリスがお腹を空かせて倒れてたところを発見したのっ♪」
 可憐はパートナーである剣の花嫁のアリス・テスタイン(ありす・てすたいん)と出会った時のことを、思い浮かべながらまやに話し始める。
「地上で目覚めたばかりで、何をしていいかわからないまま路頭に迷ってた……らしいけど、そのおかげでアリスに会う事が出来たって思えば、私的には悪くなかったかな……なんてね」
「なるほど。つまりアリスさんは可憐ちゃんに餌付けされたんだねっ♪ アリスさんって前々からわんこっぽいとは思ってたけど、これはますますペットとご主人さ……うっううんっ何でもないよっ!」
 まやの言葉に、可憐は声を上げて笑った。
「あは、お腹を空かせてたアリスにはちょっと悪いかな……とは思うけどね」
 甘いお菓子をぱくっと食べた後、可憐は軽く首を傾げた。
「ねぇ、まやちゃんのエリアスさんとの出会いは、どんなでしたか?」
「あ、えっと私とエリアスの出会いはね……」
 まやも同じお菓子を食べて、お茶を一口飲んでから、嬉しそうにわずかに切なげにエリアス・テスタロッサ(えりあす・てすたろっさ)との出会いについて語り出す。
「私がお姉ちゃんが亡くなって落ち込んでた時に、気晴らしに森に遊びに行って出会ったのっ。「悲しい事でもありましたか?」って声かけられて顔上げたら、お姉ちゃんそっくりな人がいて、それがエリアスだったのっ」
「そっかあ……」
「私、お姉ちゃんが生き返ったかと思って、思わず泣きながら抱きついちゃったんだ……っ。でもそっくりなの外見だけで中身全然違うんだもんっ。詐欺だよね詐欺っ!」
 言って、まやは枕をバシバシ叩く。
「あはははっ、でもエリアスさん、素敵な方だよね」
「うん、大好きっ♪ えへへっ。……って、あっ今の言葉はエリアスにはナイショだよっ!」
「はーい♪」
 くすくすと笑い合った後、まやは大きな欠伸をした。
「んー。何か沢山お話したら眠くなってきちゃった……」
「お菓子も沢山食べたしねっ」
「それじゃ、そろそろ電気消そうか」
「うん」
 最低限の片付けをして、寝る準備をして、電気を消して。
 2人はそれぞれの布団に同時に入った。
「えへへっまた明日もいっぱいお話しようねっ♪」
「うん、パートナーには内緒の話も、もっと聞きたいっ♪」
 豆電球の下でも、少女達はゆっくりと会話を続けて――いつの間にか、2人とも夢の世界へ旅に出ていた。

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「すみません、少しつめていただけますでしょうか?」
 ロビーで過ごしていた篠北 礼香(しのきた・れいか)が大部屋に戻った時には、既に生徒達により布団が敷かれた後だった。
 全員どこで眠るのかも決っているらしく、空いている布団の上にも場所取り用の小物が置いてある。
「少しずつ重ねあって、全員が入れるようにしよう」
 そう、声を上げたのは、タオルで髪を拭きながら現れた神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)だった。白百合団の彼女のスペースは予め出入り口付近と決められていた。
「お好きな布団に入っていただいてもよろしいのに」
「礼香お姉さま、一緒のお布団で寝ませんか?」
「こらこら。見回りの先生に叱られるぞ」
 礼香を誘う生徒達に苦笑しながら、優子が指示を出し、生徒達は少しずつ布団を重ねていく。
「おし、これで寝れるな」
 最後にミューレリア・ラングウェイ(みゅーれりあ・らんぐうぇい)が布団を引いて、押入れの側に1人分のスペースを作り出した。
「ありがとうございます、皆様」
 礼香は出来たそのスペースに布団を敷くのだった。
「なんかいつもと違う場所だと落ち着かないよな」
 ミューレリアは、布団の上でごろごろ転がって、皆の布団を上を移動しはじめた。
「ミューレリアはいつでも落ち着いてない。ほら、早く布団に入る。見回りが来る前に一応は寝ている体勢を作っておく必要があるからね」
 優子の微笑みながらの言葉に、皆も笑みを浮かべながら、布団の中に入っていく。
「寝床到着〜」
 ミューレリアも転がりながら礼香の隣の位置に戻る。
「おやすみ」
「お休みなさい」
 ミューレリアと礼香が言葉を交わすと当時に、部屋の電気が落とされる。
 暗闇の中でも、生徒達はひそひそ話を続けていく……。

 ミューレリアも周りの友人達や、見回りの先生がいなくなってからは友人達の布団に転がり込んでは話を続けていたのだけれど。
 次第に皆眠りに落ちていき、話し相手がいなくなってしまっていた。
 自分の布団に戻っても、慣れない布団と枕のせいで、全く寝付けなかった。
 ……と、その時。
 普段、冷静、冷徹に見える礼香がごろりとミューレリアの方に転がり込んできたのだ。
「んっ!?」
 礼香の腕がミューレリアの顔面を打ち、ミューレリアは思わず小さな声を上げてしまった。
「あ……ごめんなさい。あたし、寝相が悪いみたいで……」
 目を覚ました礼香は直ぐに謝罪して自分の布団に戻ろうとするが、ミューレリアは礼香の手を掴んで引き止めた。
「ううん。眠れなくて退屈してたから。それにしても意外だ! 礼香って大人びてて、これといって欠点なさそうなのに」
「そんなことありません。常に冷静でいようとは思っていますけれどね」
「なんで? 地を出した方が楽しいぜっ。百合園は窮屈なところがあるけど、パラミタ校は地球校ほどじゃないしな!」
「そうですね……」
 礼香はミューレリアのペースに引き込まれて、くすりと笑みを浮かべた。
「ね、礼香はどうしてパラミタ校に来たんだ? 私はお嬢様教育っていうのが、どうも性に合わなくってさあ」
「分からなくはありません。でも、お嬢様的な平和も素敵なものだと思いますよ」
「そうかなぁ。パラミタ校は日本の学校より変化があって楽しいけどさ、やっぱ私はパラ実に憧れるんだよなー」
「パラ実ですか。百合園生にも色々な考えをお持ちの方がいるのですね……」
 多くの命が感じられ、穏やで静かな空気が流れるその場所で、性格の全く違う2人は互いに興味を持ち、明け方近くまで会話を楽んだのだった。