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【十二の星の華】悲しみの襲撃者

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【十二の星の華】悲しみの襲撃者

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3.リフル先生の古代シャンバラ史講座

 放課後の図書室。数人の生徒が集まってリフルの前に座っている。これからリフルによる古代シャンバラ史の解説が行われるところだ。
「じゃあ、まずは簡単に流れから」
 リフルが抑揚のない声で説明を始めた。

「――こんなところ」
「うん、先生たちには悪いけど、学校の授業よりもずっと分かりやすかった。五千年前の王国がどんなだったか一層興味が出てきたよ」
 リフルの話を聞き終えた漆髪 月夜が感心する。
「リフルさん、ちょっといいですか」
 樹月 刀真が手を挙げた。
「なに?」
「えっと、つまり剣の花嫁っていうのは……」
「古王国の技術が作り上げた『光条兵器』。それを守護するために生み出されたのが剣の花嫁……と言われている」
「剣の花嫁の外見が、使い手にとって大切な人とよく似ているというのは?」
「真相は分からないけれど、光条兵器を慎重に取り扱わせるためのシステムではないかと、私は思っている」
「なるほど、確かにそれなら説明がつくな。それにしても、その年齢でここまでの知識があるとは、全く大したものだ」
 何度も頷いてみせるイーオン・アルカヌム。だがセルウィー・フォルトゥムは何かリフルに警戒心を抱いていた。
「本当、妙にお詳しいですね。詳しすぎるほどに……」
「セルウィー、それは少々失礼な言い方であろう」
「申し訳ありません。そんなつもりでは……。リフルさん、失礼いたしました」
 イーオンは改めて向き直り、リフルに問う。
「最近とかく鏖殺寺院の連中の言うことと歴史書に記されていることとが食い違っている。俺は誰かの作為を強く感じるのだが、どう思うかね?」
「いつも歴史書が正しいとは限らない。でも、歴史を自分の都合のいいようにねじまげる者はどこにでもいる」
「であろうな。やはり、常に疑問をもち続けて真相の追求を怠らぬことが大切か……。いや、参考になった。ありがとう」
 話が一段落ついたところで、リフルが時計を見て言った。
「そろそろ帰らないと。……そう、最後に言っておくわ。座学もいいけれど、実地調査をするのも大切よ」
「イオ、私たちもたまには遺跡なんかに出かけてみるといいかもしれませんね。いつも部屋で資料とにらめっこしてばかりですから。何か新しい発見があるかもしれません」
「そうだな」
 アルゲオ・メルムの言葉にイーオンも同意する。
「それじゃ」
 皆の前から立ち去ろうとするリフルを、刀真が呼び止める。
「リフルさん、待ってください。最近物騒な事件が続いています。送っていきますよ」
「いい」
「私は刀真の剣の花嫁、私がいれば襲われても刀真が何とかしてくれる。リフル、一緒に帰ろう」
 月夜も引き止める。
「大丈夫」
 だが、リフルはそれだけ口にすると一人で行ってしまった。
「そう仰るのなら仕方ありませんね……。遅くまでありがとうございました」
 刀真はもう一度頭を下げた。