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リアクション
2.assault01‐疾風の襲撃者‐
「みんなの仇、絶対に取ってやる!」
自らもクイーン・ヴァンガードの隊員である小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は、大切な仲間を襲撃されて珍しく怒りを露わにしていた。
「ベアトリーチェ、サポート頼んだよ」
「はい、頑張ります」
美羽とパートナーのベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)は夜の町をパトロールする。襲撃犯を誘き寄せて迎撃しようという作戦だ。ベアトリーチェは敵の接近に備えてディテクトエビルを使用している。
そんな二人の後ろを、軍用バイクに乗った道明寺 玲(どうみょうじ・れい)と馬に乗ったイルマ・スターリング(いるま・すたーりんぐ)というなんとも目立つコンビがついていく。
「相手が相当な実力者であることは間違いありません。お二人だけでの行動は危険ですから、それがしとイルマ・スターリングもご一緒させてもらいたいものですな」
「それはいいけど、最後に犯人をぶっ飛ばすのは私だからね。一発シャイニング・ウィザードかましてやらないと気が済まないよ!」
息巻く美羽は、シャドーボクシングのような動きをしながらずんずん進んでいく。彼女がT字路にさしかかろうとしたとき、突如ベアトリーチェが叫んだ。
「美羽さん! 誰か来ます!」
ベアトリーチェの声に美羽は咄嗟にその場を飛び退く。と同時に、美羽の超ミニスカートに亀裂が入った。
辺りは暗くてはっきりとは分からないが、今の今まで美羽の立っていたところに何者かの影が見える。影は軽い身のこなしで塀の上へと飛び上がった。
「出たわね凶悪犯! ベアトリーチェ、作戦通りにいくよ!」
「分かりました!」
ベアトリーチェは氷術で敵の足下を狙う。襲撃者はこれをかわし、逆側の塀へと飛び移った。
「な、なんて速さですの……」
「敵が一人だとは限りません。第二第三の襲撃者が出てこないか注意してください」
「了解どすえ。周囲の警戒は任せておくれやす」
玲の指示でイルマは馬の上から周囲を見回す。
「ベアトリーチェ・アイブリンガー、それがしが援護しますな」
玲自身はバイクから降りてベアトリーチェの前に出ると、彼女にガードラインを使用した。
「私が相手よ!」
美羽が刃渡り2メートルに達しようかという大剣状の光条兵器を取り出す。ベアトリーチャは氷術によって敵をピンポイントで足止めするのは不可能と判断、雷術での直接攻撃に切り替えた。
「みんなの無念を思い知れえええ!」
美羽は『音速の美脚』と賞される俊足を生かして襲撃者に斬りかかる。襲撃者もベアトリーチェの雷術をかいくぐってこれを迎え撃った。
敵が射程に入ったところで美羽は轟雷閃を放とうとする。だが相手の踏み込みが予想以上に速い上、武器が大きすぎて攻撃が間に合いそうにない。
「……!」
美羽と襲撃者が交錯する。光条兵器が姿を消し、倒れ込む美羽。
「美羽さん!」
ベアトリーチェが反射的に美羽に向かって走っていく。
「待つんだ!」
「今近づいたらやられますえ!」
玲とイルマは慌ててベアトリーチェの後を追った。
己に仇なす三人に、襲撃者の無慈悲な刃が襲いかかる。
「……いたたたた……」
襲撃者が去りひっそりとした路上、ベアトリーチェが頭を押さえて上半身を起こす。彼女の上には玲とイルマが横たわっていた。
「玲さん、イルマさん!」
ベアトリーチェが二人を揺さぶる。
「う……」
「う〜ん……」
「お二人とも、大丈夫ですか」
「あたた……。ふう、九死に一生を得ましたな」
「助かったんどすえ……?」
二人も体を起こしてベアトリーチェの上からどく。
「そうだ、美羽さんは!」
ベアトリーチェが美羽に駆け寄る。美羽は怪我を負い意識を失っているものの、命に別状はなさそうだった。
「良かった……。でもすぐに病院に連れて行かないと」
「それならそれがしのバイクを使うのですな」
「貴公は麿の馬に乗っておくれやす」
「あ、ありがとうございます!」
美羽を軍用バイクのサイドカーに乗せ、ベアトリーチェはイルマの馬にまたがる。イルマの後ろでベアトリーチェが尋ねた。
「ごめんなさい、私が飛び出したばかりに……。私、助けられたんですよね。一体どうやったのですか?」
「これのおかげですな」
玲が懐から何やら取り出す。それは黒く光る石だった。
「石、ですか?」
「そう、『闇の輝石』。闇黒属性の攻撃に抵抗がありますな。一か八かでこれを握りしめて突っ込んだのです。分の悪い賭けでしたが、なんとかうまくいったようですな」
「なんと、貴公も麿と同じ事を考えてはったんどすなあ」
驚いた顔をして、イルマも闇の輝石を取り出す。
「あの状況で他に方法はおまへんでしたからなあ。もしも効果があらへんかったら、なんて考えずに馬の上から飛び込みましたわ」
「『闇の輝石』が効果を発揮したということは、敵は闇黒属性の攻撃をしてきたんですね」
「そういうことですな。さあ、みなさん準備はできましたかな? それでは一刻も早く病院へ参りましょう」
玲たちは美羽を連れ、病院へと急いだ。
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