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リアクション
4.リフル歓迎会in『神竜軒』!
放課後。リフルは昨日約束したとおり、誠治たちを校門で待っている。そんなリフルを突然サプライズが襲った。
「シャミアでーす! 友達になろうぜ!」
一人の少女が逆立ち状態でリフルの前に飛び出してくる。
「……」
「……ちょっとやりすぎた? 盛り上げてやろうと思ったんだけど……」
シャミア・ラビアータ(しゃみあ・らびあーた)は服を払って立ち上がる。
「まあいいや。今暇? ちょっとお話ししようよ。あ、あなたの眼鏡私のと似てない? やっぱり時代はスタイリッシュな細眼鏡よねー」
「そこ、本が影に入る」
「あ、ごめん」
(うーん、言葉のキャッチボールが成立しないわね。これじゃ言葉のワイルドピッチだわ)
シャミアは無理に会話を続けようとせず、女王の加護とトレジャーセンスを使用してリフルについて何か気付けないか念入りにチェックする。すると、リフルのチョーカーにトレジャーセンスが強い反応を示した。
(これは!?)
シャミアは動揺を表に出さないよう気をつけて言う。
「その首飾りどこのブランド? かわいいね!」
シャミアの問いかけに、リフルはチョーカーに手を当て、遠い目をして答えた。
「これは、大切な人がくれた物……」
「へえ、そうなんだ」
(よほど高価な物なのかな。てゆうか大切な人って誰だろ。そんなものには縁遠そうに見せて、実は彼氏とかいたり?)
「おーいリフル、待たせてごめん。掃除当番が長引いちゃってさ」
シャミアが思案を巡らせていると、誠治が歓迎会に参加する生徒たちを連れてやってくる。シャミアは隠れ身を使用して姿を隠した。
「よし、それじゃしゅっぱ――」
歓迎会に出かけようとする誠治たち。そこにこれまた誰かが走ってくる。
「ちょっと待ったー!」
それはヴェルチェとクリスティだった。
「はあい、リフルちゃん。今日も来ちゃった♪ あなたって地球で生き別れになった妹にそっくりだから、気になっちゃって(嘘だけど)。これ、こっちのクリスが作ったお菓子。あげるわね。それじゃ♪」
「お口に合うかは分かりませんが、よろしければ召し上がってください。では失礼しますわ」
二人は嵐のように去っていく。
「こらあ、なぜパラ実の生徒がここにいる!」
その後を学園の教師が追いかけていった。
「わざわざパラ実から会いに来る人がいるなんて、リフルさんも人気者ですね。では気を取り直して、行きましょう」
紗那が言い、今度こそ一行は歓迎会へと向かう。
首飾りのことも気になるし、他の生徒とのやりとりを見ていれば友達になるヒントが見つかるかもしれない。そう考えたシャミアは、誠治たちのあとについていくことにした。
「おっちゃん悪いな、無理言って貸し切りにしてもらって」
「なあに、常連の誠治ちゃんの頼みだ、いいってことよ!」
ラーメン屋『神竜軒』。数名の生徒によって、今ここでリフルの歓迎パーティーが行われている。
「ここのラーメン、すっげー美味いんだぜ! 普段は行列ができててなかなか入れないんだ」
「ホントだぁ、麺はしこしこだし、スープもこくがあってすごくおいしいねぇ。あちち……」
「だろ?」
舌鼓を打つプリムラに、誠治は得意げな顔をする。
「どうだい、リフルさんも食べて――」
「大将、替え玉」
「あいよ!」
「って早! まあ気に入ってもらえたようでよかったぜ」
「昼休みにもA定食をぺろりと平らげていましたし、一体その細い体のどこにそんなに入るのか不思議ですよ。リフルさんは、ラーメはお好きな方なんですか?」
肯定。
「そうなんですね。ところで、ちょっとお聞きしたいことがあるのですが……」
「これも」
リフルは追加で半チャーハンを頼む。そんな彼女を見ながら紗那は思った。
(……あらあら、お食事に夢中ですね。古代シャンバラ史について色々聞いてみたかったのですが、今はゆっくりさせてあげましょう。他にも大勢の人に聞かれて疲れているでしょうし)
「みんなお疲れ様!」
楽しい時間が過ぎるのは一瞬だ。主催の誠治が締めて、リフル歓迎パーティーはお開きになる。尤も主賓は食べてばかりでほとんど会話していなかったのだが。
「ねえ、この近くにお気に入りのケーキ屋さんがあるんだけど、誰か一緒に行かない?」
立ち話をしている面々に、久世 沙幸が提案する。
「行く」
即答するリフル。
「えー、まだ食べられるのぉ? 私なんてもうお腹ぽんぽんだよぉ」
プリムラは驚いた顔をして言った。あまり積極的にしゃべることのない彼女だが、リフルと一緒にいるとその口数の少なさもさほど目立たない。
「襲撃者……ゲイルスリッターだったか? 俺様はそいつに用があるんでね」
「そんな、危ないですよアレクさん!」
これから町に出てゲイルスリッターを誘き寄せようというアレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)を、六本木 優希は引き止めようとする。
「俺様も一応クイーン・ヴァンガードだからな。気になるんだよ。なに、心配するな。ユーキは先に帰っているんだぞ」
「……分かりました。くれぐれも気をつけてくださいね」
「そっか。じゃあ私たちとリフルだけかな。行こ、美海ねーさま、リフル。甘い物は別腹よね!」
沙幸たちがケーキ屋へと向かう。
(もう暗くなってきたわね。危ない目には遭いたくないし、私もそろそろかーえろ。リフルが食べ物に目がないて分かっただけでも十分収穫ありだわ)
シャミアも人知れず帰路につき、生徒たちは解散した。
「はー、やっぱりここのチーズケーキは最高ね」
沙幸がうっとりとした声を漏らす。表からは目立たないところにある、小さなケーキ屋。三人はゆっくりとティータイムを楽しんでいた。ずっと食べることに忙しかったリフルも、ようやく落ち着いて紅茶を口に運んでいる。
「ねえリフル、古代シャンバラ女王ってどんなことをやった人なの?」
「……古代シャンバラ女王は、12振りの星剣を12人の剣の花嫁に託した。それが十二星華と呼ばれている」
「へえ、十二星華か。女王ってやっぱり綺麗な人だったのかなあ」
「アムリアナ女王陛下は、本当に素晴らしいお方だった……」
「まるで会ったことがあるかのような口ぶりですわね」
美海が言う。
「あなたも古代シャンバラ史に触れれば、アムリアナ女王陛下が如何に偉大なお方であるか分かるわ」
「リフルは古代シャンバラ史専攻だもんね。ふーん、リフルが女王にべた惚れってなんか意外かも。――さて、と。そろそろ出ようか。今日は私のおごり!」
沙幸が会計を済ませて、三人は店を出る。冷たい風が肌を刺した。
「うー、さむ。でも今日はリフルと話せてよかったわ。リフルの家ってどっち?」
「あっち」
「私たちとは逆か。気をつけて帰ってね。最近物騒な事件が起きてるから」
「分かった」
「それじゃあまた明日学校で!」
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