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【2019修学旅行】奈良戦役

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【2019修学旅行】奈良戦役
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第1章 奈良到着

 駅を降りて、まっしぐらに石舞台古墳を目指す、騎凛と教導団生徒たち。
「団長先輩から直々に命が下されたのですもの! さあ、第四師団、、じゃなく、教導団の力の見せどころよ!
 この騎凛セイカのナギナタにかかって、生首と化さなかった相手はいなくてよ! ……道満! 今日はあなたの番だわ」
 列の先頭で、ナギナタをぶんぶん振り回す、騎凛 セイカ(きりん・せいか)先生。
 今日は、奈良らしく、ゆる族から拝借した鹿の着ぐるみに身を包んでいます。


1‐01 石舞台への行軍

「奈良と言えば……鹿ですよね? ぇ」
 鼻息のあらい騎凛先生をちらっと見遣りつつも、いつもと変わらずくすりくすりと微笑み、黒崎 匡(くろさき・きょう)
「……あぁ、ナントカっていう古墳やらお寺やらがあるんでしたっけね。
 やっぱり明日香村周辺の石造物なんかが有名処なんでしょうかねぇ……おや、レイユウはこういう歴史物、詳しいのかな?」
 にっこりとわざとらしく、レイユウ・ガラント(れいゆう・がらんと)に話をふる。
「匡くん、お前ガチ観光なの?」
 鹿煎餅を食べながら少し呆れ顔のレイユウに、何かを差し出すのは、クロード・ライリッシュ(くろーど・らいりっしゅ)
「レイユウ殿、これは如何だろうか」
 黒くて小っこくてまるっこいもの。鹿のフン、奈良と言えばこれだ、修学旅行と言えばこれだ。
 レイユウが受けとると、じっと見守るクロード(決して悪気はない……はず)。
 一瞬戸惑うが、それをぽいっと口に入れ(あ、クロありがと。ぱく。)、
「ナントカってお前なぁ……。
 ……てっめぇ、全部知ってて言ってんだろ!」
 匡の胸倉掴みガクガクゆするレイユウ。
 鹿のフンを口に放ったレイユウの勇姿に感嘆するのは、戒羅樹 永久(かいらぎ・とわ)。(※注:鹿のフンはお菓子です。)
 銘菓満喫中のレイの手持ち菓子を横からひょいぱくひょいひょいぱくぱく。うまうま。
 意気揚々と出陣する騎凛を御諌めせんと従う、【黒炎】の四人だ。
 騎凛の隣では、
「き、騎凛(鹿の着ぐるみ)……」
 いや、とりあえず少し距離を置いて騎凛を見守るのは、久多 隆光(くた・たかみつ)
 その後ろには、ぞろぞろと、にゃんこ兵が追従する。「にゃんにゃん、にゃんにゃん♪」
 にゃんこ部隊を率いるのは、黒乃 音子(くろの・ねこ)とその仲間たち。
 騎凛の部隊に、奈良市民の生温かい視線が刺さる。
「あ、あはは……こ、今日は。ボクたち、教導団の生徒が、奈良の皆さんを助けに来たよ……!」
 この怪しい行軍も、実は、奈良県警のお墨付きを頂いており、珍行列を見学しに来る市民を、奈良県警がしっかりガードしていた。
 実は、これはある男のあらかじめの進言によるものであり、武器を持った教導団が奈良に入ることでより混乱が生じないようにと、騎凛を通じて団長から奈良県警に根回しをしてもらった。これがなければ奈良は更なる混乱に陥っていたかも知れない。戦前の備えとして、この行いは最大の功績と言えた。
 そう、列の最後尾で、騎凛らに更に生温い視線をくれる、戦部 小次郎(いくさべ・こじろう)こそがその功労者だ。
 戦部が更に、横に目をくれると……
 輝くホワイトアーマーに身を包み、三人の美少女に囲まれた、ユウ・ルクセンベール(ゆう・るくせんべーる)
 三人の美少女とは、もちろん、彼のパートナー、ルミナ・ヴァルキリー(るみな・う゛ぁるきりー)柳生 三厳(やぎゅう・みつよし)ルゥ・ヴェルニア(るぅ・う゛ぇるにあ)
 修学旅行ということもあって、もしかするとこのユウを囲む三人には微かに火花が飛び交っているかも……知れない。
 悠然と歩く、ユウ。「はたから見れば、ハーレムですから……すでに視線が痛いですね」
 戦部、「……」。
「小次郎さん?」
「はっ。あ、ああ。リース……」
 そんな戦部にも、今日は大切な人リース・バーロット(りーす・ばーろっと)が、一緒だ。
 更に、本隊に追随する形の、レオンハルト率いる獅子小隊から、月島 悠(つきしま・ゆう)が来ている。
「騎凛教官、我々も石舞台古墳へ向かいます。
 雑魚はこちらにお任せ下さい」
 今日の彼らの表情は、険しい。
 再び前方。黒軍師・匡は、今回の戦いについて思い馳せる。
 (蘆屋道満に安倍晴明、ですよね。
 やはり彼が執念を燃やすとしたら、お相手は晴明さんという事になりそうですけれど……。
 あるいは、その矛先、どこへ向くやら。)
「個人的には、僕も晴明さんにはお会いしてみたいのですけれど」
 ねぇ、クロ?(くすり」
 それぞれの想いを胸に行軍は続く。
 今日は、修学旅行なのだから。
 石舞台古墳へ……!



1‐02 それぞれの戦地へ〜だって今日は、修学旅行なのだもの。

 駅を降りてからは、自由行動になったので、さっさと騎凛らの隊列を離れた者も多い。
 だって今日は、修学旅行なのだもの。
 と、言っても。
「やることをきちんとやれば……」団長の言葉。
 今回の戦を統轄する騎凛にそれぞれの戦地を告げ、そこへと発つ者たち。
「騎凛教官! 私は、巨亀を止めにいくつもりです」――宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)
「私は、奈良盆地に水を引き入れ始めているという、大蛇のもとへ向かう」――クレア・シュミット(くれあ・しゅみっと)
「俺は、伝説を調べるのもいいかなって。フェイト、ファルコンを戦場に向かわせ、道満の企みを阻止してみせよう」――松平 岩造(まつだいら・がんぞう)
「吉野方面へ。調査に向かう」――霧島 玖朔(きりしま・くざく)。隣には、早瀬 咲希(はやせ・さき)
「自分は、京都の清明神社へ。道満の兵隊に関する情報やその企みを、晴明に伝えて対処法を聞くとしましょう。
 対処法がわかったら、セイカさんに連絡を入れて、その後は京都見学と……いえ、……ということですな」――セオボルト・フィッツジェラルド(せおぼると・ふぃっつじぇらるど)
「セオボルトさん、皆さん、ありがとうございます。
 こうして皆の連携がとれれば、わたしたちに勝機がある筈。それぞれの戦いに期待していますよ」
 また、数名はすでに、市民の人たちを避難させるのが重要と、市街へ向かっていた。
 それから……リュートを持ち、軍用バイクにまたがって微笑むのは、草薙 真矢(くさなぎ・まや)
「あたしは、周辺調査に行ってくるから。あはは……」
 最後に、その笑顔に少し翳りが見えた気がするが……。
 こうして、生徒らは、それぞれの戦地へと発っていったのだった。
 しかし、このなかの何人かは……む、むぐむぐ。
 だって今日は、修学旅行なのだもの。